2010年ごろからクラウドやSaaSの活用が進み、現在はオンプレミスだけでなく、複数のクラウド基盤にアプリケーションとデータが点在するようになっている。利便性は向上しているが、データの統合管理は複雑になった。Airbyteは、こうした課題を解決するべく開発された、アプリケーションからウェアハウスへのデータ同期を目的としたプラットフォームだ。共同創業者でCEOのMichel Tricot氏に、データ統合管理の難しさや、オープンソースのアプローチで挑むAirbyteの狙いについて聞いた。

クラウドやSaaSを使えば使うほど、データ統合が困難になる

 企業が顧客に新たな価値を提供するために、自社の活動から得られたデータによる洞察を活かしていくのが、デジタル変革(DX)の目的のひとつだ。このため、自社のデータを統合して分析・価値創造に役立てたいというニーズは強い。しかしながら、さまざまな環境、サービスからデータを取得するには、そのサービスに対応したコネクタが必要。サービスが増えることにデータの取得先は増え、たびたび仕様も変わる。

 データ同期に特化したサービスもあるが、対応している接続先は限られており、サービスの増加に追いついておらず、仕様変更への対応などメンテナンスが難しい場合がある。便利なサービスを使えば使うほど、データの統合や正確性、セキュリティなど、管理が難しくなる。こうした課題に挑んでいるのが、オープンソースのデータ統合プラットフォームを提供するAirbyteだ。

 Michel Tricot氏はフランスでコンピューターサイエンスを学び、最初のキャリアでは金融系企業向けのトレードや投資判断のためのデータプロセスに関わっていた。2011年に渡米したあとは、マーケティングデータ企業のLiveRampなどに勤務。オンラインターゲティングなどに利用するためのミドルウェア・アプリケーション開発に携わるなかで、データ統合のための何千ものコネクター構築をした。この経験から、企業内に点在したデータを集めて処理をするという強いニーズがあることと、適切なソリューションがないことに気づき、Airbyteのアイデアを着想する。

Michel Tricot
Airbyte
Co-Founder & CEO
フランスでコンピューターサイエンスを学び、2007年に大学卒業後は金融関連のソフトウェアエンジニアを務めたのち、2011年に渡米。マーケティング目的でのデータ接続プラットフォームを提供するLiveRampに勤務する。2017年にはライドシェアプラットフォームのrideOS の創業メンバー兼エンジニアリングディレクターを務めたのち、2020年1月に、共同創業者のJohn Lafleur氏とともにAirbyteを創業。

 2020年にY Combinatorに参加し、マーケティングにフォーカスしたプロダクトを作っていたが、コロナ禍で状況が一変。マーケティング予算が凍結されたことによりピボットしたのだ。既存のデータ統合ソリューションを利用している45~50社にヒアリングを行ったところ、100%の顧客がソリューションを導入するときに、接続の仕組みを再構築していることがわかったため、データ統合のアイデアを実現することにした。

「既存のソリューションではカバーしていない接続先がたくさん存在するので、思い通りにならないのです。そこで、私たちはオープンソースを使った統合サービスを提供するのが良いと考えました。なぜなら、接続先の数は1万を超える可能性があるため、1社でこれらすべての接続先を管理するのは不可能だからです。Airbyteのオープンソースプロジェクトでできあがったコネクターを使って、企業が自ら構築できるようにしていきます」(Tricot氏)

コンプライアンスやコストの面でも企業に貢献可能

 Tricot氏によると、企業によっては、セキュリティやコンプライアンスの問題があり、データ統合の商用サービスを利用できない場合もある。企業が自社内でデータ接続の仕組みを構築するためにも、オープンソースが役立つのだ。

 さらにAirbyteは、価格についても従来ビジネスのやり方とは違った志向を持つ。現状では、多くのデータ統合ソリューションが、企業が扱うデータの量に応じて価格を設定している。データ活用が進んでいくため、データの量は指数関数的に増える。しかしながら、得られる価値がその量に比例して増えるわけではない。

Image: Airbyte

「Airbyteはクラウドサービスとして提供予定です。まだ構築中のためビジネスモデルは明らかにしていませんが、データ量ではなく、接続先の数やデータから得られる価値の種類に応じて課金しようと考えています。データ量に応じて課金すると、たとえば1億行のデータベースを複製したい場合、これには数万ドルのコストがかかりますので、利用する意味がありません」(Tricot氏)

コミュニティの活性化が、機能アップとビジネス拡張につながる

 Airbyteは2021年5月に、Benchmarkが主導する2600万ドルのシリーズAラウンドを調達した。この資金によって、オープンソース・コミュニティを活性化していく予定だ。Airbyteの開発者コミュニティのSlackにはすでに1400名以上が参加し、2000社以上の企業が試用も含めて利用している。コミュニティに挙がっているデータ接続先のニーズは1万にも及ぶという。創業から1年半が経過した2021年6月現在、70のコネクタを開発しており、その20%はオープンソース・コミュニティの貢献によるものだ。なお、Airbyte自体のコアメンバーは現在20名で、2021年中には倍にしていきたいという。

 日本市場への参入についてもTricot氏は、コミュニティの活性化を最優先としているとした。より多くの日本人エンジニアが参加することによって、日本でのコミュニティ活動が活発になれば、ドキュメントの翻訳なども行われ、導入が促進されるだろう。さらに、熱心なパイロットユーザー企業が見つかれば、日本企業の抱える課題を知ることができると考えている。

 Airbyteは、人々がデータを扱う際に、その出入りを見守る仕組みの標準的な存在になろうとしている。Tricot氏は同社の当面の目標について次のようにコメントした。

「私たちは、データ統合をコモディティ化したいと思っています。すべてのデータの出入りを標準化していく、オープンかつモダンで、高速なソリューションを提供したいと考えているのです。まだ成長段階にありますので、エンタープライズ向けのソリューション提供には、まだまだいくつかの機能を構築する必要があります。Airbyteのクラウド上でデータのやりとりをするだけでなく、データがお客様のインフラを離れることがないように内部で動作できるようなライセンス提供も考えています。シングルサインオンやセキュリティ、データプライバシー対応などの機能も提供していきたいです」



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