シリコンバレーのエンジニア不足を解消
――まずはTuring設立の経緯を教えてもらえますか?
インドで大学を卒業してから、スタンフォード大学の大学院に進みました。卒業後はYahoo!に就職し、Turingを設立するまでに、3社起業しています。
機械学習との関わりはかなり長く、約18年前から携わっています。最初は研究者として、その後は法人向けに機械学習を活用したサービスを提供してきました。
社内のエンジニアとリモートメンバーが協働できる環境を構築し、ロシア、ウクライナ、ポーランド、セルビアや中国など、国外在住の優秀なエンジニアを雇用することで、人材不足を解決しました。リモートで働く海外在住の優秀なエンジニアも、シリコンバレー在住の優秀なエンジニアがオフィスで働くのと同等の品質を保ち、仕事を進めることができると自ら経験したのです。
シリコンバレーでは、希望するレベルのエンジニアを雇用できない場合、エンジニアの質を妥協するか、雇用しない、選択肢はこの2つのみでした。しかし、自分たちが成功したように、リモートメンバーを雇用する選択肢があってもよいはずです。そこで、自社用に構築した環境をよりスケーラブルで、より費用対効果の高いものに改善し、Turingを創業しました。
就労条件はリモートワーク・長期雇用・フルタイム
――御社は世界中にいるソフトウェアエンジニアの中から、AIで優秀な人材を選抜し、適した企業にマッチングするサービスを提供しています。御社の強みは何でしょうか?
例えば、オフィスで働く社員を雇用したい時は、候補者は5〜10人程度でしょうから、選考にAIを活用するほどではありません。
しかし、リモートワークとなると、500から1000人以上から応募がきますので、より大きなデータをプールできます。そしてそのデータをAIを使って、登録時の能力測定や、企業とのマッチングの精度を高めています。
Image: Turing Tuning上で行われるオンラインのエンジニア採用面談。
Turingの選考プロセスは、8〜10時間かかりますが、当社が紹介する就労条件は、リモートワークでありながら、短期ではなく長期雇用のフルタイムが基本です。そして「Turingエンジニア」として認められれば、居住地を変えることなく様々な求人にアクセスでき、就職活動する必要はなくなりますので、応募するエンジニアは納得しています。
ITアウトソーシングサービスも当社の競合と言えるかもしれませんが、彼らはオフィスでの就労を前提としています。つまり、限定地域の人材のみを対象としているため、いつの日か人材が足りなくなるでしょう。Turingには、世界の140カ国以上、1万以上の都市に住む、世界的にトップ1%に含まれる優秀な開発者・エンジニアが約16万人登録していますので、そうした心配はありません。
世界の才能あるエンジニアに活躍の場を提供したい
――世界中のソフトウェアエンジニアの上位1%に入るエンジニアが登録しているとのことですが、上位1%だけでは、将来的に人材不足になりませんか?
世界には3000万人ソフトウェア開発者がいますので、その1%は30万人です。また、開発途上国では毎年、相当数のエンジニアが育っています。独自に調べた統計では、毎年約200万人のソフトウェアエンジニアが社会に出ているので、その1%だと2万人ですね。人材不足は当面は心配ないと考えています。
グローバルレベルでは、才能あるエンジニアがその才能に適したチャンスを得る機会はまだまだ少ないのが現実です。才能があっても生まれた国によって、貧困などの問題に直面している優秀な人材に活躍の場を提供すること。これが、当社の使命のひとつです。
――年間経常収益(ARR)が1000万ドルに達したそうですね。現在は北米の企業向けにサービスを提供していますが、今後は米国外の企業も対象にする予定はありますか?
当社は、シリコンバレーを拠点にしていますので、シリコンバレーの企業が主な顧客で、主なターゲットです。しかし、オーストラリアやシンガポールなど米国外にも顧客がいますし、今後は海外での事業展開も検討したいと考えています。
――日本企業の顧客または、Turingに登録している日本人エンジニアはいますか?
日本企業の顧客も日本人エンジニアの登録もまだありません。しかし、所在地に関係なく当社のサービスを利用できます。当社のサービスは、テクノロジーの活用を最優先し、エンジニアの質の高さを再重視している急成長企業に適しています。