技術者として困難な問題を解決し、人々のQOLを向上させたい
―まずはCEOの経歴とSeismic設立の経緯を教えていただけますか。
私は30年以上ロボティクスに携わっています。最初の約20年間は、ヘルスケア分野での活用に取り組みました。例えば、重度の障がいを持つ方のリハビリや、脳卒中後のリハビリテーション治療、高齢者向けのアシスト技術の開発に携わりました。
その後は、SRIのDirector of Roboticsとして、手術支援ロボット「da Vinci(ダ・ビンチ)」にスピンアウトした研究プログラムを約7年間指揮・管理しました。同時に、SRIのDirectorとして、DARPA(米国国防高等研究計画局)の研究プログラムにも参加しました。
Seismic設立のきっかけとなった、Robotics Muscles(人工筋肉/軽量アクチュエータ)も、DARPAの研究プログラムの1つでした。私はこの技術は、消費者向けの新製品に繋がる可能性があると見込み、Director職を離れて製品開発に取り組みました。そして、スピンアウトとしてSeismicを設立したのです。
私は、問題を解決し、人を助けることにやりがいを感じます。そして、テクノロジーを製品に活用できれば、人々にベネフィットをもたらせると考えています。研究を活かし、人々の生活の質を向上させるために難しい問題に取り組むこと、これが私のモチベーションになっています。
「Powered Clothing™」人工筋肉を装着するのではなく洋服として着る
―製品をご紹介ください。
先に話したように、独自のRobotics Muscles(人工筋肉/軽量アクチュエータ)が当社製品の基になっています。そして、人々はロボットを「着る」のではなく、洋服を着る、この見解から、人工筋肉を洋服に統合し、洋服に機能を持たせました。当社ではこれを「Powered Clothing™(以下パワードクロージング)」と呼んでいます。
パワードクロージングは、筋肉に沿って主に腰など体の中心部位をサポートし、ベースレイヤーに着ける肌着にもできますし、ジャケットにもできます。そして、高齢者だけでなく、例えば労働者の疲労や怪我などの軽減に役立てることも可能です。
このスーツにはもう一つ特徴があります。例えば、着用している人が座っているか立っているかを自動認識し、動作に合わせたサポートや、長時間立っている場合、背中と腰を引き締め、より長く快適に立っていられるようにサポートする機能です。これは、プログラム可能なプラットフォームにより実現しています。そして、プログラム可能にしたことで、カスタマイズができます。例えば、設計当初は認識対象にしていなかった動作でも、実際にパワードスーツを着る方の作業内容や、怪我につながる特定の動作などに従い、問題になる動作にも対応できるようにプログラムし機能拡張ができます。
―ビジネスモデルを教えていただけますか。
まだ販売しておりませんが、初期設定とカスタマイズの費用、それと月額利用料をいただき、ソフトウェアのサポートなど全てをカバーする、レンタルサービスとしてご提供する予定です。当社は、CINTAS(米国の大手制服レンタル会社)とパートナーなので、CINTASのユニフォームレンタルサービスと同じようなビジネスモデルになると思います。
肉体労働者を対象に様々な業種で使えるパワードスーツ
―御社のスーツは日本でも話題になっていますね。
日本の消費者は、新しいものに興味を持ってくれますし、取り入れるのも早いです。日本には、人工筋肉を使ったパワーアシストスーツは他社製品が普及し始めていますが、当社のように洋服として着ることができるロボットはないと思います。この特徴を活かし、警備員、飲食業や清掃スタッフなど、サービス業でパワードスーツの活用をご提案していきたいと考えています。
当社のシリーズAラウンドは日本のVC、Global Brainsがリードしましたし、大林組や三井不動産からも資金調達しています。日本国内の事業展開にご協力くださっている日本企業が多数います。2021年には特に日本市場でアクティブに活動して行く予定です。