Image: Modern Health HP
日本でもかねてから働き手の長時間労働による過労やメンタルヘルスの問題は取りざたされている。コロナ禍で在宅勤務などによるストレスも増える中、どのようにメンタルヘルスを管理すべきか。Modern Healthは企業向けに従業員のメンタルヘルスを守るためのアプリを提供している。創業者でCEOのAlyson Friedensohn氏に話を聞いた。

孫世代の大学生がシニア層の暮らしをサポート マッチングプラットフォームPapa
関連記事
孫世代の大学生がシニア層の暮らしをサポート マッチングプラットフォームPapa
「孫世代の大学生がシニア層の暮らしをサポート マッチングプラットフォームPapa」の詳細を見る

メンタルヘルスに「予防」を取り入れたい

――どのような経緯でModern Healthを立ち上げたのですか。

 私は両親が医師で、ヘルスケア領域や予防ケアが健康全体に良い影響をもたらすと感じながら育ちました。ジョンズ・ホプキンズ大学に行って自分も医師になりたいと思っていましたが、結果的にヘルスケア領域でもっとマクロなインパクトをもたらす方法を見つけたいと感じるようになりました。

 ワシントンD.C.でヘルスケアコンサルの会社で働きながら、いつか起業したいと考えていました。そこでシリコンバレーのことはほとんど知らなかったのですが、移り住むことにして片道切符でやってきました。それで複数の医療系のスタートアップで働くうちに、メンタルヘルスの領域にはまだまだニーズがあることに気がついたのです。

Alyson Friedensohn
Modern Health
Co-Founder & CEO
Johns Hopkins Universityにて地球環境変動と持続可能性に関する学位を取得。PwCに約2年半勤務後、ソフトウェア企業のCollective HealthにてProduct Partner Operationsを務める。2017年、Modern Healthを共同設立し、CEOに就任。Forbesの30 Under 30およびFortune's 40 Under 40リストに選出。

――メンタルヘルスの扱いにどのような問題意識を感じたのですか。

 多くの人がメンタルヘルスについて考えるときは、すでに危機的なモードになっていたり、鬱で苦しんでいたりするときで、心理セラピストや医療的マネジメントでの対処になります。でも、よりホリスティック(全体的)なアプローチや、メンタルヘルスに予防的な視点を導入する解決策があるはずだと考えたのです。

 日々のストレスを管理すること、新しく親になったとか愛する人を失ったというような出来事、落ち込むこと、不安…様々なことが私たちには降りかかってきます。一つのサイズで皆にフィットするような服はなく、個々にあわせたケアを提供するサービスが必要だと思いました。

デジタルプログラム、バーチャルコーチング、専門家のセラピーを提供

――具体的には何を提供しているのでしょうか。

 私たちのサービスはデジタルで、全て自社内でコンテンツを作っています。1つ目は瞑想のライブラリー、音声セラピー、デジタル講座などが鬱や不安への予防や治癒をしてくれます。これらのデジタルプログラムを提供するのに認知行動セラピーを使っています。

 もう1つはバーチャルコーチングです。産後や経済的なストレスなど、様々な専門を持つコーチのグローバルネットワークを保有しています。個々人が抱えている問題に応じて、適切なコーチをマッチングさせることができます。

 3つ目がセラピーです。臨床心理士などの専門家が鬱の程度などをアプリでアセスメントをして、適切なケアにつなげられるようトリアージをします。

――顧客は企業でしょうか。

 今のところは企業向けで、企業が従業員にアプリを使えるようにし、従業員は無料で利用ができるという枠組みです。様々な業種で従業員の健康は優先度が上がっていますから、 Lyft、楽天、Pixarなど様々な業界の企業が顧客となっています。

Image: Modern Health

コロナ禍でストレスは明らかに増えている

――コロナによるパンデミックで事業環境はどのように変化していますか。

 パンデミックが出てくる以前も、働き方に大きく変わりつつあり、ヘルスケア分野に投資する動きが出ていました。それがパンデミックで行動制限が出て、自宅から働くと四六時中仕事と隣り合わせという環境になりました。既にアプリを使っていた人の利用量はロックダウン以降で56%も増えました。

 65%のユーザーはストレスや不安で周りのサポートをリクエストしています。37%は仕事のパフォーマンスに不安を抱えています。在宅でいること、あるいは経済低迷により職を失うのではないかという不安などでストレスは明らかに増えています。

――今後、短期的・長期的に目指すゴールは何でしょう。

 今はできる限り多くの人に使ってもらうことを目指しています。長期的にはメンタルヘルスへのスティグマを無くし、誰もがかかわるものにしてきたいのです。身体の健康を大事にするように、世界中の人がメンタルヘルスにも気を配るような世界を目指します。

――グローバル展開は既に進めていますか?

 グローバルに拠点がある企業に提供をしていますから、日本に従業員がいるという顧客企業もありますし、日本にいるセラピストや心理士もいます。今後もパートナー企業は増やしていきたいと思っています。企業は従業員のメンタルヘルスに対する優先順位を本当に上げていってほしいと思っています。

ヘルステック カテゴリ別資金調達動向レポート
関連記事
ヘルステック カテゴリ別資金調達動向レポート
「ヘルステック カテゴリ別資金調達動向レポート」の詳細を見る

ヘルステック12分野の最新トレンド。遠隔医療やAI画像診断、メンタルヘルス領域まで
関連記事
ヘルステック12分野の最新トレンド。遠隔医療やAI画像診断、メンタルヘルス領域まで
「ヘルステック12分野の最新トレンド。遠隔医療やAI画像診断、メンタルヘルス領域まで」の詳細を見る



RELATED ARTICLES
社員の「妄想」を形に、ユカイ工学の製品開発アプローチとは
社員の「妄想」を形に、ユカイ工学の製品開発アプローチとは
社員の「妄想」を形に、ユカイ工学の製品開発アプローチとはの詳細を見る
【特許トレンド解説付き】ヘルスケアの技術動向調査レポートを公開
【特許トレンド解説付き】ヘルスケアの技術動向調査レポートを公開
【特許トレンド解説付き】ヘルスケアの技術動向調査レポートを公開の詳細を見る
Amazonも本腰、プライマリケア×ヘルステック │ TECHBLITZが選ぶスタートアップ5選
Amazonも本腰、プライマリケア×ヘルステック │ TECHBLITZが選ぶスタートアップ5選
Amazonも本腰、プライマリケア×ヘルステック │ TECHBLITZが選ぶスタートアップ5選の詳細を見る
培養肉の開発競争、「先頭集団」だった日本の現在地
培養肉の開発競争、「先頭集団」だった日本の現在地
培養肉の開発競争、「先頭集団」だった日本の現在地の詳細を見る
【NEW JAPAN SUMMIT 2023】ピッチ登壇&ブース出展企業紹介 海外スタートアップ編
【NEW JAPAN SUMMIT 2023】ピッチ登壇&ブース出展企業紹介 海外スタートアップ編
【NEW JAPAN SUMMIT 2023】ピッチ登壇&ブース出展企業紹介 海外スタートアップ編の詳細を見る
予約管理もキャンセル対策もこれひとつ 飲食店も客もハッピーに TableCheck
予約管理もキャンセル対策もこれひとつ 飲食店も客もハッピーに TableCheck
予約管理もキャンセル対策もこれひとつ 飲食店も客もハッピーに TableCheckの詳細を見る

NEWS LETTER

世界のイノベーション、イベント、
お役立ち情報をお届け
「グローバルオープンイノベーションインサイト」
もプレゼント



Copyright © 2023 Ishin Co., Ltd. All Rights Reserved.