東京都内西新宿に本社を置くユビタス。今や日本の大手通信会社やゲーム会社とタッグを組み、クラウドゲーミングを世に広めようと急速に成長し続けているが、最初は2013年に台湾で立ち上げられた会社だった。Facebook社が自身の名前をMetaに改名し、瞬く間に広まった「メタバース」のコンセプト。今後クラウド上のソリューションが増加することが予想される中で、メタバースを見据えたクラウドコンピューティングの未来についてユビタスのCEOである​​Wesley Kuo氏に話を聞いた。

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日本におけるクラウドゲームプラットフォームのパイオニア

――まずは、御社のソリューションに関して詳細を教えてもらえますか。

 ユビタスはクラウドプラットフォームを展開しています。クラウドコンピューティングに特化し、ゲーム会社が自身の製品をクラウドで展開したり、他の業界のサービスプロバイダーがブラウザ上で簡単にサービスを展開できるように、プラットフォームを開発しています。

――ユビタスを創業した経緯は何だったのですか。

 私は在学時代ECS(エレクトロニクス・コンピューター科学)を学びました。卒業後、フィーチャーフォン用のJAVAミドルウェアに特化した最初の会社を立ち上げました。米国、韓国、中国などの成功しているモバイルキャリアは、みなJAVA技術に優れていました。当時私の会社では、DoCoMoや、サムスンをはじめ、多くのテレコム企業やエレクトロニクス関連企業と提携していました。既に一緒に働いていたクライアントだったので、ユビタスを立ち上げた時も支援をしてもらうことができたのです。

Wesley Kuo
ユビタス
CEO
国立台湾大学でコンピューター科学の学士号を2000年に取得後、株式会社アプリックスや、​​IA Solutions株式会社等のIT企業で役員を務める。2013年に東京で株式会社ユビタスを設立し、テンセントといった大手投資会社や、サムスンなどのテック企業より資金調達を受け、現在グローバルに展開している。

ソニー、セガ、スクウェア・エニックスなど数々の大手ゲームメーカーと技術提携

――どのような企業と提携していますか

 例えば、競合他社でGoogleのStadia、MicrosoftのxCloud、AmazonのLunaなど、米国で展開されているサービスは多々あります。私たちの場合、日本ではNTTと提携しているため任天堂をはじめとするゲーム企業にサービスをオファーし、存在感を高めています。

Image: ユビタス HP

 2021年には、テンセント、SONY、スクエア・エニックスより戦略的投資を受けました。従って、それらの企業にも、有名なゲームをクラウド上で展開するためのプラットフォームを提供しています。例えばドラクエだったり、マーベルコミックス系ゲーム「Marvel's Guardians of the Galaxy: Cloud Version」SEGAのファンタジースターオンラインなどは、Nintendo Switchユーザーやデスクトップユーザー向けにゲームを展開しています。

 他にも、米国、韓国、フランス等のゲーム企業とも提携しています。現在はNTTドコモやKDDIといったテレコム企業が5Gをローンチすることから、多くの関心を寄せてもらっています。例えば4Gの時は、SpotifyやNetflixといったストリーミングプラットフォームが人気でした。5Gでは、メタバース、AR・VRストリーミングがトレンドになるだろうと考えています。最初はゲームに特化して始まったものの、今ではモバイル業界を巻き込むまでに大きくなりました。

「メタバースは次の5Gトレンド」

――今流行りの「メタバース」ついてどのようにお考えですか

「メタバース」という単語は、最近非常によく耳にします。私たちもメタバース産業に進出予定ですよ。メタバースにとってゲームは最も自然に融合するサービスなのではないかと思います。

 そこでは友人もいて、仮想世界でつながることができます。私たちのクラウドゲーミングプラットフォームは、そのパワフルさ、サポート体制の良さゆえ、他とは一線を画しています。コンテンツのレンダリング、コンピューティングを経て、簡単にどのような種類のモバイルデバイス、AR・VRデバイスであっても展開することを可能にするのです。メタバースの基盤を今まさに設計しているのです。

Image: is.a.bella / Shutterstock

 例えば昨年末フランスのファッションブランドBalenciagaと提携し、バーチャルファッションショーを行いました。50人のモデルを起用し、21SSの新製品を纏ってもらいました。モデルは全員3Dスキャンされ、様々な「会場」に配置されました。ビデオゲームのように、製品を選んで着せ替えすることもできました。結果的に10日間のイベントに世界中から100万人のビジターがバーチャルファッションショーを訪れてくれました。アクセスも、自身の所有するモバイルデバイスから登録を行いイベントに参加するだけです。会場も山だったり森だったり…全てバーチャルで行われました。

 ゲーム業界だけでなく、不動産、旅行、製造業界でもバーチャルツアーや、バーチャルセミナーなどを行うことができるのでクラウドプラットフォームは普及しつつあります。応用の幅は広く、それらに私たちのクラウドプラットフォームが利用されているのです。

――今後メタバースが普及するにつれて様々な競合他社が出現する可能性についてどう考えていますか。

 AppleやFacebookといった大手企業は業界の一部を牛耳っていると言えます。しかし、まだまだ成長の余地がある部分もあり、そのようなスペースに私たちのようなベンチャーが入る隙があると思います。任天堂やテンセントといった企業と提携することで、彼らのリソースにもアクセスするきっかけを得ることができます。

 私たちは非常に容量の大きいハイブリッドクラウドアーキテクチャを形成していて、長年に渡るクラウドゲーミング界での経験からメタバースで必要となるノウハウを習得しています。GoogleやMicrosoft、Facebookといった企業とは直接競えませんし、メタバースで1社のみが独占するということは絶対に起こり得ませんが、スタートアップの中では私たちの有する大手企業からの支援、基盤に勝る会社はいないと感じています。

ゲームの枠に囚われずクラウドサービスを展開予定

――今後の目標や国際展開等についての予定があれば教えてください。

 現在は台湾と日本以外にオフィスは置いていませんが、米国、韓国、中国にコンサルタントを配置しています。直近では韓国の業績が良く、ゲーム会社やテレコム会社との提携がうまくいっています。米国やヨーロッパでも現地のテレコム会社と提携しており、パンデミックが落ち着き次第、西欧でのプレゼンスを強めていきたいと思います。

 もともと台湾で立ち上げたユビタスも今は、東京に本社を置いています。現在、東証マザーズでのIPOを視野に入れており、これは目標の一つです。

中長期目標としては、メタバースのアジア版を構築したく、どのゲーム会社でも私たちのプラットフォームを使用してターゲットとするオーディエンスにゲームを展開できるようにしたいと思います。まだまだ完全に仮想空間を楽しむには技術が追いついておらず、2〜3年ほどかかる予定ですが、IPOを行う頃には必要なヘッドセット、スーツ、ウェアラブルツールの開発も実用可能なまでに追いついているでしょう。

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