Image: Parsable
Parsableは企業向けの労働管理プラットフォームを製造する企業だ。作業手順や報告書などをデジタルデータ化し、社内共有することで全体の作業効率やクオリティ向上に貢献するシステムを構築する。今回はCo-founder & CEOのLawrence Whittle氏に話を聞いた

ソフトウェアのプロであるCEOが、労働者とテクノロジーの融合を命題にまい進

―まずはCEOの経歴を教えてください。

 私はイギリス出身で、洗練された生産計画システムを提供するソフトウェア会社に勤務していました。シリコンバレーに来てからの15年は企業向けのソフトウェア事業でキャリアを積んできました。私が主に扱っているテーマは「企業」と「データ分析」の2つで、それが私のDNAのようなものです。父がヘルメットを着用して働く、まさしくブルーカラーだったので、テクノロジーと労働者を1つにまとめることが私の命題のようになっています。

Lawrence Whittle
Parsable
Co-founder & CEO
イーストロンドン大学でビジネスおよび会計を学ぶ。イギリスで複数のソフトウェア会社に勤務したのちに渡米。ソフト会社のCROやCSOを歴任し、2016年にParsableのCROに、2017年にはCEOに就任し、現在に至る。
 

―そうした思いがParsableを作っているのですね。

 そうですね。世界経済の大部分はテクノロジーの恩恵を受けていないことに気がついたのです。世界の労働人口の80%はオフィスの机ではなく、製造現場や工場、小売店などを駆け回っていると。我々はそこにビジネスを加速させる大きな機会を見出し、これまでシリコンバレーではあまり見られなかったテクノロジー領域に参入しました。これが当社のスタートラインです。

―具体的にどういった製品を提供しているのでしょうか。

 私たちは「コネクテッド・ワーカープラットフォーム」というプロダクトを提供しています。これまで労働者が紙ベースやってきた作業をデジタル化する、最新のツールです。

 レストランのトイレを想像してみてください。何時に清掃されたかというチェックの紙がありますよね。トイレの床を見ると本当に清掃されたのか疑わしいことはないでしょうか。我々のプラットフォームを使うことで業務プロセスをデジタル化でき、業務を実行し、そのデータを取得、分析することで、業務の効率化や品質、安全性が向上します。

 今、いわゆるブルーカラーの労働者の多くは、その道20年や30年のベテランです。彼らのノウハウをデジタル、あるいはデータベース化して共有すれば、初心者でもたとえば作業マニュアルをデジタルチェックリスト化するなど、技術を総合的に向上させることができるのです。

高度なシステムながら、シンプルで使いやすい汎用性が魅力

―ビジネスモデルについてはどうなっていますか。

 基本的にサブスクリプションベースのクラウド型ソリューションなので、App StoreやGoogle Playストアからアプリをダウンロードすればすぐに作業を開始できます。

―他社にはない、独自の強みはどういったところでしょうか。

 正直、今は他者との競争はあまり重要視していません。どちらかというと、競合相手は旧来のビジネスシステムそのものですね。重要なのは、いかに新しい働き方を人々に知ってもらうか、ということ。これが、意外と大変でした。

 今はデジタルソリューションの成果がずいぶん周知され、市場も活発化しています。なので、今は個別のプロセスに特化したツールを提供する、ニッチなプロバイダも競合と呼べるでしょうね。

 そんな中で、我々の強みは、いつでも誰でも使える汎用的なプラットフォームというアプローチを取ったことだと思います。

―これまで、海外での事業展開はあったのでしょうか。

 はい。今は131の国で利用されています。131番目の国はアフリカの南スーダンです。国際展開がうまくいったのも、私たちの初期の顧客の多くがエネルギー業界や食品市場にあったからだと思います。大きくてグローバルな業界ですから。今は12の言語に対応しており、現地向けの製品も用意しています。AndroidやiOSのアプリで簡単に使えることもメリットになっていますね。  

世界中の労働者に、効率性と安全性を提供していくため、優良なパートナーが不可欠

―日本への参入も検討されていますか。

 Parsableの本社はサンフランシスコで、バンクーバーとメキシコに開発センターがあります。あと、ヨーロッパの事業拠点としてアイルランドにもオフィスがあります。正直、アメリカとヨーロッパはやりやすいというのが本音です。

 しかしアジア、特に日本へ参入するとなると、パートナーが不可欠ですね。実際、今までのアジア向け事業はほとんど、すでにこれらの市場に展開している欧米の企業を通じてやってきました。今後アジア市場にも積極的に参入するうえで、現地の市場を理解し、成長を支えてくれるパートナーを求めています。

―将来的なビジョンがあれば教えてください。

 日本もそうだと思いますが、労働者の多くはテクノロジーから置き去りにされています。品質、安全性、効率性を維持するのが非常に困難な状況です。私たちは、こうした労働者を本当の意味で解放したいと思っています。

 彼らの知識をデジタル形式で取り込み、すべての人が高品質レベルで作業を実行できるようにする。さらにデータを収集し、効率性を向上させたいと考えています。非常に大きなミッションですね。紙の代わりにデジタルツールを使うことで、仕事の持続可能性の向上にもつながります。これが私の長期的ビジョンになります。

 短期的には、より多くの人に簡単に使ってもらえるサービスを展開していきたいと思います。

―最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

 今、労働者の仕事の多くがロボットに奪われていると言われていますが、それは間違いです。今後20年間で世界は食料や水不足、そして熟練した労働者不足に悩まされることになります。今こそ、ベテランの技術を若い世代に効率的に伝えていかなくてはなりません。そのために私は素晴らしい製品を開発しました。仕事の未来を人間が作っていくために、是非力を合わせましょう。



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