MinIO(本社:米カリフォルニア州)は、クラウドストレージサービスであるAmazon S3と互換性のあるオブジェクトストレージのサービスを提供する企業だ。Amazon S3はAWS環境で利用できるストレージだが、MinIOは環境に依存することなくAWS SDKやAWS CLIを通じて操作できる。コンテナ仮想化環境のDockerとも相性がよく、日本を含めて多くの利用者に支持されている。共同創業者でCEOの Anand Babu Periasamy氏に、創業の経緯やプロダクトにかける想いを聞いた。

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シンプルでエレガントな製品を作れば、顧客の支持を得られる

 Periasamy氏は「実は私たちには営業担当者がいませんが、MinIOはすでに幅広い分野で膨大な採用事例があります。そろそろビジネス面を拡大する時期に来ましたので、言葉のハードルがある日本市場にパートナー企業と密接に連携して参入していきたいと思っています」と切り出した。

 MinIOは、AWSやMicrosoft Azure、Google Cloud Platformなどのパブリッククラウドのほか、プライベートクラウドやエッジ環境であっても、Amazon S3互換のストレージを利用できるソフトウェアで、オープンソースで無償利用できるほか、従量(容量)課金の商用サービスを展開している。

 Periasamy氏自身の経歴も多彩だ。スーパーコンピューターを開発する企業などでの勤務後、大容量データを扱うファイルシステムを提供する企業を設立。同社がRed Hatに買収された後も技術責任者などを務め、2014年にMinIOを創業する。同社の経営と並行して多くのテクノロジースタートアップへの投資やアドバイザー業務も行っている。

Anand Babu Periasamy
MinIO
Co-Founder & CEO
200年〜2005年の間にCalifornia Digital Corporationに在籍し、スーパーコンピューター「Thunder」の開発に携わる。2005年にはペタスケール対応のオープンソースの分散ファイルシステムを提供する Glusterを創業しCTOに。2011年に同社はRed Hatに買収され、2014年にRed Hatを離れた後にMinIOを創業する。自社の事業の傍ら、Treasure DataやHumio、Helpshift、Procurify、Postman、YugaByteなどさまざまなテック企業の投資家・アドバイザーとしても活躍している。

「前職では、分散ファイルシステムに力を入れていました。データの爆発的増加に悩む人たちが多くなっていたのです。オープンソースのおかげで大規模なコンピューターインフラを構築できるようになっていますが、データ領域はそれほどオープンではありません。Red Hatを退職したあと、ストレージに関する仕事はしないつもりでしたが、共同創業者と話し、1つの製品に集中すれば、よりよい製品ができて、それが顧客に支持されると考え、シンプルでエレガントな製品を作ろうと思ったのです」

コンテナ環境でのストレージも手軽に配備できる

 2014年当時に、エンタープライズ市場でのデータストレージとデータ永続性の課題を捉えたPeriasamy氏は、Amazon S3の優れた機能に注目し、同じような性能を持つサービスをAWS以外の環境でも利用できるようMinIOを開発していく。オープンソースでの経験と、丹精込めた開発への姿勢によってMinIOは支持され、現在ではDockerイメージのダウンロードだけでも1日に100万件を超えるほどの人気となっている。

 現在、多くの企業が、コンテナ仮想化によるアプリケーション開発プラットフォームのDockerを採用している。これまでDockerの動作を確認する際はクラウド上で実行する必要があったが、MinIOなら開発者のノートパソコンでも利用できる手軽さが開発者の支持を得ているのだ。

 ソフトウェアは常に改善が必要だ。MinIOの人気の秘密についてPeriasamy氏は、MinIOを支える哲学として、その名の由来である「ミニマリズム」と「クラフトマンシップ」があると語った。彼らは、オープンソースコミュニティの声に注意を払い、選択と集中によって製品に磨きをかけていくことで、顧客と長期的な関係を築くブランドとなることを知っているのだ。

データインフラを支える企業としてさらなる信頼を得るための資金調達

 MinIOは2022年1月、シリーズBラウンドでIntel Capitalなどから1億ドル(約126億円)余を調達した。同社のメンバーは50名ほどだが、Periasamy氏は、今回の資金は市場の信頼を得ることを目的としたもので、大きく増員することなどは考えていないとした。

「資金によって多くのメンバーを増やすことは考えていません。MinIOのコミュニティには多くの人々が参加しており、そこから大きな助けを得ています。すでに利益を上げていますので、より意義のある活動をしていきたいです。スタートアップには資金が尽きてしまったり、買収されたりして製品がなくなることがあります。私たちの製品は、データインフラの基礎となりますので、なくなっては困ります。ですから、資金調達によって、私たちがこの市場に残るという明確なメッセージを伝えたかったのです」

 今後投資していく分野は、より多くの人にMinIOを利用してもらえるようなコンテンツの開発だ。Periasamy氏は、使い方や教育などのコンテンツ制作に力を注いでいくことが一番のマーケティングだと語った。

 日本市場でも多くの利用者がいるMinIOだが、今後さらに利用者を獲得するには日本でのパートナーシップも必要だとPeriasamy氏は考えている。単なる再販事業者ではなく、顧客に寄り添って、長期的に問題解決を図るパートナーを求めているとした。

「世界各地の販売拠点は、非常に非効率的です。私はこれをパートナーに譲り、彼らと顧客との三者関係を成功させたいと考えています。まずは、技術的な専門知識を持つ少数のパートナーが必要なサポートを提供し、その後に多くの再販事業者と契約したいのです。ぜひ現地の方の力をお借りしたいと思っています」

AIや機械学習など、発展途上の技術をより良くしていきたい

 今やどの企業も行うようになった大量のデータの生成と分析。あらゆるビジネスを円滑に進めるデータ活用を支える存在になっていくことを目指すMinIOは、コミュニティの声に耳を傾け、毎日着実に製品を改善している。今後の展望についてPeriasamy氏は次のように語った。

「この市場の良い点であり悪い点でもあるのは、勝者総取りであることです。小規模なプレイヤーは、顧客の信頼を得られないため選択されず、生き残れません。私たちは、顧客に選ばれ成長を続けていますが、まだまだこれからです。現在、データ処理やデータベース構築、データ分析などの技術に優れたものがありますが、ディープラーニングや機械学習においてはまだ発展途上の段階にあると思います。MinIOによって、データのよりよい保存、アクセス、取得が可能となりますので、ユーザーがAIや機械学習によってインサイトを得るための手助けとなりたいです」

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