Vedantuはインド国内において、3歳から18歳の子どもを対象としたライブ型授業を展開するEラーニングのスタートアップだ。トレーニングを積んだ教師が、生徒の様子を見ながらクイズやアクティビティを交えて教えてくれる。生徒たちは疑問がある際は、リアルタイムで質問などができる。教育用にカスタマイズされた「Skype」のような家庭教師プラットフォームと考えるといいだろう。累計資金調達額が約2.9億ドルに達し、EdTechのユニコーンとなったVedantuの共同創業者兼CEOのVamsi Krishna氏に、事業概要やグローバル進出計画について話を聞いた。

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教育熱心なインド 子どもたちに放課後の学習機会を提供

――Vedantuはどんなオンライン教育プラットフォームですか。

 私たちのスクールは、ライブ配信によるオンライン授業を3歳から18歳の年齢層を対象に提供しています。授業形式は教師と生徒の1対1の個人クラスから、1人の教師が複数名または数百人に教える集団のクラスもあります。無料と有料のクラスがあり、アプリやパソコンを使って毎月3,500万から4,000万人の生徒たちがコンテンツを利用しています。昨年、有料で授業を受けた生徒数は25万人でした。またYouTubeチャンネルでもコンテンツを提供していて、こちらの視聴数は6500万PVにのぼります。

 授業内容は、学校とは異なるカリキュラムを、およそ3つの年齢グループに分けて提供しています。1つは低学年の子どもたち向けに英会話やコーディングを教えています。それ以上の学年になると、科学や数学、社会、英語、ヒンディー語の5教科に加えて、コンピュータサイエンスを教えています。また入学試験を控えた11年生と12年生には、医学部や工学部を受けるための試験準備対策クラスも用意しています。

Vamsi Krishna
Vedantu
Co-Founder & CEO
インド工科大学ボンベイ校の技術科を卒業。2006年に共同創業者Pulkit Jain氏らとともに、オフラインの教育会社Lakshya Instituteを立ち上げる。同社を不動産会社に売却した後、2014年に同じ創業メンバーとともに、Vedantuを創業した。本社はバンガロール。

――料金はどれくらいかかるものですか。

 授業料はコース単位で決まっていて、全額もしくは分割でお支払い頂いています。コースは長期のものから、短期のものまであり、金額は高いものですと1,000ドルくらい、安いもので100ドルくらいです。中には1〜10ドルくらいと、割安で小規模なコースもあります。収益の多くは長期コースのお客様から得ていますね。

――どうしてオンラインスクールを起業しようと思ったのですか。

 Vedantuは私の2社目の起業となります。1社目はLakshyaという100%オフラインのスクールを2006年に創業したのですが、オフライン形式では事業を拡大するのが難しいことに気づきました。そこで2012年にその会社を売却し、2014年にオンライン授業プラットフォームのVedantuを始めたのです。

 インドの家庭は他のアジア諸国と同じようにとても教育熱心で、午後2時過ぎに学校が終わると、多くの児童生徒はアフタースクールに行きます。しかし、地方都市や農村部では高いレベルの放課後教育をなかなか受けることができませんでした。

 そこで、場所に関係なく学べるオンラインスクールにビジネスチャンスを見出しました。事実、私たちのプラットフォームで学ぶ生徒の65%は、バンガロールのような大都市ではなく、中小規模の都市から参加している生徒です。しかもオフラインのスクールに比べると料金は半分程度しかかかりません。都会に住む高所得者だけを狙っているのではなく、インド全土から需要を取り込んでいるからこそ、私たちのサービスは急速に普及したのだと思います。今ではインドで第2位のシェアを持つオンライン授業プラットフォームに成長しました。

Image: Vedantu HP

ライブ配信によるリアルタイムな双方向授業が強み 2年で業績が9倍アップ

――競合他社との違いや特徴はどんなところですか。

 インド最大手のBYJU’Sは、録画形式の授業を提供していますが、Vedantuはライブ形式にこだわっているところが大きな違いです。また私たちは教師のクオリティを重視しています。教師たちがより良い指導法を学んでもらえるよう、Teacher Center of Excellenceというトレーニング部門を設けています。教師たちは採用後、ここで他の先生の教え方を学んだり、データによるフィードバックを受けたりしながらトレーニングを積むことができます。

――新型コロナ流行の影響はいかがでしたか。

 私たちはパンデミックが起きる5年も前から事業をスタートしていたので、むしろプラスの影響を受けました。すでに認知度が高かったおかげで、新型コロナ流行前の生徒数に比べて、2019年に2〜2.5倍、さらに翌年には3〜3.5倍に伸びました。つまりこの2年間で事業規模が8〜9倍に拡大したということですね。

――御社はシリーズEで2021年9月に、シンガポールのABC World AsiaやTiger Global Managementなどから1億ドルを調達しました。2022年2月には200万ドルを調達しています。資金はどのような用途に使っていますか。

 1つはAI技術を使った、もっと低コストで教育を受けられるプロダクトの開発に注力しています。この成果は、今年4月に「Ai LIVE」というプロダクト名でリリースすることができました。もう1つは対応言語の拡大です。インドにはたくさんの言語がありますが、現在はまだ英語とヒンディー語しか対応していないので、もっと増やしていきたいです。最後はハイブリッドスクールのオープンです。つまりオンラインとオフラインを組み合わせた教育サービスを提供できないか検討しています。

UAEに進出 IPOも視野に 「誰でもハイレベルな教育にアクセス」を

――今後の計画や、求めたいパートナーシップについてお聞かせください。

 マイルストーンとして2〜3年先には上場もしたいと考えています。IPO実現のためにより収益性を高めることがこの半年以内の目標です。

 Vedantuの普及率は、いまだインド教育市場の5%にも達していません。まだ国内に多くのポテンシャルが残されています。最近、UAEに進出を果たしたところですので、その結果次第では、東南アジア展開も視野に入れています。

 日本は教育事情の違いを考えると進出の計画はありませんが、もし可能性があるとしたら日本の教育企業を通じてサービス提供することになるでしょう。

――最後に長期的なビジョンについて教えてください。

 Vedantuのミッションは誰でもハイレベルな教育にアクセスできるようにすることです。これはとても長い道のりです。だからこそ、チャレンジし続ける企業文化を作らなければなりません。それができれば、私たち経営陣が退いた後も、素晴らしい変化が自動的に生まれることでしょう。

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