Zoomをいち早く発掘し、日本市場で独占契約できた理由

Zoomをいち早く発掘し、日本市場で独占契約できた理由

Silicon Valley / Zoom / Japanese Corporations / NECネッツエスアイ
2019-06-12 06:55
NECネッツエスアイは、ICT(情報通信技術)システムに関する企画・コンサルティング、設計、構築、保守・運用、監視サービスまで一貫して提供しているコミュニケーションシステムインテグレーター(SIer)だ。2012年からシリコンバレーでの新商材発掘活動を始め、現在ではシリコンバレーの注目スタートアップと組み、新事業創出を実現させている。Zoom以外にもAltia SystemsやSaviokeなど、米国内外で注目を集めるスタートアップが信頼を寄せる同社。今回はZoomを日本市場に導いた牛原祥太氏に話を聞いた。
牛原 祥太
NECネッツエスアイ
Business Development Manager
2007年にNECネッツエスアイ株式会社(旧:NECネッツエスアイ・エンジニアリング)にネットワークエンジニアとして入社し、テレコムキャリア向けのネットワーク設計・構築に携わる。2015年11月より、シリコンバレーに駐在し、オープンイノベーションを活用した新規事業開発のため、最新テック系ベンチャー企業への投資、パートナリングを推進している。

モテモテだったZoom。ふつうにアプローチしても会えなかった

―さまざまなビデオ会議システムがある中で、なぜZoomに着目したのでしょうか。

SIerとして様々なビデオ会議システムに関わってきたからこそ、Zoomの良さはすぐにわかりました。シンプルで操作が簡単ですし、通信パフォーマンスの良さが特に素晴らしい。スマホなど様々なデバイスでも使えるなど、今までにないビデオ会議システムだと感じました。加えて、著名VCのセコイア・キャピタルからの資金調達に成功しており、社内でもすぐに「これだ!」という反応でしたね。

―当時、Zoomには多くの日本企業がアプローチをかけていたものの、なかなか会うことすらできずにいたと聞いています。どのように御社はアプローチしたのですか。

 当時、すでにZoomはかなり「モテモテ」な企業でした。ふつうにアプローチしても会うことはできませんでした。

 我々がZoomのCEOであるEricさんにアクセスできたのは、スタートアップのCEOネットワークを頼ったからです。当社のパートナーにAltia Systems(以下Altia)という180度のパノラマ映像を高画質で撮影できるUSBカメラを開発したスタートアップがあって、そこがZoomとパートナーだったんです。そこで、AltiaのCEOにZoomのEricさんを紹介してほしいとお願いしたところ、快諾いただき、Ericさんと直接会うことができました。

 Ericさんとお会いした時は、「私たちは何者なのか」というところからお話ししました。グローバルで考えると、NECのブランドは広く浸透しているわけではありませんし、そのグループ会社となるとさらに、「何をしている会社で、どんなお客さんをもっているの?」という感じなので、最初に自社についてしっかり説明しました。Ericさんはとても誠実な方で、Zoomのパートナーになるにあたり、私たちのことをフェアに見てくださったと思います。

 当社は、2017年から働き方改革に取り組む中で、既存のビデオ会議システム以上の商材を探していたところでした。Ericさんに自分たちがZoomと何をやりたいのかを説明する際に、日本国内の働き方改革についてもご説明したんです。

 Ericさんは非常にスマートな方で、一を聞いて十を知るという感じで、すぐに日本の状況や我々のやりたいことを理解してくださり、話が進みました。実際、契約まで直接お会いしたのは3回くらいです。Ericさんと初めてお会いしたのが2017年の春頃で、夏にはトレーニングを行い、9月から販売を開始しました。

右下二番目が牛原氏、一番左がCEOのEric Yuan氏

―日本市場での販売独占契約を締結したんですよね。

 Ericさんにお会いできたので、「せっかくのチャンスに言わなければ損だ」という気持ちから独占契約を提案しました。すると、驚いたことにすんなりOKをいただくことができたんです。現在は独占契約ではありませんが、当時私たちもかなりコミットし、日本での販売目標に関しても強気な数値を提示したことも効いたのかもしれません。

 また今回当社との話がスムーズに進んだのは、Head of InternationalのAbeさんの存在も大きかったかもしれません。彼は日本に長く住んでいた経験があり、日本文化を知っている方です。スタートアップと関係を構築する上で、言葉の問題ではなく文化を知っている人が相手側にいることがすごく大事だと思います。

ZoomはIPO後もすごく真面目

―我々はEricさんたちへのインタビューを通じて、Zoomはビジョンや価値観をしっかり共有した「一枚岩なチーム」という印象を受けました。牛原さんが感じたZoomの印象や他にない良さがあれば、教えてもらえますか。

 Ericさんをはじめ、経営チームの多くがCisco出身で、とてもきちんとした企業だという印象が強いですね。IPOした後は何度も盛大なパーティーを開くスタートアップが多いのですが、IPOのお祝いパーティーは初日に一回だけで、すぐに通常通り仕事に戻ったそうです。Ericさんはすごく真面目な方なんですよね。

 そして、皆さんとてもフレンドリーです。我々がZoomのオフィスに行っても、「Hey Shota! Welcome back」みたいな感じで気さくに声をかけてもらえます。

 Ericさんもあれだけ有名な企業のCEOなのに偉ぶらず、誰に対しても対等に接してくれます。「Zoomtopia」というユーザーカンファレンスが年に1回あるのですが、一昨年に開催された1回目ではパーティー会場でビアサーバーを背負い、お客様やパートナーにビールを注いで回っていました。そして昨年に開催された2回目ではパーティー会場の入り口で参加者にサングラスを配っていました。普通のCEOは絶対にしないなと感心したのを覚えています。

短期間で400社以上に導入した日本展開戦略

―販売契約締結後、どれくらい日本市場で導入されたのでしょうか。

 国内だと400社以上の企業または団体に導入いただいています。大きいところでは、日本航空 (JAL)様に社内コミュニケーションツールとしてご導入いただきました。

―日本市場での販売にあたり、どのような戦略を取られましたか。日本向けのローカライズはどれくらい必要だったのでしょう。

 当社と契約を締結する以前から日本語版は作られていました。ですから、当社がローカライズを行う必要はありませんでした。

 Zoomはとても優れたサービスなのですが、最初は日本での認知度はとても低かったので、まず使ってもらうことが大事だと考えました。そのためには、まずは自分たちが使用する必要があったので、全社員にZoomのライセンスを付与しました。すると、特に営業部隊が社内だけでなく、社外のお客様ともZoomを使用するようになり、そのままZoomのトライアルへ進むケースが多くなりました。

 また当社では、オフィスをライブオフィスとしてお客様に見学して頂けるようになっています。年に数千人の見学者があり、会議室やオープンな環境でのZoomの実際の利用シーンを見て頂くことで、お客様自身で利用シーンを想像してもらえるようになりました。

 実際のパフォーマンスを体験して頂く際には、例えば、最初は対面で会議を始め、途中からプレゼンターが別室に移動しビデオ会議システムを介して話を続け、次にアメリカにいる私や、タイにいる当社の駐在と繋ぎ、パソコンとスマホの両方でパフォーマンスを確認してもらう、というようなプロモーションも行っています。

 また、最初は一事業部だけがZoomを取り扱っていたのですが、現在は全営業がどこにでもZoomを紹介していこうという考え方です。我々の事業体がSIerというネットワーク領域なので、あらゆる業界のお客さんがいらっしゃいます。また、社内利用という意味ではZoomは業界問わず使えるシステムですので、事業部を超えて当社営業の総力を持って販売にあたっています。

スタートアップの時間は貴重。「会ってもらえるだけでもありがたい」

―最後に、Zoomを含めスタートアップと対話する際に気をつけていることなど、アドバイスがあればお願いします。

 初めて会う時は自分が誰で、何をしたいかをはっきりと伝えるようにしています。スタートアップと会う時は、その企業が持っているテクノロジーで当社だったらこんなことができるんじゃないか、という仮説を提示すること。これは、絶対に心がけていることですね。

 それと、大人数で押しかけないこと。話がまとまり始めたら、当社の執行役や社長にも会ってもらいますが、最初の商談にはだいたい僕が一人で伺うことが多いです。

 短期間で決断することも大事です。相手から聞かれることも多いので、「何ヶ月以内に決める」と最初に伝えるようにしています。ZoomやSavioke(デリバリーサービスロボット「Relay」の開発会社)もだいたい4ヶ月くらいで決断しました。もっと短いと投資まで3ヶ月というところもあります。シリコンバレーでは日本の大企業イコールかなりスロー、というイメージがあるので、当社もそれをやってしまうと日本企業の悪いイメージを持たれてしまいます。そのため、やる時もやらない時もスピーディーに決断するようにしています。

 スピーディーな決断ができているのは、当社の経営陣とシリコンバレー駐在が直接つながっているからです。そして、経営陣もシリコンバレーのスタートアップとの付き合い方や、彼らの技術や商品・サービスの活用に関して理解しているからだと思います。

 スタートアップの一時間はかなり貴重だということを念頭においています。「会っていただけるだけでありがたい」という感覚を常に持ちながら会うようにしていますね。

【特集】最強ビデオ会議ツールZoom

#00 競合ひしめくビデオ会議ツールでZoomが成功できたわけ

#01 【CEO独占インタビュー】なぜZoomは世界中で好まれるビデオ会議になったか?

#02 なぜZoomは使いやすいか。磨き込まれた機能、デザインの秘密

#03 世界で使われるための、たった一つの"共通戦略”

#04 CMOが語る、Zoomのマーケティング戦略

#05 Zoomをいち早く発掘し、日本市場で独占契約できた理由

関連記事
4年で3件の事業化に成功、IHIのシリコンバレー事業開発力
4年で3件の事業化に成功、IHIのシリコンバレー事業開発力
4年で3件の事業化に成功、IHIのシリコンバレー事業開発力の詳細を見る
急成長する東南アジアのトレンドを把握! 注目スタートアップ50社をまとめた「Southeast Asia Startups 50」をリリース
急成長する東南アジアのトレンドを把握! 注目スタートアップ50社をまとめた「Southeast Asia Startups 50」をリリース
急成長する東南アジアのトレンドを把握! 注目スタートアップ50社をまとめた「Southeast Asia Startups 50」をリリースの詳細を見る
「Healthcare Startups 50」を公開! 米国やイスラエルのヘルスケア分野の注目スタートアップ50社
「Healthcare Startups 50」を公開! 米国やイスラエルのヘルスケア分野の注目スタートアップ50社
「Healthcare Startups 50」を公開! 米国やイスラエルのヘルスケア分野の注目スタートアップ50社の詳細を見る
【dotData】カーブアウトを日本企業のR&D の一つに
【dotData】カーブアウトを日本企業のR&D の一つに
【dotData】カーブアウトを日本企業のR&D の一つにの詳細を見る
あえて将来の有望株は外で育てる。 NECからのカーブアウトで生まれたAIスタートアップ
あえて将来の有望株は外で育てる。 NECからのカーブアウトで生まれたAIスタートアップ
あえて将来の有望株は外で育てる。 NECからのカーブアウトで生まれたAIスタートアップの詳細を見る
【デンソー】数字の皮算用より、ワクワク感が大事
【デンソー】数字の皮算用より、ワクワク感が大事
【デンソー】数字の皮算用より、ワクワク感が大事の詳細を見る