Ironcladは、企業法務チーム向けにデジタル契約書プラットフォームを提供している。ビジネス契約書のワークフローを自動化することで、法務部が本来の法律業務に集中できるようサポートしている。Y Combinator、Sequoia Capital、Accelなど錚々たるVCから、累計8400万ドルの出資を受けており、近い将来の日本展開にも意欲を示している。Co-Founder & CEOのJason Boehmig氏に聞いた。

ウォール街から弁護士事務所、そしてテクノロジーの世界へ

――どのような経緯でIroncladを創業したのですか。

 私のキャリアのスタートはニューヨークのウォール街、リーマン・ブラザーズから始まりました。金融ビジネスの最前線で働きながら、ベテランのトレーダーたちの定量分析、意思決定の質の高さには驚かされました。

 その後、金融危機でリーマンが倒産し、私は法科大学院に入ることにしました。当時、ウォール街で経験した定量分析の手法を、法律分野、特に契約分野に適用できないかと考えていたのです。

Jason Boehmig
Ironclad
Co-Founder & CEO
University of Notre Dame Law Schoolにて法学博士号取得。Lehman Brothersに4年、Fenwick & West法律事務所に2年間勤務。2014年年9月、Ironcladを共同創設しCEOに就任。2014年12月からUniversity of Notre Dameの非常勤教授を5年務めた。
 2012年から私はシリコンバレーに移り住み、Fenwick and Westという弁護士事務所で、企業向けの弁護士として働いていました。その事務所はDropbox、Twitterなどのシリコンバレーのテック企業を対象にしており、私はそこで勤務するうちに、法律とテクノロジーの融合に強く関心を持つようになりました。

 企業は膨大なビジネス契約書を抱えています。効率的に契約書の作成と管理を進められている企業はありません。そこで私は、クライアントが契約書に関する情報の作成と管理の両方を支援したいと考えました。そして2014年に、私は契約書のワークフローを自動化するためのスタートアップを考え、創業したのです。

企業法務向けのデジタル契約プラットフォーム

――弁護士事務所でのBoehmigさんの経験から生まれたサービスなのですね。Ironcladでは具体的にどんなサービスを提供しているのですか。

 Ironcladは、デジタル契約プラットフォームです。契約書の作成、管理をするためのクラウドベースのシステムを提供しています。  これまでの契約書プラットフォームの多くは、契約書の管理にフォーカスしていました。一方、当社のプラットフォームは、クラウドベースで契約書の作成と管理、さらに関係者のコラボレーションや交渉もサポートしています。

 例えばIroncladはDocuSignと提携しており、Ironcladから直接的にDocuSignでの電子署名をリクエストすることができます。Salesforceとも提携しており、Salesforceに入っている顧客情報をもとにIroncladで契約書を作成し、それをSalesforceに移すこともできます。

――DocuSignのようなクラウドサインのシステムと何が違いますか?

 Ironcladの強みは企業の法務チーム向けに作っている点です。取引先と大量の契約を行う法務チームが使いやすい機能、仕組みを整えています。

 例えば、1万ドル以上の契約であれば適切な人がアサインされ、それを承認したりコメントできるよう、仕組みを作ることができます。または、実際に交渉している相手に文書のドラフトをメールで送ることもできます。

――どのような企業が導入していますか。

 テック企業からフォーチュン500の大企業まで幅広く利用しています。

コロナ禍、法務チームのリモートワークを支えたい

――新型コロナウイルスは御社のビジネスにどんな影響を与えていますか?

 当社のプラットフォームはコラボレーションソフトウェアなので、これからますます価値が増していくと考えています。法務チームのリモートワークを支えることにもなっています。

――日本市場での展開、および今後の長期ビジョンについて教えてください。

 日本ではまだ営業拠点を開設していませんが、現在グローバル企業の日本法人と取引合意に向けて交渉中です。これを布石に、日本市場にも積極的に投資していきたいと考えています。

 長期的なビジョンは、全ての企業がデジタル契約書プラットフォームを必要とするようになることです。また、素晴らしい企業文化と、賢明さにあふれ思慮深い同僚と一緒に働ける職場を目指しています。



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