image: Shutterstock / BRO.vector
Appleが満を持して発売した「Apple Vision Pro」は、なかなか脚光を浴びずにいたXR機器の火付け役として今最も期待が高い。生活空間にパソコン画面を融合させた"空間コンピューター"と位置付ける新機軸が、現代人が慣れ親しんだ「パソコンライフ」の延長線上にあることで垣根が下がったのかもしれない。産業界からの反応もこれまでのXR機器に対するそれとは一線を画しており、医療や製造の現場では早くも実践的な活用法を探る動きが出ている。

※TECHBLITZでは、AR/VR機器関連の国内外のスタートアップを独自に調査。記事後半では、中でも注目の5社を紹介します。

<目次>
Apple Vision Proを手術で早速活用
デジタルツインとの相性の良さに期待
TECHBLITZが選ぶ、AR/VR機器関連スタートアップ5選
 1. Rokid(米国)
 2. Uncommon(英国)
 3. Lingxi AR(中国)
 4. Sol(米国)
 5. AmazeVR(米国)

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Apple Vision Proを手術で早速活用

 医療現場はかねてXR技術の活用に積極的だが、Apple Vision Proは"ゲームチェンジャー"になり得ると期待する声も上がっている。

 英ロンドンの病院では製品リリース後に早速、実際の患者の脊椎手術で活用する初の試みが行われた。手術室ではオペ看護師がヘッドセットを装着。現実空間に重なるように浮かび上がる画面で、手術が手順通りに進んでいるかを確認したり、適切な手術道具を選んだりするのに役立てられた。

 専用アプリを開発したシリコンバレー発のスタートアップのeXeXは、「手術室という無菌空間の特殊な環境下において、手術の手順書などをホログラフィック画面に表示させ、しかもタッチ操作不要でアクセスすることは、これまで実現困難な技術だった」と新たなデバイスの登場を歓迎している。

 Appleも医療分野を有望市場と位置付けているようだ。公式サイトに3月に掲載した記事では、visionOS向けに開発されたヘルスケアアプリなどをまとめ、紹介している。

image: eXeX

デジタルツインとの相性の良さに期待

 製造現場での活用のキーワードは「デジタルツイン」かもしれない。

 Nvidiaは2024年3月18日に開催した年次会議で、産業用デジタルツインプラットフォーム「Omniverse」がApple Vision Proで利用できるようになると発表した。

 Omniverseは、これまでもローカルクラウド上で使用できたが、今回初めて「Omniverse Cloud API」としてAPI経由での利用がサポートされることとなり、Apple Vision Proのビジネス用途での活用法がさらに広がると期待されている。

 デモ動画では、Apple Vision Proを装着した自動車デザイナーが指先の操作で車体の色を自在に変更したり、室内に置かれた普通の椅子に座ると、そこを運転席と見立てて周辺にリアルな車体イメージが出現する様子を紹介し、超高精細なディスプレイに裏打ちされた没入感とデジタルツインの相性の良さがアピールされた。

 AppleのMike Rockwell氏(Vice President of the Vision Products Group)は、「空間コンピューティングは、デザイナーや開発者が魅力あるデジタルコンテンツを構築する手法を再定義するでしょう」とコメントを寄せている。

image: Nvidia

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TECHBLITZが選ぶ、AR/VR機器関連スタートアップ5選

 AppleやMetaなど巨大テックはより汎用性の高いXR機器を打ち出しているが、スタートアップは工場や建設現場などのB2B用途や、読書のしやすさを追及した製品などで特定の分野に特化して顧客の開拓を目指すケースが多い。TECHBLITZ編集部が選ぶ、AR/VR機器関連のスタートアップ5社はこちら。

1. Rokid

Rokid
産業向けXRデバイスとソリューション
設立年 2014年
所在地 米国 カリフォルニア州 レッドウッド・シティ
 Rokidは、屋外作業にも対応する、各種エンタープライズ向けXRデバイスを開発。高度なオブジェクト認識 / 音声認識 / イメージ拡張技術を3本柱とし、周辺環境を高精度で認識。騒音の中でも音声コマンドを使用してハンズフリーでアプリケーションとの対話やタスクの実行が可能。
image: Rokid

2. Cellid

Cellid
AR向けの広視野角デバイスとソフトウェア
設立年 2016年
所在地 日本 東京
 Cellidは、ARグラス向けディスプレイや超小型プロジェクタ、ARアプリケーション開発のための空間認識エンジンを開発。三菱重工や大林組と協力し、同社技術を活用した工場オペレーションの高度化や、建設現場での三次元位置情報の取得に関する実証実験を実施。
image: Cellid

3. Lingxi AR

Lingxi AR
薄型・超軽量なAR光導波路ディスプレイ
設立年 2014年
所在地 中国 北京
 Lingxi ARは、拡張現実(AR)光学ディスプレイモジュール技術に強みを持つARディスプレイを開発。同社は、アレイ光導波路レンズの低コスト大量生産に成功。工業の保守点検 / 教育 / 医療(聴覚障害者向け、新型コロナ感染症対策としての体温測定など)/ 警備 / 火災救助 / 軍事など、様々な場面で活用できる。
image: Lingxi AR

4. Sol

Sol
読書に没頭できるメガネ型電子書籍リーダー
設立年 2021年
所在地 米国 カリフォルニア州 サンフランシスコ
 Solは、メガネ型の電子書籍リーダーを開発。VRデバイスに導入されているパンケーキレンズなどの技術を取り入れており、軽量で長時間使用可能。一般販売に向けLLM(大規模言語モデル)を用いたコンテンツ要約機能を開発し、ニュースの要約や前回読んだ部分のあらすじなどを自動生成するサービスを予定。
image: Sol

5. AmazeVR

AmazeVR
バーチャルコンサートプラットフォーム
設立年 2015年
所在地 米国 カリフォルニア州 ロサンゼルス
 AmazeVRは、VRによるバーチャルコンサートプラットフォームを提供。3D映像に編集されたアーティストのパフォーマンスを、観客はVRヘッドセットを通じて、最前列にいるかのように間近で体験できる。観客は仮想アバターとして、ライブ中にアイテムを送ることができるなど、ゲーム要素も取り入れている。
image: AmazeVR

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