目次
・においと味を感知する機械
・学問的な知見が起業の重要なピースに
・セキュリティやヘルスケア分野で活用
・ハードウェア開発企業との提携に関心
においと味を感知する機械
Konikuのプロダクトを一言で表現すると「においと味を感知する機械」だという。同社は、ニューロンと半導体チップを融合したバイオチップを搭載し、臭気をとらえてデジタルデータとして処理できるセンサーデバイスを開発。検知したデータを分析するクラウドサービスもあり、これらを併せたプラットフォームを提供している。
「空気を集め、においを分析する『においプロセッサー』を作りました。例えば、セキュリティ用途であれば爆発物や薬物などを感知することができます。もちろん、セキュリティだけでなく、臭気が関係するさまざまな用途に利用できます」
農業分野では、害虫や有毒な化合物の検知に、食品分野では品質管理や検査に利用できる。トイレにセンサーを設置すれば尿から病気の診断も可能だ。さらに、においや味を再現することも可能だという。
Konikuの臭気センサーデバイスは、臭気を集める部分とバイオチップ、そしてクラウドにデータを送信するためのWi-FiやBluetooth、モバイルネットワーク向けの無線モジュールを搭載している。なお、バイオチップは生体ニューロンを利用しているため、現在は30日間ほど動作する消耗品となっている。
Agabi氏は、「ニューロンを電子デバイスと組み合わせる最善の方法を探ることは非常に難しく、チャレンジングなことでした。われわれは非常に多くのステップを踏み、数多くの失敗も経験しました。具体的な名前は出せませんが、解決策を求めて大阪のとある企業を訪ねたこともあるんです。当社と同じように、ニューロンとシリコンを搭載したデバイスを作ったり、においの検知やデジタル化を試みている人たちはいます。しかし、私たちのように嗅覚や味覚をデジタル化できている人たちはほとんどいないと思います。私たちはこの分野での主導的なポジションにあると自負しています」と話す。
image: Koniku HP
学問的な知見が起業の重要なピースに
Agabi氏はナイジェリア出身。2001年にラゴス大学で理論・数理物理学の学士号を取得後、2005年にはスウェーデンのウメオ大学で実験物理学と理論物理学を学び修士号を取得。液体状態機械を応用し、生体ニューロンのオンチップ共培養モデルを開発した。その後、博士課程のためスイスのチューリッヒ工科大学に移り、スイスではNeuronicsというロボティクス企業にも勤務した。博士課程を中退した後、2014年にはインペリアル・カレッジ・ロンドンにて計算神経科学・工学の博士号を取得。2015年にKonikuを創業した。
「修士号の取得以降、私が取り組んできたことは全て、今の会社の重要なピースとなっています。博士号そのものに興味があったわけではなく、興味があったのは私が得意とする技術でした」
セキュリティやヘルスケア分野で活用
Konikuはこれまで、爆発物を検出するための慈善事業や農業分野での害虫検知などに携わってきた。争いや事件の絶えない現代社会において、爆発物や薬物、密輸品、違法薬物などを検知するセキュリティ・安全保障分野での需要は高まっているという。
また、医療業界にも注目しており、Agabi氏は「私たちは、バスルームをヘルスケア・データセンターにすることを目指しています。大抵の人は誰でも、朝起きたらトイレに行きますね。そこに当社のデバイスを設置し、においを分析して健康維持に役立てるのです。私たちのデバイスは湿度による干渉なく動作します」と述べた。
ハードウェア開発企業との提携に関心
Konikuの事業拡大ステージはこれからだ。具体的な数値は非公開としているが、すでにかなりの収益をあげているという。そして今後12〜24カ月の間に、欧州、中東、米国などでプロダクトを市場投入していく。日本でも、セキュリティ分野などでの実証に向けた協議を進めているという。
「日本市場において、2次的な技術を構築してくれるパートナーを探しています。私たちのデバイスはノートパソコンに入っているインテルチップのようなものです。私たちは、このデバイスを日本の企業に提供したいとと考えていますので、ハードウェア開発企業とパートナーシップを組みたいです。また、トイレなどのメーカーともコラボレーションしたいです。個人的に日本は大好きですので、オープンにビジネスをしたいです」
Konikuの長期ビジョンは、臭気の検出・分析にとどまらず、生物学と半導体の融合技術を追求していくことだ。Agabi氏は博士課程における、生物学的ニューロンの計算への応用研究のなかで、この技術を人々の生活に役立てたいと考えて、匂いの検出というアイデアに到達した。Agabi氏は「今後技術が洗練されていけば、光や触覚が検出できるようになり、最終的には人工知能への道筋をつけることができると信じています。信じられないほどの成長の可能性を秘めた技術です」と語った。
Agabi氏はKonikuではオープンにパートナーを探しているとし、「われわれのデバイスやハードウェアの開発者と協力いただけるパートナーを募集しています。日本の企業がこの申し出を受け入れてくれるなら、それは私たちにとって名誉なことです。また、日本においてセキュリティや食品分野などで匂いを検知したいニーズをお持ちの方々と仕事ができることも嬉しく思っています」とコメントした。