銀行の垣根を超え、オープンバンキングプラットフォームという名のエコシステムを構築
―まずは御社のビジネスやミッションについて教えてください。
ひと言でいうと、Tokenはオープンなバンキング・インフラプラットフォームです。我々は、世界中の銀行へのアクセスを改善することを使命と考えており、その用途はさまざまですが、今は決済に注力しています。
―具体的に、どのような製品があるのでしょうか?
基本的にはトークンオペレーションシステムというプラットフォームになりますが、それに加えて3つの製品を運用しています。
まず1つ目がToken PSD2。これは、欧州連合の規制に準拠したもので、EU内の銀行向けのコンプライアンスソリューションになります。そして2番目の製品がToken Connect。簡単に言うと、サプライヤーである銀行と開発者を結ぶエコシステムになります。複数の銀行のAPIを集約し、開発者向けに単一の安全なAPIを提供しています。そして最後、3つ目の製品がToken Bank Payというもので、Connectと似ていますが、こちらはおもにeコマースへの決済に焦点を当てています。これらがTokenのオープンバンクプラットフォームで実行されることになります。
―御社のシステムや製品で、一体どのようなことが可能となるのでしょうか。
ユースケースは主に2つで、1つは、口座データへのアクセスです。口座残高と取引履歴の確認がおもな用途になると思います。たとえば、レンタカー会社で車を借りる際、現在は身分証明フォームに情報を記入する手間がありますが、当社のシステムを活用すれば、将来的に銀行の個人情報を自動車会社と共有できるようになるはずです。
2つ目は、決済のためのアプリケーションです。eコマースでの支払いなどですね。銀行と直結する決済方法を、手数料などを気にせずに利用できるようになります。
送金をメール送信と同じくらい簡単にしたい
―ステーブルコインの開発も行っているんですよね?
はい。我々は独自にトークンXというコインを開発しました。基本的には法定通貨と1対1で換金できるので、非常に安定した信頼性の高いコインです。国内外の取引に役立つ暗号通貨の利便性と、規制に準拠したステーブルコインは非常に将来性のあるツールになると思います。
―そもそも、なぜこのようなサービスを始めようと思ったのでしょうか。
主な理由は、銀行システムに私たち自身が不満を抱いていたからです。現行のシステムは50年以上昔のテクノロジーで構築されていて、送金手続きが煩雑で手数料も高く、透明性があるとは言えませんでした。
我々は、送金というものがメールを送信するのと同じくらい手軽になるべきだと感じ、銀行業界とテクノロジー業界の両方から得た専門知識を生かして会社を始めようと決意したのです。
―競合はいますか?また他社にはない、御社の強みはどのような点でしょうか?
同じようなビジネスを手がけている企業はありますが、彼らは主にデータを扱っており、データと決済の双方に対応していることが我々の強みです。また、ヨーロッパにある競合他社の多くは個別の国や地域に特化する傾向がありますが、我々はより広範なアプローチをとることで、ヨーロッパ全体でできる限り多くの地域をカバーしていこうとしています。
そして多くの企業は銀行へのアクセス、という形をとっていますが、我々が構築しているのは銀行とデベロッパーのエコシステムです。ユーザー体験の改善や費用対効果を高めるだけでなく、デベロッパー体験をも向上させていきます。
世界の動向に注目し、時代を見据えた広範なサービスを展開
―日本市場を始め、世界展開についてはどのようにお考えですか?
我々はおもに、オープンバンキングに関する規制が整備されている地域に進出しています。ヨーロッパをはじめ、今は中東に進出しています。今後はオーストラリア、メキシコ、南アメリカといった市場への拡大を検討しています。日本市場についても、パートナー企業とともにリサーチしている段階で、早いうちに良いクライアントと出会いたいと思っています。
―短期間でここまで成長できた要因はどこにあると思われますか?
オープンバンキングの規制に前向きな動きを示していたヨーロッパの現状をしっかりと認識し、早いうちにロンドンで販売やマーケティング活動を始め、ヨーロッパ市場にサービスを提供することにしたのが正しい選択だったのだと思っています。イギリスの規制当局はオープンバンキングエコシステムを推進していますが、彼らから正式な承認を得ることもできました。
―まさに、時代を読む力ですね。では最後に、今後のビジョンについて教えてください。
今から5年から10年後、Tokenが国際的な決済から地元の支払いまでをカバーするグローバルな銀行ネットワークを構築し、一日に数十億ドル規模の取引を扱うような企業になっていると信じています。