世界で使われるための、たった一つの“共通戦略”

世界で使われるための、たった一つの“共通戦略”

Conference Call / Silicon Valley / Zoom / IPO / Zoom Video Communications
2019-06-07 07:08
Zoom特集の3回目のテーマは海外戦略だ。Zoomはなぜアメリカだけではなく、世界中で利用されるまでになったのか。日本展開を中心にZoomの海外戦略について、Head of InternationalのAbe Smith氏に話を聞いた。
Abe Smith
Zoom Video Communications
Head of International
マサチューセッツ大学アマースト校にて政治学学士取得。文部科学省のJETプログラム(語学指導等を行う外国青年招致事業)に参加し、福島県内でAET(英語指導助手)を務めた経験がある。その後、米国内のスタートアップにて、セールスコンサルタント、セールス/マーケティング担当ディレクターを務め、2001年にWebExに入社。WebExでは法人営業コンサルタント、米国・カナダ・ラテンアメリカ地域のシニアセールスマネジャー、アジア太平洋・日本・ラテンアメリカ地域のセールス担当ディレクターを務めた。2007年からはCiscoで、WebEx製品の国際部門シニアディレクターを務め、2014年からOracleで国際部門の営業担当副社長を務めた。WebEx時代から旧知であったZoom創設者Yuan氏に誘われ2019年1月にZoomの国際部門長に就任。

Zoomにとって今年はグローバル展開に力を注ぐ年

―Abeさんのこれまでのキャリアについて聞かせてもらえますか。

 2000年にシリコンバレーに来てから19年間にわたり、シリコンバレー発の技術の海外展開に携わってきました。シリコンバレーに来たばかりの頃、まだ製品開発段階にあったWebEx社に入社し、そこでZoomの創設者であるEricと出会いました。WebExがCisco社に32億ドルで買収される前と、Ciscoの製品になってからもWebExに関わり続けました。

 Ciscoを退職した後は、スタートアップ数社を経た後、Oracle社でクラウド関連の営業部門に3年間所属し、日本市場も担当していました。その後、ニューヨークの証券取引所の運営を任され、約2,000人の部下がいるヨーロッパ部門の社長としてロンドンに1年半ほど赴任しました。

―Zoomにはいつ参画したのですか。

 Zoomには2019年1月に入ったので、まだ4ヶ月です。

 Ericと知り合ってからは19年経っています。実は、2011年にランチを共にした時に、彼が紙ナプキンの裏にZoomの構想を書いて説明してくれたことがありましたが、その当時は、とても興味深いものの複雑でチャレンジングだと感じていました。

 今回Ericからの誘いを受け、Zoomに参画する決め手となったのは、彼が率いる素晴らしいチームの存在と、2019年はZoomにとってグローバル展開に力を注ぐ年だということです。私はキャリアのほとんどをコミュニケーション・コラボレーション分野で過ごしており、この仕事が心の底から好きです。

 また、海外展開つまり国際市場の開発が私の専門でもあります。ビデオコミュニケーション市場という成長市場において、Zoomのグローバル展開に関わる。こんなチャンスはめったにありません。

どこの国においても、カスタマーの“Happiness”を大切にする

―Zoomはどのようなやり方で海外市場を開拓してきたのでしょうか?

Zoomでは、対象としている国ごとに戦略を設けるのではなく、共通戦略のもと各担当者が動いています。合理的な戦略を持って、各自の役割と責任を明確にする。そして、チーム内で定期的にコミュニケーションを取り合い、コネクションを保ち、交流を持ちながら「チーム」として進める。これがZoomのやり方です。

―様々な国に展開していく中で、最も重要な共通戦略は何なのでしょうか。

 どの国においても、第一はカスタマーの“Happiness”を大切にすることです。当社の製品・サービスにカスタマーが満足しているか、それが最も大切にすべきことで全社を上げて取り組んでいます。そして、同時に従業員の“Happiness”も大切にしています。

 次に、それぞれの国の文化を尊重することを意識しています。製品・サービスの提供を通じてカスタマーに“Happiness”を提供するということは何を意味しているのか。カスタマーが当社の製品・サービスに何を求めているのか。それにどう応えるのか、ということを国ごとに適すよう考えなければなりません。

―カスタマーの“Happiness”を最重要視する方針を統一し、あとはそれぞれの国において、適切な対応を求めるということですね。海外展開の具体例を教えてもらえますか。

 例えばヨーロッパ市場では最初はロンドンに事務所を設け、現地採用者を1名配置しました。そして、彼が英国内市場で土台を築き成長させました。次に、同じやり方でドイツ、フランスにも1名配置し、それからオランダ アムステルダムには担当者と、加えてチームリーダーを配置しました。Brexitの影響から、ロンドンではなくアムステルダムにヨーロッパ地域における中心的な役割を担うオフィスを設けています。

 ドイツの担当者はドイツのことだけをやっていればいいという考え方ではなく、ドイツの担当者もイギリスの担当者も他の国の担当者も、ヨーロッパ市場を担当するチームの一員として共通の目標に向かい、担当者同士が相互にコミュニケーションを取り合い、コネクトする。ただし、ローカルにおける進め方は共通である必要はなく、各国の市場特性や規模に合わせた対応を取っています。

 我々が注目すべきは個々の国における業績ではありません。ドイツ市場では業績が上がっていなくても、フランスで上がっていることもあるでしょう。大切なのは、ヨーロッパ地域、そして国際部門としての業績であり、チームとして一丸となるにはどうすればいいのか、どのように情報を共有するのか、そういったことに共に取り組むことです。

 例えば、5万人規模の社員が何年もの間使っているプラットフォームから当社製品に乗り換えてもらうためには、Zoomへの信頼を得ることが必要で、導入検討段階において対面でのコミュニケーションが求められる場合も多々あります。当社としてはアイロニカルですが、親密な関係性を築くためにはローカルレベルでの対応が求められます。

東京オリンピックを機に、ワークスタイルの変革を

―日本でもZoomの利用が急速に進んでいます。日本展開の現状と今後についても教えてください。

 ZoomはiPhoneのように、直感的に操作できるつくりです。それが功を奏したのか、日本語対応などのローカライズをする以前から日本からのアクセス数は相当なものがありました。

 また、日本ではSlackなどのクラウドサービスも定着しており、Zoomにとって重要な市場といえます。当社は、安易な考えで日本市場への参入を語っているわけではありません。永続的なサービス提供を目指しています。その証拠に、すでにかなり投資もしています。

 日本は、他の国より質の高いサービスが求められる国ですし、米国内の企業より対面でのコミュニケーションを重視する傾向があります。テクニカルサポートやカスタマーサービス、そして営業やパートナーエンゲージメントなど、日本のカスタマーの要求に応えるため、NECネッツエスアイさんなどのパートナーと密接に連携し活動しています。

 日本は2020年開催予定の東京オリンピックを機に、政府がワークスタイルの変革を進めています。実際に日本のワークスタイルに変革の兆しが見えているこのタイミングだからこそ、Zoomが日本の皆さんをサポートしていきたいと考えています。

 ただし、日本におけるZoomのブランディング活動はまだ始まったばかりです。当社が日本のカスタマーから信頼を得るためにはまだまだ努力が必要です。米国、英国他ヨーロッパ諸国、オーストラリア、インドや中国でも当社は積極的に活動し基盤を築き、実績をあげてきました。少し時間がかかるかもしれませんが、日本でも同じように基盤を築いていきたいですし、築けると考えています。

Photo: Blue Planet Studio/Shutterstock

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