前年から売上倍増、黒字IPOを果たした

 IPOが続くシリコンバレーのユニコーンたち。ライドシェアリングサービスのLyftや画像共有サイトPinterestに続き、4月にIPOしたのがビデオ会議ツールを手がけるZoomだ。

 一般的にアメリカのSaaSスタートアップが赤字で上場するのに対し、Zoomは黒字で上場を果たした。2018年度の売上は3億3000万ドルに達し、前年売上の約1億5000万ドルから倍増と急速な成長を遂げている。

 Zoomは誰もが簡単に利用できるビデオ会議ツールを提供している。Zoomが他のビデオ会議ツールやソフトウェアと異なるのは、高い利便性だ。URLやダイアルインを付与さえすれば、アカウントを持っていない人でも会議に参加できる。スクリーンシェアも簡単にワンクリックで可能。また一度にミーティングに100人が参加、1000人以上が出席してもコネクションが切れにくく、クリアな音質、画質を保つことができる。

 この直感的で簡単に使える利便性が多くの人々の目に止まり、すでにSlackやUberなどのスタートアップ企業から21st Century Foxといった大手企業、そして日本でも楽天やJALといった企業が利用している。

Image: Shutterstock

「顧客が満足できる電話会議ツール」を目指し、WebExから独立

 Zoomの旅は、CEOのEric Yuan氏がCiscoのビデオ会議システムWebExでエンジニア部門のVice Presidentとして勤めていた頃にまで遡る。自身が開発に携わったシステムを顧客の誰も決して満足していなかったことを知った、Yuan氏はショックを受けたという。Cisco内で改善を試みたものの、それは叶わず、退職。Yuan氏と共に約35人のエンジニアも退職した。彼らは「顧客が満足できる」ことを目指したビデオ会議ツールの構築を目指し、2011年にZoomを設立したのだった。

 そしてZoomは「顧客が満足できる」ビデオ会議ツールを見事に実現し、2019年4月にIPOを果たした。

 しかし、ビデオ会議ツールの業界はSkype、Google Hangouts、Cisco Webexなど競合が多い。なぜZoomはここまで顧客を伸ばし、IPOまで成し遂げられたのか。本特集ではZoomの成功、そして日本展開について迫る。

Image: Shutterstock

 はじめからZoomの成功は見えていたのだろうか。CEOのYuan氏は「『成功するわけがない』と、投資してくれるVCはいませんでした」と語る。彼はZoom創業以前にアメリカからビザを8回拒否された経験もある。彼の「あきらめない力」はどこから来るのだろうか。

 本特集、第一回目ではZoomをIPOまで導いた、CEO Eric Yuan氏の独占インタビューをお届けする。

 Zoomの成功はもちろんCEOのYuan氏だけでは成し遂げられなかっただろう。Zoomが世界中に顧客を抱えることができたのにはやはり「プロダクト」「マーケティング」「海外戦略」それぞれのチームの支えがあってこそだ。

 今回、それぞれのチームをまとめる「Head of Product Management」「CMO」「Head of International」に話を聞くことができた。彼ら彼女らは全員、Yuan氏と同じくWebExの出身者であり、共通して話すのはZoomの企業文化である「Care」「Happiness」だ。この企業文化はどのようにして「顧客が満足できる」サービス提供、そして彼ら彼女らの仕事へと繋がっているのだろうか。

 第2回目ではZoomのプロダクトチームに迫る。プロダクトチームを率いるHead of Product ManagementのOded Gal氏は「WebExではカスタマーを満足させられなかった。Zoomで同じことを繰り返すつもりはない」と語る。競合が多いこの業界で彼らはどのようにして多くの人に魅力的なプロダクトを作ったのだろうか。

 第3回ではご本人も日本語を話せるというHead of International Abe Smith氏にインタビュー。「どこの国においても第一はカスタマーの”happiness”です」と語るSmith氏。Zoomはなぜアメリカだけではなく、世界中で利用されるまでになったのか。日本展開を中心にZoomの海外戦略について話を聞いた。

 競合が多いビデオ会議ビジネスでZoomはどのように存在感を強めていったのか。第4回目ではマーケティングチームを率いるChief Marketing OfficerのJanine Pelosi氏のインタビューをお届けする。

 第5回目ではZoomの日本展開にフォーカスする。Zoomを初めて日本へ持ち込んだのはNECネッツエスアイだ。人気企業だったZoomとの独占契約を結べた経緯とは。そして未だに対面でのコミュニケーションを重視する日本でどうしてZoomは成功することができたのか。Zoomを日本に初めて持ち込んだNECネッツエスアイの牛原祥太氏に話を聞いた。

【特集】最強ビデオ会議ツールZoom

#00 競合ひしめくビデオ会議ツールでZoomが成功できたわけ

#01 【CEO独占インタビュー】なぜZoomは世界中で好まれるビデオ会議になったか?

#02 なぜZoomは使いやすいか。磨き込まれた機能、デザインの秘密

#03 世界で使われるための、たった一つの"共通戦略”

#04 CMOが語る、Zoomのマーケティング戦略

#05 Zoomをいち早く発掘し、日本市場で独占契約できた理由



RELATED ARTICLES
MITの研究生まれ、次世代バインダー材料でリチウム電池の性能向上 Nanoramic
MITの研究生まれ、次世代バインダー材料でリチウム電池の性能向上 Nanoramic
MITの研究生まれ、次世代バインダー材料でリチウム電池の性能向上 Nanoramicの詳細を見る
家を買って、直して、高く売る。アナログだった市場にテックの風 Backflip
家を買って、直して、高く売る。アナログだった市場にテックの風 Backflip
家を買って、直して、高く売る。アナログだった市場にテックの風 Backflipの詳細を見る
CO2を減らす発電所? ホンダも出資するドイツ発のReverion
CO2を減らす発電所? ホンダも出資するドイツ発のReverion
CO2を減らす発電所? ホンダも出資するドイツ発のReverionの詳細を見る
AI進化の鍵はGPUを「つなぐ」技術 BroadcomやGoogleの元エンジニアらが設立のEnfabrica
AI進化の鍵はGPUを「つなぐ」技術 BroadcomやGoogleの元エンジニアらが設立のEnfabrica
AI進化の鍵はGPUを「つなぐ」技術 BroadcomやGoogleの元エンジニアらが設立のEnfabricaの詳細を見る
Teslaでの開発経験を活かして創業、コネクテッドカーの未来を支えるSibros
Teslaでの開発経験を活かして創業、コネクテッドカーの未来を支えるSibros
Teslaでの開発経験を活かして創業、コネクテッドカーの未来を支えるSibrosの詳細を見る
企業データと生成AIを接続、「最も賢い同僚」を仕事中独占できる? MindsDB
企業データと生成AIを接続、「最も賢い同僚」を仕事中独占できる? MindsDB
企業データと生成AIを接続、「最も賢い同僚」を仕事中独占できる? MindsDBの詳細を見る

NEWSLETTER

TECHBLITZの情報を逃さずチェック!
ニュースレター登録で
「イノベーション創出のための本質的思考・戦略論・実践論」
を今すぐ入手!

Follow

探すのは、
日本のスタートアップだけじゃない
成長産業に特化した調査プラットフォーム
BLITZ Portal

Copyright © 2025 Ishin Co., Ltd. All Rights Reserved.