建設現場を360度カメラで撮影するソリューションを提供するOpenSpace。屋内の建設現場の写真撮影はドローンでは難しく、それを作業員のヘルメットに360度カメラを取り付けることで実現した。AIを駆使し、自動マッピング、進捗状況の追跡、オブジェクト検索などの機能も提供する。コロナ禍で建設現場にもリモートの波が押し寄せる中、需要が急増しているという。OpenSpaceの創業者でCEOのJeevan Kalanithiに聞いた。

ドローンでは難しかった、屋内の建設現場撮影

――まずは創業した経緯を教えてもらえますか。

 前職の3D Roboticsでは、ドローンを使って建設現場を撮影する「Site Scan」というサービスを手がけていました。ドローンが建設現場の上空を飛行して撮影し、建設業者に写真や地図を提供します。顧客に建設現場の写真を提供すると、大変喜ばれていました。写真は1000の言葉以上の価値があると。

Jeevan Kalanithi
OpenSpace
Co-Founder & CEO
2000年にスタンフォード大学でSymbolic Systemsの学士を取得。2007年にMassachusetts Institute of Technologyのメディアラボで修士号を取得。卒業後はデザインに重きを置いたプロトタイピングのコンサルティング会社Taco Labを創業。その後に創業したSifteoを3D Roboticsへ売却し、同社プロダクト担当VP、CPO、社長を歴任した。2017年にOpenSpaceを共同創業。
 ただし、ドローンでの撮影には2つの制約がありました。1つ目は、建物の中を飛ぶことができないこと。ほとんどの工事は屋内で行われ、その多くはリフォームですが、ドローンは対応できません。

 2つ目は、使いやすさです。ドローンはクールで、面白いことがたくさんできますし、技術的にも優れています。しかし建設現場の人たちは信じられないほど忙しく、12時間労働の日々が続くことも少なくありません。ドローンを飛ばすということは、忙しい彼らの仕事をさらに増やすことにもなりました。

 3D Roboticsの価値は視覚的なデータを提供することであり、視覚的なデータは屋内にも多くあります。その視覚的なデータを、360度カメラを使って簡単に収集し、提供できるサービスをつくろう、これがOpenSpaceを立ち上げたアイデアでした。

 そして大学院時代の友人で、コンピュータビジョンの会社を成功させたMichael Fleischmanと、MITの研究者だったPhilip DeCampを誘って、360度カメラを使った新しいプロジェクトを始めたのです。

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作業員のヘルメットに小型カメラを装着、建設現場を自動で撮影

――OpenSpaceでは、具体的にどんなプロダクトを提供しているのでしょうか。

 建設現場を360度カメラで撮影し、記録するソリューションを提供しています。作業員のヘルメットに小型カメラを取り付け、建設現場を自動で撮影することができます。


 写真撮影はあらゆる建設現場で求められています。デベロッパーは工事の正確さを写真で証明したいと考えていますし、ゼネコンは下請け業者の責任を問うために写真を撮影したい。通常は、建設現場の誰かが撮影していますが、頻度や網羅性は高くありません。私たちのソリューションは屋内屋外を問わず、360度の視野で撮影し、ほぼリアルタイムで画像を提供できるのです。

Image: OpenSpace 過去に撮影した写真と現在の写真を比較することができる。

 私たちは基本的なプラン「OpenSpace Photo」を無料で提供しています。一定規模の建設現場や分析機能を追加する場合は、有料のプランをご案内しています。

――AIはどのように活用しているのですか。

 たとえば、自動マッピングに活用しています。ユーザーは自分の居場所を伝える必要はなく、AIがユーザーの居場所を把握して間取り図に自動でマッピングしてくれます。

 次に建設の進捗状況の追跡です。撮影した画像をもとに自動で作業量を計算することができます。どれだけの材料が使われたのか、どの壁が設置されたか、どの工事が行われたかの詳細も表示できす。使われた材料、工数をもとに費用も計算できますので、非常に効率的です。さらに計画と現実の進捗の画像を並べ、作業が計画通りに進んでいるかどうか、視覚的に確認することができます。

 他にもオブジェクト検索ができます。建設現場ではよく資材や用具を紛失します。探し物を求めて建設現場を歩き回ることがよくあります。そこでOpenSpaceを使えば、「ああ、あれは7階にあったんだ」とすぐにわかるのです。

Image: OpenSpace 物の画像を検索すれば、場所を見つけ出すことができる。

新型コロナウイルスの影響で利用が急増

――新型コロナウイルスの影響は受けていますか。

 そうですね。新型コロナウイルスの影響で、建設現場の敷地内に入れる人数も大幅に制限されています。なかなか建設現場に立ち入れない中でも、私たちのサービスを利用することで、どこでもバーチャルに見学できるようになりました。そのため需要が大きく伸びています。

 これまでにカバーした現場の面積は、2018年の夏には900万平方フィートだったのが、2020年2月には8000万平方フィートになり、6月には10億平方フィートになりました。現在は30か国で活動し、その面積は急速に広がり続けています。

――日本にも顧客がいますか?

 すでに日本に大企業が利用しています。日本では、質問を受けたらすぐに返答できる体制が重要だと考えており、すでにAPACでカスタマーサクセススタッフを採用しています。

 私たちのサービスは直感的に使えるので、言語の翻訳はほとんど必要ありません。世界中どの国でも同じように使えます。世界中の建設現場で、私たちは役立てると思っています。

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