Image: Doc.ai
Doc.aiは個人向けに包括的な健康管理アプリを提供しながら、医療研究を促進するデータを構築している企業だ。今回は、ブロックチェーン技術でセキュリティを保持しつつ医学の成長をサポートする同社CEOのWalter De Brouwer氏に話を聞いた。

Walter De Brouwer
Doc.ai
CEO & Co-founder
オランダのティフブルフ大学でバイオ記号論および計算言語学を学んだのち、複数企業(主にAIやブロックチェーン関連)の経営に携わる。大学で客員教授を務めるなど、活躍は多岐にわたる。2016年、Doc.aiを共同設立、CEOに就任し、現在に至る。

医学会の未来を変えるため、健康管理アプリを運営

―まずは、事業内容について教えてください。

 Doc.aiは医療研究者向けに、多くのヘルスケアデータを提供するためのAIプラットフォームを構築しています。そのためにはまず多くの人にデータ提供してもらわなければなりませんので、私たちはまず、一般ユーザー向けの健康管理アプリを立ち上げました。

 アプリはスマートフォンで簡単にダウンロードでき、自分の身長や体重はもちろん、健康や医療に関するデータを包括的に管理することができます。さらに、本アプリでは「AIはアレルギーを予測することができるか?」といった医療研究に役立つ調査を随時行っており、ユーザーは興味のあるリサーチに参加協力することができます。

 こうして集めたデータは、プライバシー保護の観点からブロックチェーンで管理し、ユーザーには事前に了承を得たうえで研究に使っています。そして、これらのデータを当社のディープラーニングシステムにどんどん学習させ、将来的にビッグデータとして医学会の研究や治療に大きく貢献したいと考えています。

―この事業を始めたきっかけは何だったのでしょう?

 今から16年前、当時5歳だった息子が12メートルの高さから転落するという事故が起き、脳に重傷を負いました。その際、私は息子の医療情報がまったく一元管理されていなかったことや、医者とのかかわりなどに大きな不満を覚えました。そして、現状の医療システムは大きく変革しないといけない、と感じたのです。

 当初は、脳の新皮質をシリコンで人工的に作れるのか、あるいは医療データを総合的に管理・分析できるデータ拠点を作れるか、という課題からスタートしました。とにかくまずデータを集めるのが先決だということになり、この事業が生まれました。大量のデータをディープラーニングの形で統合し、将来的に病気の予測や医療研究に役立てることが目標です。

健康管理しながら研究者をサポートする、一石二鳥のシステム

―御社のアプリを使うと、ユーザーにどのようなメリットがあるのでしょうか?

 当社のアプリは誰でも安全に自身の健康関連データを管理することができます。住環境から検診結果まで、自分の情報を総合的に分析することで、「あとどれくらい体重を減らせばいいか」や「年に何回くらい病院に行くか」など、正確な予測を立てることもできます。これは、大きな利点です。

―医療機関や研究者はこのシステムをどのように活用しているのでしょう?

 現時点では、当システムで実施する研究調査を実施する研究者のみが、ユーザーのデータにアクセスすることができます。また、個人を特定する情報にはアクセスできません。近いうちにドクターとエンゲージ可能なツールを開発し、ドクターとユーザーの交流を促進したいと思っています。今後、医療界でAIはどんどん活用されることになりますから、当社はドクターたちに大きな強みを提供するディープラーニングプラットフォームになります。

―個人の医療データは、すでにある程度研究に活用されていると思うのですが、あえて御社のシステムを利用するメリットは何だとお考えですか?

 当社ではユーザーのデータを販売することはありません。これは、強くお伝えします。むしろ、研究者のリサーチに参加してデータをシェアしていただいたユーザーにはポイントが付与され、それが貯まればAmazonギフトカードなどを獲得することができます。

―では、どのようにマネタイズされているのでしょうか?

 今は、当社のAIモデルを企業にライセンス供与することでビジネス運営しています。

様々なデータポイントからユーザーの健康を分析

―業界の競合はいますか?また、他社にはない強みがあれば教えてください。

 強みの一つとしてはDoc.aiのアプリは空気質、身体活動や薬の摂取量など、様々なデータポイントからユーザーの健康を分析するMulti-Omics(マルチオミクス分析)を適用しています。またユーザーのプライバシーを守るため、Federated Learningを構築しています。Federated Learningによってユーザーのデバイスからデータを出すことなく、マシンラーニングを行うことができます。

―今後、海外展開はお考えでしょうか?

 もちろんです。日本など、アジア市場に拡大していきたいと考えています。そのために、適切な企業と提携していきたいですね。

―最後に、将来的なビジョンを教えてください。

 現在の最優先課題は、ラーニングテクノロジーを実装し、継続してAIモデルを構築していくことです。また、より健康予測や洞察に役立つアプリを提供し、医療研究全般に役立つツールに進化させていきたいと思います。



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