より良いビジネスの意思決定のために、エビデンスを基にした「科学的思考」が日本企業、ビジネスパーソンに必要だと語る早稲田ビジネススクール准教授の牧兼充氏。前編では、イノベーションを生み出すためのアプローチや、「失敗」を学びに変える思考スキルについて語ってくれた。後編は、科学的思考を活かした海外の成功事例や、新規事業開発に必要な「失敗」を促進するインセンティブ、事業の「撤退ライン」などについて話を聞いた。

【前編】牧氏に聞く「失敗のマネジメント」 日本企業、ビジネスパーソンに必要な「思考スキル」とは?

ハーバード・ビジネス・スクールでの「ピア効果」研究

――新規事業創出プロセスと「失敗」の関係性、活かし方について教えていただけますか。

 私の本で取り上げているアメリカの研究事例を紹介します。よく企業の方から「アントレプレナーシップ(起業家精神)をどうやったら育てられるのか」という質問をいただきます。アントレプレナーシップは先天的に生まれ持った素質なのか、後天的な能力なのかという議論があります。

 アカデミックな世界でも、「個人の性格による」とか「職場の特徴による」とかいろいろな説がありますが、最近最も注目されている話の1つが「ピア・エフェクト」(Peer effect)と呼ばれるものです。

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牧兼充(まき かねたか)
早稲田ビジネススクール准教授
カリフォルニア大学サンディエゴ校Rady School of Management客員助教授
1978年東京都生まれ。2000年慶應義塾大学環境情報学部卒業。2002年同大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。2015年カリフォルニア大学サンディエゴ校にて、博士号(経営学)を取得。

慶應義塾大学助教・助手、カリフォルニア大学サンディエゴ校講師、スタンフォード大学リサーチアソシエイト、政策研究大学院大学助教授などを経て、2017年より現職。カリフォルニア大学サンディエゴ校ビジネススクール客員准教授を兼務するほか、日米の大学において理工・医学分野での人材育成、大学を中心としたエコシステムの創生に携わる。専門は、技術経営、アントレプレナーシップ、イノベーション、科学技術政策など。

近著に「イノベーターのためのサイエンスとテクノロジーの経営学」(単著、東洋経済新報社)、「科学的思考トレーニング」(単著、PHPビジネス新書)、「『失敗のマネジメント』がイノベーションを生む」(『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2020年3月号掲載)、『東アジアのイノベーション』(共著、作品社)、『グローバル化、デジタル化で教育、社会は変わる』(共著、東信堂)などがある。

「ピア」は英語で「同僚」や「仲間」という意味ですが、「ピア・エフェクト」は、ある人の周囲にいる人々がその人に及ぼす影響のことを言います。 例えば、周りに煙草を吸う人が多いとその人も煙草を吸うようになるし、周りに禁煙者が多いとその人も禁煙者になる。もしくは、ダイエットも成功するかどうかは、周りの人でダイエットしている人が多いかどうかが重要だったりします。こういった影響がピア・エフェクトです。

 起業の分野でもピア・エフェクトはけっこう起きると言われていて、私の著書の中で3つの論文を紹介していますが、今日はそのうちの1つを紹介します。

 ピア・エフェクトは、因果関係と相関関係の区別がとても難しいです。ある人の周りに起業家が多いという状態で、それによって本人も起業する確率が上がる場合には2つの説があり得ます。周りの影響でその人の起業志向が高くなるのか、もともと起業志向が高いからそういった友達が多いのか、データだけではどちらなのか分かりません。

Image: metamorworks / Shutterstock

 これを厳密に検証しようとすると、先述したランダム化実験をやる必要がありますが、起業家をあるグループにランダムに割り振るということは、実際にはなかなかできませんね。

 次に紹介する論文の面白いところは、世界に1カ所だけそういう場所があるということを発見した点です。これが研究者たちのすごさです。その場所とは、ハーバード・ビジネス・スクールのクラスです。(Lerner, J. and U. Malmendier. 2013.“With a Little Help from My(Random) Friends: Success and Failure in Post-business SchoolEntrepreneurship.” Review of Financial Studies 26(10): 2411-2452.)

 ハーバード・ビジネス・スクールのクラスはランダムに決まります。ビジネススクールではピア・エフェクトを大きく受けます。そこで同じクラスに起業家が多ければ、本人も起業家になる確率が上がるはずだという仮説が立てられます。

 さて、これが実際にどうなったのか。クラスの中で起業の経験者の割合と卒業後の起業経験者の割合の関係を見てみると、クラスに起業経験者が多いと卒業後に起業する人が減るという、負の相関関係がありそうです。想定していたピア・エフェクト、「周りに起業家が多いとその人も起業家になる」ということとは真逆の結果が出たわけです。

 これは不思議なので、もう少し深く分析してみようと、卒業後に起業して失敗した人の割合、卒業後に起業して成功した人の割合の関係を見てみました。すると、卒業後に起業して失敗する人が明らかに減っています。成功する人の数はほぼ横ばいです。つまり、クラスに起業経験者が多いと、卒業後に失敗するような起業をする人の数は減るようだということです。成功、失敗を合わせたトータルで言うと、起業をする人の数は減りました。

 なぜこのようなことが起きるのか。さまざまな検証をすると、起業経験があるピアがいると、起業のアイデアについて何が良くて、何が悪いというアドバイスをもらえるので、悪いアイデアに関しては起業する前にやめる、ということが起きることが、この論文から分かります。

 これも広い意味では「失敗」ですよね。ただし、起業した後にやめるよりも、起業する前にやめた方が効率がいい。したがって、失敗を早めることができたというのが、ハーバード・ビジネス・スクールのクラスメイトの役割といえます。

「起業のピア・エフェクト」は、起業者数全体にはマイナスの影響があります。一方で、成功と失敗の起業者数を分けてみると、成功した起業者数はプラスになり、失敗した起業者数はマイナスになるということです。

Image: AevanStock / Shutterstock

日本の大企業で「起業家」を増やすには?

――起業家精神を養うにはどうすればいいでしょうか。

 日本企業でも「社内起業家を増やす」といったことが求められていますが、その1つの方法は、積極的に起業経験者を雇って、戦略的に必要な部署に配置することだろうと思います。

 ちなみに、成功した起業家である必要はありません。うまくいかなかった起業家も、積極的に大手企業が雇って戦略的に配置すること。社内起業家を増やすにはかなり有効だろうというのが、この研究からも言えます。

 あと、全く違う分野ですが、新人研修でどんなグループを作って、どんな先輩をメンターにつけるかによってもピア・エフェクトは変わってくるので、新人研修でも使えます。

 ただ、マイナスの側面も考慮しなければいけません。終身雇用が完全に成り立つことは難しいと思いますが、それでも企業側は優秀な人には社に残ってほしいというのは当然あります。しかし、起業志向、転職志向の強い人が就業すると、周りが辞めることが当たり前の文化になっていくということが当然起き得ます。ピア・エフェクトは考え方によっては組織のマイナスにもなり得るので、うまくマネージしていかないといけないというお話です。

アクセラレーターはベンチャー企業の「成功」にどう貢献しているのか

――他にも起業についての研究事例はありますか。

 もう1つの研究はアクセラレーターのお話です。これも私の本で紹介している論文ですが、「ハイテクベンチャーに対するアクセラレーターへの影響」ということで、アクセラレーターがベンチャー企業の成功にどのように貢献しているのかを検証した論文です。(Sandy, Y. 2019.“How Do Accelerators Impact the Performance of High-Technology Ventures?” Management Science 66(2): 530-552.)

 これはアメリカの研究で、企業や大学型ではない独立型のアクセラレーターで既に30社以上のベンチャー企業が巣立っているような、ある程度継続して成功しているところを選び、そのアクセラレーターの支援を受けた企業のその後のパフォーマンスを比較します。

 先述したコントロール群の存在、つまり支援を受けなかった企業と比較する必要があるので、傾向スコアマッチングという統計手法で、支援を受けた企業と受けなかった企業と似た特徴を持つ企業を用意します。

 アクセラレーターから支援を受けた企業と、非アクセラレーター、つまり支援を受けなかった企業を比較します。すると、アクセラレーターから支援を受けない企業の方が、資金が多く集まっていました。

 アクセラレーター卒業時から買収までの時間を見てみると、アクセラレーターの支援を受けた企業は、平均して約2年がピークになっていました。非アクセラレーターは、買収までもう少し時間がかかっていました。つまり、アクセラレーター支援を受けた方が企業の買収までのスピードが速い。

Image: Andrii Yalanskyi / Shutterstock

 次は失敗の話で、アクセラレーター卒業時から廃業までの時間を見てみます。すると、廃業までのスピードは、アクセラレーターの支援を受けた企業の方が速いです。つまり、早く潰れてしまう。非アクセラレーターよりアクセラレーター企業の方が廃業までのスピードが速い。

 もう少し統計分析を続けると、M&Aはわりとうまくいっている。でも、アクセラレーターから支援を受けた企業は、そうでない企業に比べて資金調達の総額が少ない。そして、より早いタイミングで事業を閉鎖していることが分かります。

 これは、一般的に思うアクセラレーターの役割とは逆ではないかと思われますね。多くの人は、アクセラレーターの支援を受けた企業の方がより長く存続すると思うでしょうし、より資金を調達できると思うかもしれません。

 なぜ逆の結果が出ているのかは、そもそもアクセラレーターの役割について考えないといけません。そのビジネスがうまくいくのか、いかないのかをより早く見極められるのが、アクセラレーターの定義です。

「早めに失敗を見極めること」はとても重要

 アクセラレートには「前に進める」「加速させる」という意味があるとすると、Go or No-Goの判断をアクセラレートしていると言えます。逆に言うと、失敗するなら早い方がいい。ですので、早く失敗させるためのアクセラレーターでもあるということです。

「フィードバック効果」として、アクセラレーターは成功するベンチャー企業を育てると同時に、失敗しそうなベンチャーになるべく早くそのことを気付かせることが役割です。うまくいっているアクセラレーターは、廃業した方がいいということを、より早く判断できます。「早めに失敗を見極めること」はとても重要で、能力のある人が成功の可能性の低い事業を長くやるよりも、さっさとやめて次のことに早く移った方が、本人にとっても社会にとってもいいわけです。

 投資する側にとっても、より少ない金額でうまくいくか、いかないかを判断できた方が、投資のパフォーマンスはよくなります。したがって、投資家にとってもハッピーです。ですから、失敗のマネジメントがいかに重要なのかということをアクセラレーターの研究事例も物語っています。

「失敗」を促進するインセンティブを組み込むこと

――「失敗」が学びとなり、イノベーションを生み出すことにつながるのですね。ただ、日本の大企業はなかなか失敗を是としない文化があると思われます。

 私の著書では「『失敗』を促進するインセンティブのデザイン」という話を紹介しています。「うちの企業は失敗する文化がない」といったことを言う方はとても多いです。

 文化も無関係だとは言いませんが、それよりも失敗を促進するインセンティブがあるかどうかが重要で、企業の中でその仕組みを組み込んでいくことが重要です。

 サイエンティストの研究を紹介します。5年間の研究期間に対する研究費に2つの種類があります。グラントAは中間評価が存在する。2年目の終わりに評価をして、その後、継続するかどうかを決めます。グラントBには中間評価がありません。さて、5年間の研究期間を想定すると、どちらの研究の方が研究者のクリエイティビティを高めるでしょうか。(Azoulay, Pierre, Joshua S. Graff Zivin, and Gustavo Manso."Incentives and creativity: evidence from the academic life sciences." The RAND Journal of Economics 42.3 (2011): 527-554.)

 答えはBです。中間評価が存在しない方が、クリエイティビティが高まります。これはなぜか。研究者の研究テーマの選び方を分析すると、2年目の終わりに中間評価があると、短期的に成果が出そうなリスクが低い研究テーマを選ぶようになります。これを「知の深化型」と言いますが、よりリスクの低い研究に取り組むことになります。

 一方、中間評価がない場合は最初から5年間の時間があるので、「最初の2年ぐらいは失敗してもいいや」という思いで、よりリスクの高い研究に取り組むようになります。こちらは「知の探索型」と言います。

 5年間の研究期間の前半は中間評価をした方がパフォーマンスが高いですが、後半の3年間で一気に研究成果が逆転するということで、中間評価のないほうが創造性の高い研究成果がたくさん出てくるということです。

 これはライフサイエンスの分野のデータで分析した研究ですが、企業の中でもリスクを取るためのインセンティブの手法として応用可能です。人事評価の制度にどのように組み込むかという議論もけっこうなされています。

「行動による創造アプローチ」の方がいかにイノベーションや新規事業を生み出すか、先行研究の話と併せることでより理解いただけたかと思います。

Image: GoodIdeas / Shutterstock

「失敗」と「間違い」の区別がついてこそ、失敗から学べる

――科学的思考を用いた企業の事例を教えてください。

 特にデジタルの分野ではA/Bテストが多いですが、世界ではブッキング・ドットコムが活発に実験を活用している会社だと言われています。

 例えば、Webサイト内の説明を変えるときがあります。ホテルの予約画面に「ゲストは周辺の散歩を楽しみました」という、「散歩にいい場所」という説明を入れると実際にホテルの予約数が上がるかどうか、というようなアイデアをA/Bテストで実験します。この場合、特に有意な影響がなかったため、新しい説明を加えることは棄却されました。

 他にも、同伴の子どもの年齢を選択する項目に、チェックアウト日を表示することを実験しました。それまで「チェックアウト日時点の子どもの年齢」と書いてあった表示を、「2016年7月23日時点の子どもの年齢」と具体的な日付の表示に変えると、ユーザー体験が向上することがわかったので、表示を変更しました。デジタルの世界ではこのような実験をたくさんやることができます。

Image: Bakhtiar Zein / Shutterstock

 また、ハラーズ・エンターテイメントという有名な会社に、ゲイリー・ラブマンという人がいます。彼は本当に異色で、ハーバード・ビジネス・スクールの助教授を辞めてカジノ運営会社のCOOに転職し、カジノの中で賭けビジネスのランダム化実験をたくさんやっています。彼に言わせると、「アカデミアにいた頃よりも実験がしやすくなって、むしろ楽しい実験がたくさんできている」そうです。

 例えば、州外からもっと多くの人を来店させるためにはどんなクーポンを作るか、客の機嫌を取るためにどうすればいいか、ウェイターのサービスを上げるためにどんなボーナスを作るかなど、すべてランダム化実験でやっているそうです。つまり、デジタル分野以外でも、企業はさまざまな実験を行えるわけです。

 ハラーズには、「ハラスメントをしてはいけない」「ものやお金を盗んではいけない」「対照群のない調査をしてはいけない」という、「戒めるべき3つの大罪」というものがあります。つまり、必ずコントロール群を作って比較するということをやらないと、エビデンスにならないと言っています。

 面白い事例に、米デパートチェーンのコールズ(kohl's)の実験があります。同社はコスト削減の目的で営業開始時間を1時間繰り下げることを検討したそうです。すると役員会で揉めて、賛成する人と反対する人が両方いました。実際に実験をやってみようとなり、国内で展開する店舗のうち100店舗で実験をしたところ、売り上げがわずかに落ち込み、コストは大きく削減されました。同社はこのエビデンスに基づいて、1000店以上で営業開始時間を遅らせることを決断しました。

 A/Bテストは強力なツールで、このような実験の方法、科学的思考法を持っていると「失敗」と「間違い」の区別がつき、失敗から学べるわけです。こういう厳密な分析手法を取らないと、失敗と間違いの区別がつかないということですね。

Image: Burdun Iliya / Shutterstock

「科学的思考」が、ビジネスの意思決定をより良くする

――新規事業開発やビジネス全般において、どのように科学的思考を活かしていけばいいのでしょうか。

 いろいろなトピックをカバーさせていただきましたが、最初に科学技術の知能がどのように新規事業につながるかというメカニズムのお話をしました。次に「失敗のマネジメント」を通じたイノベーションの成功法則を活用できるようになるという話、そして、ビジネスのより良い意思決定のために「科学的思考法」を活用できるようになっていただくということ、です。

『イノベーターのためのサイエンスとテクノロジーの経営学』という私の著書で、先述した論文はより詳しく紹介しています。特に科学技術とイノベーション・新規事業がどうつながっていくか、さらに詳しい説明がこの本の中にあります。

 企業の方から、イノベーションの仕組みの社内での実装についての相談や、「新しいことを試しても、どう評価したらいいかわからない」といった相談をたくさんいただきます。エビデンスに基づいた評価指標の構築なども、実際にいくつかの企業と共同研究で取り組んでいます。

 私は経営学者ですが、あまり経営学者の言葉を引用せず、サイエンティストの言葉を引用することが多いです。お伝えしたいのは、リチャード・ファインマンというノーベル物理学賞受賞者の言葉です。

「いくらあなたの想像が優れていたとしても、いくらあなたが優秀だとしても、誰が主張したとしても、その主張した人が有名だったとしても、それは関係ない。実験(実証)の結果と異なっていれば、それは間違いだ。それだけが真実だ」と彼は言っています。

 経営学もこのような学問でありたいと思いますし、経営の実践もエビデンス・ベースで語れるようになることがとても大事だと思っています。そして、それがこれからの時代の経営学の役割だと私は信じています。

Image: Pavlo S / Shutterstock

会社やチームで「撤退ライン」を事前に決めておく

――研究開発やマーケティングの分野などでは、日本企業でも仮説検証はよく実践されているかと思います。しかし、事業開発や新規事業となると、急にできなくなる印象があります。

 確かに日本企業はオペレーションが得意で、例えば工場のオペレーションの効率化みたいなものだと、変数をいじって改善をしていく、みたいなことをよくやっていますよね。そういう意味で言うと、日本人は大胆な仮説を立てて、それを実行していくということが、オペレーションの改善に比べるとまだまだ苦手です。

 ただ、そこは社内で仕組みさえ作ればやっていけるのかなと思っています。

――アクセラレーターの研究で「早めに失敗を見極めることが大事」というお話がありました。日本企業の中には、忍耐強く継続していくことを是とする文化もあると思いますが、「失敗を見極めるライン」はどのように見極めたらよいでしょうか。

 そうですよね。一般的に、日本人は諦めが悪いことは確かです。ずっとやり続けてしまいます。例えば失敗を5回繰り返すと、だんだん学びの量が下がっていきます。「学びが十分減ったな」と思うところでやめるのが、理論的には1つ重要です。ただ、それはなかなか定量的に測りづらい。

 もう1つの方法として、「エフェクチュエーション」(優れた起業家に共通する思考プロセスや行動様式)という概念があります。エフェクチュエーションの理論の中でよく言われるのが、「アフォーダブルロス」です。最初に「このくらいまでは損してもいい」という損失金額の上限だけを決めておいて、その範囲内ではやり続けるという方法です。

 チームなり会社なりで「いくらの損失まで出していいか」というのを最初に決めておくことが重要だと思います。

  <牧氏の研究の詳細は新著『科学的思考トレーニング 意思決定力が飛躍的にアップする25問 (PHPビジネス新書)』で紹介されています。>

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