Persona(本社:米国カリフォルニア州)は、ウェブサイトやアプリに追加して利用可能な本人確認プラットフォームを提供する企業。APIによってユーザーのユースケースにあわせて本人確認フローを設定可能で、各種管理が可能なWebベースのダッシュボードも提供する。共同創業者でCEOのRick Song氏に創業の経緯やビジネスの特徴、成長戦略を聞いた。

Squareの日本進出を経験、アイデンティティ認証の重要さを知る

 Song氏は大学卒業後、米決済サービスのSquareにエンジニアとして入社し、約5年間勤務した。Personaのアイデアはここで生まれた。

 当時の主な業務は、Squareが直面するデジタルでのアイデンティティ認証(本人確認)で、特にその検証に関する課題であった。Squareは単に決済プラットフォームに留まらず、フードデリバリーや銀行融資、デジタルバンキングなどさまざまなサービスへの投資を通じて、新たな可能性を追求していた。求められるアイデンティティ認証や認証フローは、サービスの種類によって異なることに気づいた。

 Song氏がSquareで初めて手掛けたプロジェクトは偶然にも、同社初の北米以外への海外進出、すなわち日本への進出であった。

 Song氏は「残念ながら私自身は日本には赴任しませんでしたが、その時期の日本における本人確認は非常に複雑であり、加盟店の確認やKYC(Know Your Customer、金融業界などにおける顧客確認)などの手続きが求められました。例えば、お酒の配達をする場合と、お金の融資を受ける場合では、本人確認の仕方は根本的に異なります。ビジネスの要件に柔軟に対応できるアイデンティティソリューションが必要だと考えたのです」と振り返る。

Rick Song
Co-Founder and CEO
ライス大学でコンピューターサイエンス、数学、経済学を専攻。2013年から2018年までSquareにエンジニアとして勤務し、同社の日本進出に貢献。その経験からアイデンティティ認証の市場に着目し、2018年にPersonaを共同創業する。

国レベルの規制や先端技術にも対応

 Song氏は2018年にPersonaを創業し、多様なアイデンティティ認証に対応するソリューションを開発し、SaaSモデルで提供している。ユーザーは、自社のサービスやビジネスに適応したフローを構築し、Webサイトやアプリに組み込むことができる。政府のID認証や生体ベースの認証など、国レベルの規制や先端技術にも対応している。

 Personaでは、アイデンティティ認証の自動化による確実性の担保に注力している。自動化により、企業はエンドユーザーのアイデンティティを客観的に、差別や偏見を排除し、純粋にその人が本人であるかを判断できる。また、企業はこのプラットフォームを利用して、人物の認証に必要な基準を正確に設定し、それを基にした判断を適切に行うことができるようになる。

 Personaのプラットフォームの技術領域は大きく分けて2つにまたがっている。1つはタスクなどの調整・管理を自動化する「オーケストレーション・エンジン」で、顧客が認証ロジックをカスタマイズし、ビジネスに最も適したワークフローを構築できるようにする。例えば、まず名前、生年月日、住所を確認し、そして地域によっては、マイナンバーや運転免許証の番号、米国ではSSN(社会保障番号)などを入力する。その上で、政府発行のIDや生体情報をさらに収集可能にする。

 もう1つの技術領域は機械学習。画像認識や生体認証の裏付け、リスク判断などで多くの機械学習モデルを構築し、認証に役立てている。なお、個人の生体認証、運転免許証の更新などの情報を管理しているためPersonaプラットフォームを利用していれば、同一人物をさまざまな形で継続的に認証できる。

コロナ禍のデジタルシフトで急成長

 現在のPersonaは、192の国・地域に対応している。各国のアイデンティティ認証は非常に煩雑だ。規制や人間関係の構築も必要なため、Personaが1社だけで対応するのは難しく、国や地域ごとにパートナーと取り組む必要があるという。Song氏は「Personaが最初にサポートした海外の国は、Squareの時と同じく日本です。マイナンバーカードのデジタル認証のためにさまざまな対応をしました」と振り返った。

 実はSong氏はPersonaのアイデアを着想したとき、エンジニアとしてはあまりビジネスに期待していなかったという。しかし、ふたを開けてみると、多くの企業が柔軟な本人確認を求めていた。コロナ禍のデジタルサービス利用促進の波にも乗り、Personaは利用者数を伸ばしている。顧客は、急成長しているスタートアップもいれば、厳格なプロセスを重視する大企業も含まれる。最近、なりすまし被害が深刻化しているソーシャルプラットフォームにも貢献している。

「創業から5年ほど経ち、評価額は15億ドルほどです。何年もの間、前年比で2倍以上の業績を残すことができました。ですから、ビジネス全体としては本当にエキサイティングなことだと思います。また、デジタル経済で起きているあらゆる変化に伴い、デジタルアイデンティティ認証が私たちの予想以上に多くの業界で重要であることがわかりました。私はPersonaが本当に役立っていると実感するとともに、とても感謝しています」

image: Persona HP

誰もがオンライン上で自分らしくいられるように

 Personaでは今後もプロダクトや技術に磨きをかけていく。世界中でデジタルトランスフォーメーション(DX)が進展し、各国政府も注力している。そこになくてはならないのがデジタルでの本人確認だ。需要はさらに増えていくだろう。

「今では笑い話のようですが、Squareの日本での立ち上げに初めて携わった時、私たちはFAXを利用していました。当時、本人確認はすべてFAXだったのです。今はとてつもない変革が世界中で起きていますね。コンプライアンスはかつてないほど複雑化しています。柔軟性があり、自動化で正確性も担保できる本人確認のプラットフォームが本当に重要ですが、まだまだやることがあります」

 Personaは世界共通のアイデンティティ認証プラットフォームを目指している。その核となる信念は「人々がオンラインで自分らしくいられる」ことだ。Song氏は「コンプライアンスを維持し、不正を阻止し、個人がプラットフォーム上で信頼を築けるかどうかを検証する。完全に一元化されたプラットフォームでそれを行うことができ、顧客のビジネスの負担を軽減していきたいです」と述べた。

 Personaは日本市場に注目しており、日本の大手企業とパートナーシップ締結の話を進めているという。さらに、エコシステム構築のため、技術的なパートナーシップも求めている。将来のパートナーや顧客に向け、Song氏は次のようにコメントした。

「私はこれまで、日本の運転免許証における誕生日の対応について学ぶことからスタートし、今ではより多くの知識を持つようになりました。しかし、日本のDXを支援するには、学ぶべきことはたくさんありますので、成長を支援いただけるパートナーが必要です。また、グローバルにビジネスをしたいお客様にも貢献できると自負しています」



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