SkyDeckアメリカの公立大学においてトップであるUC バークレー(カリフォルニア大学バークレー校)による大学発アクセラレータ。このプログラムに参加するスタートアップは、世界中からUC バークレーに集まる知能と直接つながり、世界トップ大学の一員として迎えられる。今回はSkyDeck のコンセプト、実態、日本企業とのコラボレーションまで、Executive DirectorのCaroline Winnett氏に話を聞いた。

Caroline Winnett
SkyDeck
Executive Director
UCバークレーでMBAを取得後、一貫してスタートアップと関わり続けている。代表的なスタートアップには、創業前からExitまで関わったNeuro Focus(2011年Nielsenに買収)や、創業に携わったBoardvantage(2016年Nasdaqに2億ドルで買収)がある。

海外スタートアップも参加可能なアクセラレータ

―まずSkyDeckについて教えてください。

 SkyDeckは、スタートアップの発掘とその成長を加速させることをミッションとするUC バークレー(以下バークレー)のプログラムです。大学発プログラムのため、在学生、教員そして卒業生が設立または投資したスタートアップを第一の対象としています。

 しかし、それだけに留まらず、カリフォルニア州内の姉妹提携校の関係者によるスタートアップや、シリコンバレーで商品やサービスをローンチしたいと考えている米国外のスタートアップも対象としています。

 当プログラムの特にユニークな点は、大学が持つリソースをフル活用するためにつくられたSkyDeckファンドの仕組みです。このファンドは民間のベンチャーキャピタルファンドですが、支援したスタートアップが成長したときに得られるファンドリターンの半分を大学に寄付することをコミットしています。

 投資が成功するとレベニューはバークレーキャンパスの収入となり研究開発や奨学金などに充てられます。SkyDeckのプログラムに貢献することはバークレーの教育を支援することに直結しているので、多くの卒業生から積極的な協力を得ています。

 また、SkyDeckは大学発のプログラムであり、大学が持つ才能ある人材、環境、リソースやネットワークに直結しています。才能が才能を引きつけ新たな価値を生み出していくのです。

Photo:360b/Shutterstock.com

―具体的にどんなプログラムを提供しているのですか。

 SkyDeckには、アクセラレータプログラムと、インキュベータプログラムがあり、その両方においてバークレーSkyDeckファンドから投資を行っています。

 まずアクセラレータプログラムでは、商品やサービスがローンチできる状態にあることや、このプログラムで提供するリソースを活用できる段階にあるスタートアップを対象としています。プログラムの募集は半年に一回行っており、現在も募集しています。

 このプログラムに採択されたスタートアップには、バークレーのキャンパスで行われる6ヶ月間のコースに参加してもらい、SkyDeckがオフィスを提供します。このプログラムの特徴は大きく分けて三つあります。

 一つ目は、Sky Advisorsによる集中的な指導です。このSky Advisorsはバークレーの関係者がボランティアで担っています。彼らからは時間を「寄付」してもらっています。

 二つ目は、トレーニングワークショップです。これには、リソースパートナーからリソース提供を受けています。例えばAdobe Creative SuiteやAWSクレジットなど、必要なリソースを負担する財力がないスタートアップに、技術的なリソースを無償または特価でご提供いただいています。

 三つ目は、バークレーのベンチャーキャピタルファンド、バークレー SkyDeckファンドと連携していることです。このファンドから、アクセラレータプログラムに参加している全てのスタートアップに一律10万ドルを出資しています。

―もう一つのインキュベータプログラムはどんな内容ですか。

 インキュベータプログラムはアクセラレータとは少し違います。このプログラムに参加するスタートアップはアクセラレータプログラムのようにSkyDeckファンドから一律で出資を受けるわけではなく、対象もアイデアを形にしようとしている段階からレイターステージまで、様々です。真剣に自分のアイデアを追求し本気で起業しようと考え、SkyDeckのリソースとバークレーのエコシステムにコネクションを持ちたいバークレーの学生、教員または卒業生と、バークレー出身者が創業したスタートアップが第一の対象となっています。

 また、インキュベータプログラムで注目を集めるスタートアップは、アクセラレータプログラムの候補になるケースが多くあります。

SkyDeckの選考基準とプロセスとは

―どのようなプロセスでスタートアップを選んでいますか。

 まずスタートアップからの多数の応募書類をレビューします。このレビューにはバイオやIoTなど、専門知識を持ったアドバイザー約50名が参加し、専門家の視点で精査しています。

 次のステップは対面でのロングインタビューです。全部で3段階あり、チーム文化についてのインタビュー、ビジネスプランについてのインタビュー、そしてユニークなのはプログラムに参画しているスタートアップによるインタビューです。彼らはスタートアップならではの視点で評価し、私たちに良いフィードバックをくれますからね。

 最後のステップが、ファイナルインタビューです。スタートアップが投資にふさわしい企業がどうかを見極め、最終的に20社の有望なスタートアップが残るのです。アクセラレータの参加倍率は3.5%、インキュベータは10%程度です。

―シードのスタートアップの選考は難しいと思います。経営チーム、ビジネスモデル、マーケットなど、何を重視して判断していますか。

 いまあなたが言った全てです。私たちは投資家として、大きなリターンの見込める会社を選んでいます。それは事業成長のポテンシャルがあり、強いチームがいて、大きなマーケットがあり、適切なマーケット参入タイミングであること。この判断は、科学というよりアートだと思いますね。

日本発スタートアップや日本の大企業も参画

―SkyDeckを卒業したスタートアップにはどういったものがありますか。

 例えば、バークレーの研究開発が基になっているChirp Microsystemsという高性能超音波3DセンシングのパイオニアもSkyDeck卒です。Chirp Microsystemsは卒業後にTDKに買収されました。

 他には、AWAKENSという創設者が日本人のスタートアップもあります。彼らは「Genomelink」という誰もが自分自身のDNAデータを保管し最新の解析情報や関連サービスにアクセスできるプラットフォームを提供しており、かなり順調に事業を展開しています。AWAKENSは昨年プログラムを終了しましたが、現在もSkyDeck内のオフィスを使っています。プログラムに参加したスタートアップから、終了後もオフィススペースを貸して欲しいとリクエストを受けることがあるので、それに対応できるスペースを用意しています。

―パートナーも募集されていますね。

 そうです。コーポレートパートナーとグローバルパートナーを募集しています。現在は、パートナーからの資金でプログラムへの投資を賄うことができているので、バークレー本体からの出資はほぼ受けていません。

 コーポレートパートナーには、日本企業もおり米国外の企業も対象としています。パートナーはバークレーに寄付をすることで、私たちのコミュニティの一員となります。コミュニティとは、SkyDeckのスタートアップだけでなく、バークレーの教員や研究所など大学のコミュニティも含みます。つまり、SkyDeckとバークレーのキャンパスで起きているイノベーションへの参加ということです。また、パートナー企業の専門職社員を1名Sky Advisorsグループに受け入れています。

 グローバルパートナーは、米国外のイノベーションセンター、インキュベータや大学が対象です。パートナーのスタートアップをSkyDeckが受け入れ、プログラムとオフィスを提供します。

 日本政府や日本企業は積極的に新技術や新しいビジネスモデルを探しており、イノベーションへの熱意を感じます。また、日本には非常に才能がある人材が多くいますし、優秀な大学も多数あります。そうした方々にSkyDeckのプログラムへの応募をぜひ検討していただきたいです。現在募集しているプログラムは、4月30日が期限になりますが、半年後にも募集を行いますので、これを機会に日本でもSkyDeckを周知できたら、と考えています。

大企業がスタートアップと協働するポイント

―日本の大手企業によるCVCやイノベーションセンターの設立が相次いでいます。大企業とスタートアップのコラボレーションはどうすればうまくいきますか。

 まず企業はCEOトップダウンでリーダーシップを持つことが重要です。そして、担当者に具体的な役割を担わせること。次に、シリコンバレーに拠点を持つこと。例えば、SkyDeckのコーポレートパートナーのほとんどはシリコンバレーに事務所を持ち専任のスタッフがいます。担当者は定期的にSkyDeckに顔を出し、時間を過ごして帰ります。これは、スタートアップとの関係構築において欠かせません。

 それと、CVCも素晴らしいと思いますが、イノベーションセンターがあればスタートアップはより具体的な意味で支援を受けることができ、開発を進めることができます。これはよい成果を得るために重要なことです。

 また、投資よりもPoC(概念実証)が重要であり難しくもあります。巨大な企業が小さなスタートアップと一緒にPoCに取り組むことは本当に難しいでしょう。そのことをある程度理解して、スタートアップと協働する忍耐力を企業側の担当者が持つことが大切です。企業は、そのスタートアップが協働できる相手かどうかを確かめてから投資するとよいでしょう。

 スタートアップも大企業と協働する方法を学ぶ必要があります。ビジネス経験が全くないスタートアップもいますので、SkyDeckではスタートアップに対してこうした面での指導も行っています。

 大企業とスタートアップが共通の「言葉」でコミュニケーションをとり共同できれば、本当の価値が生まれ、素晴らしい結果が期待できると思います。



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