Zoom特集の第4回目は、マーケティングに焦点を当てる。2015年からZoomのマーケティング部門を立ち上げ、現在その統括を担うChief Marketing OfficerのJanine Pelosi氏に聞いた。

Janine Pelosi
Zoom Video Communications
CMO
サンノゼ州立大学にてマーケティングの学士号を取得。2004年にWebEx入社、Online Marketing Managerを務める。2007年からCiscoのマーケティング部門にてSenior ManagerとしてWebEx Onlineのマーケティングを担当。2015年にZoomのHead of Marketingに就任。15年以上戦略マーケティングに携わってきた実績を活かして、SaaSビジネスモデルの専門家としてチームを率いる。

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エンドユーザー自身にZoomの魅力を語ってもらう

―Zoomのマーケティング活動においてどんなことを重視していますか。

 CEOのEricも私もビデオ会議の業界に長くいますので、Zoomはクチコミで拡散されていくと考えていました。だからこそ、新興市場やTOFU(Top of the Funnelトップオブファネル)に注力する戦略をとっています。

―マーケティング活動の成功には営業部門との連携が重要ですね。

 Zoomではマーケティング部門も営業部門も素晴らしく連携が取れています。営業部門の責任者や海外展開の責任者のAbeとは常に協力し、計画の立案段階から協同しています。

 またマーケティング活動において、部門間の連携以外に重要となるのが「投資」です。当社はCEOのEricをはじめ、経営陣がマーケティング活動への投資に理解があります。特にEricはマーケティング部門の“エクステンション”だと私たちが冗談にするほど、素晴らしいアイデアを持っていて、マーケティング活動にとても理解があります。そのおかげで、空港での広告展開など、ROIが見えにくいものでも、積極的に行うことができました。

―競合他社が多い中、差別化要素をどうユーザーに伝えていくのですか。

 例えば、Zoomがいかに使いやすいかを私たちが語り始めたら一日中続けることができます。しかし、それは競合他社もすでにやっていることなので差別化はできません。当社では、まずはZoomを使ってくださったユーザーと信頼関係を築くことに注力しました。

 そして、第三者やカスタマー、つまりエンドユーザーによる製品の妥当性確認を通じて、ユーザー自身にZoomについて語ってもらいました。エンドユーザーが発信する率直なコメントは影響力があります。それと同時に、そうしたコメントを製品イノベーションにも活用しました。当社では、情報の信頼性を守りソーシャルプレゼンスを構築しています。

 また、ブランド構築においては、複数のマーケティング・チャネルにおける高い露出頻度が重要だと私は考えています。当社のサイトで常に新しい情報を発信することや、SNSやYouTubeでの発信に加え、サンフランシスコ市内では、屋内やバス広告、そしてラジオも使い、どこにいてもZoomを目にするように仕掛けました。

Zoom社員は常に「Happiness」を意識している

―マーケティングキャンペーンで特に成功しているものがあれば教えてください。

 そうですね、“#MeetHappy”が好評ですね。これはグローバルに実施しています。今までは、ビデオ会議システムを使ってミーティングを設定するその行為に多少なりストレスがありました。それをZoomが解決し、皆さんを笑顔にしたいという想いを”#MeetHappy”に込めて始めたキャンペーンです。当社にとって、最も大切なのはエンドユーザーをHappyにすることで、”#MeetHappy”はZoomの一部となっています。

 皆さんに幸せをもたらすことを当社は真剣に考えています。そしてそれがNPSスコア(ネット・プロモーター・スコア)に表れています。当社のNPSスコアは72です。これは、非常に高いスコアで、エンドユーザーのZoomへの満足が高いことを示しています。

―Zoom主催のイベントもありますね。

 「Zoomtopia」ですね。ここ3年ほど年1回開催しているイベントです。Zoomのカスタマーや一般エンドユーザーが参加でき、皆さんに対して「Thank you」とお伝えする場です。

―「Care」そして「Happiness」を大切にしているZoomらしいイベントですね。

 当社は「やるべきこと」に非常にフォーカスしている集団です。そして、成熟した人間の集まりでもあり、謙虚であり続けながら努力を惜しまない会社です。

 「Care」「Happiness」という当社が最も大切にしている考え方が従業員全員に浸透するようにしていますし、浸透していると思います。

Zoomへの関心が自立的に成長している市場を狙う

―Zoomではオーガニックグロースがある程度発生した国に参入している、と聞きました。グローバル、特に日本でのマーケティング展開について教えてください。

 そうですね。コールドマーケットへの参入はなるべく避けています。当社サイトへのアクセス数や、ユーザー登録数、ビデオコミュニケーションカテゴリーでの検索数などを参考にし、すでに関心が集まってきている市場を選んで参入を決めています。消費者が関心を示している市場では需要が期待できますから。

 当社では、様々な国でマーケティング活動を行ってきた経験があり、成功する戦略をナレッジとして蓄積しています。そのナレッジを基に、日本向けのマーケティング戦略を立てました。その際、日本在住の日本人マーケターに協力を得て、その戦略が実際に日本市場に合うかを確認しました。日本では、実際にイベントに参加することや、会食などの機会を通じて関係を築くことを重視していることを私たちも理解しています。今後、日本特有の文化に沿ったマーケティング戦略を本格的に実施していく予定です。

【特集】最強ビデオ会議ツールZoom

#00 競合ひしめくビデオ会議ツールでZoomが成功できたわけ

#01 【CEO独占インタビュー】なぜZoomは世界中で好まれるビデオ会議になったか?

#02 なぜZoomは使いやすいか。磨き込まれた機能、デザインの秘密

#03 世界で使われるための、たった一つの"共通戦略”

#04 CMOが語る、Zoomのマーケティング戦略

#05 Zoomをいち早く発掘し、日本市場で独占契約できた理由

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