Photo: Postmodern Studio / Shutterstock
ディーラーに訪れることなくオンラインで車の売買ができる、インドの自動車マーケットプレイス「CARS24」。効率的に中古車売買ができるプラットフォームを提供し、急速な発展を遂げるインドの自動車市場とともに急成長しているユニコーン企業だ。共同創業者でCEOのVikram Chopra氏にその事業内容とテクノロジー、将来戦略について聞いた。

ショールームなし。アプリだけで車の売買を実現

 中古車販売の簡素化を目的としたマーケットプレイス「CARS24」は、ユーザーがオンラインで自動車を売買できるプラットフォームだ。自動車を売りたいユーザーは、スマートフォンアプリで簡易査定をし、売却を希望する場合は、自宅か店舗かでの検査の予約をする。検査当日に価格を決定するなど1時間ほどで売却が完了する。

 購入する場合も、スマートフォンアプリにて、インド全国から集めた豊富な在庫から希望にぴったりの車を選べる。注文した車は自宅に届くので店舗に行く必要はない。また、届いた車が気に入らない場合、7日以内であれば、どんな理由でも返品は可能だ。さらに、購入前にユーザーのローン限度額査定もできるなど、非常に効率よい購入体験が設計されている。

Image: CARS24

 共同創業者でCEOのVikram Chopra氏は、ボンベイのインド工科大学を卒業後、ムンバイのMcKinsey&Companyにてビジネスアナリスト、2009年からはニューデリーのSequoia Capitalにて投資アナリストを務めたのちに、オンライン家具販売のFabFurnishを創業。同社を売却した2015年にCARS24を創業する。なお、株主にはSequoia Capitalも名を連ねている。

Vikram Chopra
CARS24
CEO & Co-Founder
インド工科大学を卒業後、2006年からムンバイのMcKinsey&Companyにてビジネスアナリスト、2009年からはニューデリーのSequoia Capitalにて投資アナリストを務める。2012年には共同創業者として、家具やインテリアのオンライン通販を展開するFabFurnishを開設。2015年にCARS24を創業して現職に。

「これまで、中古車を探している人は、地元のディーラーに行き、品質を心配しながら、数少ない在庫から車を選ばなければなりませんでした。欲しい車を見つけるのは非常に難しいのです。CARS24には数万台もの在庫があり、アマゾンでTシャツや家電製品を買うようにオンラインで自動車を購入できます。ほとんどの顧客にとって車は大きな出費を伴う買い物です。私たちはショールームを持たず、デジタルによって効率化していますので、安い価格で車を提供できるのです」(Chopra氏)

 中古車の品質は気になるものだが、CARS24はすべての車を点検して再調整したのち販売し、購入から6ヶ月以内なら無償の修理も提供している。現在、メカニックを中心とした同社の従業員は5000名以上、インドの500の地域のほか、アラブ首長国連邦、オーストラリアにも支店を構えている。支店は点検・修理と在庫保管のためのもので、ショールーム機能はない。その代わり、スマートフォンアプリには、車1台ごとに非常に細かな情報提供がされており、360度ビューや数十枚の写真から状態を確認できる。

 Chopra氏は「外観だけでなく、インテリアやステアリングまわり、後部座席の様子などを確認できます。ドアを開けたり閉めたり、文字通り、デジタルウォークスルーです。これは、消費者が探している車を見つけるための非常に重要な機能のひとつで、私は、実際の車を見るよりも優れていると思います」と説明した。

2021年の売上予測は10億ドル。急成長の市場でシェア拡大を狙う

 Chopra氏によると、インドの中古車市場は年間250億ドルで、5年後には500億ドル市場になると予想されているという。CARS24の昨年の市場シェアは2.5%ほどだったが、売上高は年々倍増しており、今年は10億ドルを見込んでいる。新型コロナウイルスの影響は、自動車販売にも現れており、リアル店舗よりもオンラインでの販売を好むユーザーが増加した背景もあるという。なお、同社では自動車だけでなくオートバイの中古販売を手がける「BIKES24」のも立ち上げている。

Image: CARS24

 今後は東南アジア地域にも進出を検討しており、日本への進出に関しては、まずは市場調査が必要だと考えている。Chopra氏は「このビジネスのポイントは、たくさんの在庫を抱えることができることと、ローンを提供できること、そして顧客の地域やニーズにあわせたパーソナライズのテクノロジーです」と語る。テクノロジーは車の査定にも使われており、データサイエンスによって、写真やエンジン音から、人が気づかない車の状態を検知する。車の売買の際の値付けの判断も自動的に行われている。

 将来のテクノロジーによるイノベーションについてChopra氏は「バーチャルリアリティは非常に重要だと思います。車を買おうとしたとき、その車を体験できれば、より良い決断ができるようになるでしょう。バーチャルリアリティによって、車を操作したり、車の加速の音を感じたりするような体験を提供したいです。ただ現在はまだ模索している段階です」

ワクワクするような車の売買体験を提供していく

 消費者にとって程度のいい中古車を手頃な価格で購入することはとても合理的だ。CARS24は、豊富な品揃えとリーズナブルな価格で多くの人の期待に応えている。同社のビジョンについてChopra氏は次のように回答した。

「10年前、私が始めて買った車は中古車でしたが。車を持つことが嬉しく、誇りに思っていました。しかし、中古車を買う経験は、実際には心配することも多いです。車がちゃん動くかどうか不安になりますし、欲しい車を見つけられないときもあります。たとえば、私は赤い車を望んでいたのに、手に入れることができませんでした。だからこそ、消費者が自分の欲しい車を見つけ、高い品質に対する安心感を持つことはとても重要です。私たちの仕事は、車の購入や販売の経験を幸せなもの、喜びに満ちたものにすることです。車を買うときも、売るときも、何のストレスもなく、前を向いて、その経験を楽しみ、最後には幸せな気持ちになれるようにしたいのです」



RELATED ARTICLES
「カスタマイズ欲」強めのインドの若者の間で人気 家族写真でフォトブックやカレンダーなど製造するZoomin
「カスタマイズ欲」強めのインドの若者の間で人気 家族写真でフォトブックやカレンダーなど製造するZoomin
「カスタマイズ欲」強めのインドの若者の間で人気 家族写真でフォトブックやカレンダーなど製造するZoominの詳細を見る
複数クラウド間のネットワーク構築、半年以上の作業期間をわずか数時間に Alkira
複数クラウド間のネットワーク構築、半年以上の作業期間をわずか数時間に Alkira
複数クラウド間のネットワーク構築、半年以上の作業期間をわずか数時間に Alkiraの詳細を見る
コーヒーショップの混雑観測から始まったスマートビル革命 Density
コーヒーショップの混雑観測から始まったスマートビル革命 Density
コーヒーショップの混雑観測から始まったスマートビル革命 Densityの詳細を見る
クラウド全盛時代の新常識?CPU・GPUが利用データを暗号化 Anjuna
クラウド全盛時代の新常識?CPU・GPUが利用データを暗号化 Anjuna
クラウド全盛時代の新常識?CPU・GPUが利用データを暗号化 Anjunaの詳細を見る
勉強を「学び」から「遊び」に ゲーム感覚の学習プラットフォームが子供に人気 SplashLearn
勉強を「学び」から「遊び」に ゲーム感覚の学習プラットフォームが子供に人気 SplashLearn
勉強を「学び」から「遊び」に ゲーム感覚の学習プラットフォームが子供に人気 SplashLearnの詳細を見る
ソフトバンクも出資する韓国の人気旅行アプリの強さとは ヤノルジャ
ソフトバンクも出資する韓国の人気旅行アプリの強さとは ヤノルジャ
ソフトバンクも出資する韓国の人気旅行アプリの強さとは ヤノルジャの詳細を見る

NEWSLETTER

世界のイノベーション、イベント、
お役立ち情報をお届け
「オープンイノベーション事例集 vol.5」
もプレゼント

Follow

探すのは、
日本のスタートアップだけじゃない
成長産業に特化した調査プラットフォーム
BLITZ Portal

Copyright © 2024 Ishin Co., Ltd. All Rights Reserved.