高齢者のケアや生活支援などにも続々とテックが活用される世の中になった。今回紹介するのは、高齢者と大学生のマッチングプラットフォームを開発した米フロリダ発のPapa。シニア本人やその家族が、日々の生活を手助けしてくれる「孫」のような若者を探し、派遣を依頼できるファミリーオンデマンドサービスを提供している。日本からはソフトバンクビジョンファンドも出資している。Papaの設立の経緯や医療保険などとの連携、高齢者の孤立を防ぎたいという思いなどを、共同創業者でCEOのAndrew Parker氏に聞いた。

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Palにお任せ 病院送迎、家事の手伝い、話し相手にも

――サービスの詳細と立ち上げのきっかけを教えてください。

 Papaは、自分の祖父を助けるために5年前に始めました。祖父はみんなからPapaと呼ばれており、寄り添い、助けてくれる存在を必要としていました。エネルギーあふれる、優しい若者を見つけて一緒に時間を過ごせればきっと楽しいだろうと思い、アプリ上で「Pal」と呼ぶ存在を見つけマッチングをしたのです。それが成功し、祖父は非常に気に入ってくれました。その経験から、高齢者に寄り添って助けてくれる存在の重要性を知りました。そこでPapaをローンチしたのです。

 PapaでマッチングするPalとなる大学生は、高齢者を病院まで送迎したり、家事を手伝ったり、最新のテクノロジーの使い方を教えたりします。何よりも、高齢者の近くにいて助けてくれて、仲間となってくれるような存在となるのです。基本的には、医療保険の加入者に対してサービスを提供していますが、設立から4年経ち、会社は急速に成長しました。

Andrew Parker
Co-Founder & CEO
米フロリダ州立大学でファイナンスの学士号を取得後、AT&Tで顧客担当業務に2年ほど従事。その後、遠隔医療プロバイダーのMDLIVEでセールスディレクターを経験後、2014年から3年間、ヘルスシステム部門の副社長を務める。2017年、Papaを設立し、CEOに就任した。

サービスで「孤独」を防ぎたい

――このようなサービスが必要とされる背景について見解を教えてください。

 私たちのようなサービスは常に必要とされていましたが、今はまさにぴったりの時期でしょう。ある統計によると、人の健康の8割は、社会的な側面が大きく貢献しています。つまり、孤独だったり、食物供給の不安定さ、交通の便、ヘルスケアへのアクセスの良さなどが影響すると考えられます。Palは、高齢者のもとへ行き、そのような利便性を提供することができます。

 また、ある研究によると、孤独な状態は1日15本のタバコを吸うのと同等の悪影響があるとの結果が出ています。高齢者に置き換えると、どれほど不健康な影響か分かりますよね。社会的な平等がこれまで以上に叫ばれる中で、米国内の保険事業者が私たちのサービスをサポートしてくれることは重要なことだと感じます。

利用者のニーズを把握してゼロから開発

――開発にあたり、どのような点を工夫しましたか。

 アクセス手段は、アプリ、電話、SMSなどいくつかあります。大部分のユーザーは保険事業者からの紹介です。サービスを提供する側のPal達は、アプリを使っています。私たちのアプリは、ゼロから自社で開発した独自アプリです。

 サービスを提供する上で課題だったのはユーザー層を理解することです。高齢者が対象なので、みんながテクノロジーを使いこなせるわけではありません。ユーザーと、その家族を考慮してサービス展開を考えました。それに対して、若者は非常にテクノロジーに精通しています。シンプルで、使いやすいアプリやUXを求めるのです。

 両方の利用者層を理解し、高齢者に特化したサービスを開発しなくてはいけなかった点においては、私たちはユニークな企業だと言えるでしょう。

Image: Papa

――創業以来、パンデミック中の需要も含めてここまでの道のりはどうでしたか。

 1番のインパクトはやはり高齢者とその家族に与えた影響でしょう。みなさんから送られてくるストーリーは尽きません。どうやってFacebookを使ったらいいのかを教えることで、家族や友人とつながることができたり、高齢者が自身の生い立ちを話してくれたり、政治家やミュージシャンが会いに来てくれたり。大学に通い始めた高齢者もいました。

 それぞれのストーリーがユニークです。もちろん、いつもスムーズにいくわけではありません。人の命を助けなくてはいけなかった場合もありました。非常にパワフルな活動をしていて、Papaの事業に関わる700人以上の人たちを大変誇りに思っています。

 リモートワークの今、私たちはマイアミにHQを置いていますが、なかなか人に会うことができない環境でも指数関数的成長を遂げました。私たち自身が築き上げた、支援の輪や企業カルチャーにプライドを持っています。コロナ禍ではバーチャル訪問を提供する支援ができました。対面でサービスを提供できないことで、失敗するだろうと思いましたが、実際には楽しく、生産的にサービスを展開できました。

オンデマンドの家族支援、社会問題を解決していく

――2021年11月には、シリーズDでソフトバンクビジョンファンドなどから1.5億ドル(約178億円)の資金を調達しました。使い道や、これからの目標を教えてください

 私たちが力を入れて取り組んでいることは、米国内の家族をオンデマンドで支援することです。メディケア等(米国政府運営の高齢者向け医療保険)に加入している場合や、雇用手当を通してサービスを利用できる場合は、家族や自身のためにPapaを使うことができます。

 資本に関しては、プロダクト開発、データサイエンス、カスタマーエクスペリエンスをより一層改善していくこと、そして現在登録しているPal達のネットワークを広げていくことです。会社としては、サービスを提供するPal、サービスの受け手であるPapa、そして家族のメンバー、社員などコミュニティの全てのメンバーが利益を享受できることに価値を見出しています。今年は、包括的に提供する側も、受け手側もハッピーになるようにしていくことが目標です。

――今後、日本展開の可能性はありますか。

 個人的にですが、長期休暇で日本を訪れたことがあります。ニセコでスキーをしたり、京都、東京を訪問しました。非常に気に入りました。実は去年のクリスマスと新年の休暇で日本にも行く予定だったのです。

 日本は、主に孤立化や高齢化社会などの社会問題に影響されており、その点では非常に興味深い国だと思います。少子化もあり、昔より子供を持つ家族が減っています。ただこれは日本に限らず世界中で見受けられる事象です。私たちはソフトバンクビジョンファンドから出資を受けており、ぜひチャンスがあれば日本に行きたいと思っています。

 米国では保険事業者との提携を通してサービスを展開していますが、日本でも国民保険、雇用保険を提供する政府機関、社会保障関連機関や自治体と協力できればと思います。

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