ドローンでは難しかった、屋内の建設現場撮影
――まずは創業した経緯を教えてもらえますか。
前職の3D Roboticsでは、ドローンを使って建設現場を撮影する「Site Scan」というサービスを手がけていました。ドローンが建設現場の上空を飛行して撮影し、建設業者に写真や地図を提供します。顧客に建設現場の写真を提供すると、大変喜ばれていました。写真は1000の言葉以上の価値があると。
2つ目は、使いやすさです。ドローンはクールで、面白いことがたくさんできますし、技術的にも優れています。しかし建設現場の人たちは信じられないほど忙しく、12時間労働の日々が続くことも少なくありません。ドローンを飛ばすということは、忙しい彼らの仕事をさらに増やすことにもなりました。
3D Roboticsの価値は視覚的なデータを提供することであり、視覚的なデータは屋内にも多くあります。その視覚的なデータを、360度カメラを使って簡単に収集し、提供できるサービスをつくろう、これがOpenSpaceを立ち上げたアイデアでした。
そして大学院時代の友人で、コンピュータビジョンの会社を成功させたMichael Fleischmanと、MITの研究者だったPhilip DeCampを誘って、360度カメラを使った新しいプロジェクトを始めたのです。
作業員のヘルメットに小型カメラを装着、建設現場を自動で撮影
――OpenSpaceでは、具体的にどんなプロダクトを提供しているのでしょうか。
建設現場を360度カメラで撮影し、記録するソリューションを提供しています。作業員のヘルメットに小型カメラを取り付け、建設現場を自動で撮影することができます。
写真撮影はあらゆる建設現場で求められています。デベロッパーは工事の正確さを写真で証明したいと考えていますし、ゼネコンは下請け業者の責任を問うために写真を撮影したい。通常は、建設現場の誰かが撮影していますが、頻度や網羅性は高くありません。私たちのソリューションは屋内屋外を問わず、360度の視野で撮影し、ほぼリアルタイムで画像を提供できるのです。
Image: OpenSpace 過去に撮影した写真と現在の写真を比較することができる。
私たちは基本的なプラン「OpenSpace Photo」を無料で提供しています。一定規模の建設現場や分析機能を追加する場合は、有料のプランをご案内しています。
――AIはどのように活用しているのですか。
たとえば、自動マッピングに活用しています。ユーザーは自分の居場所を伝える必要はなく、AIがユーザーの居場所を把握して間取り図に自動でマッピングしてくれます。
次に建設の進捗状況の追跡です。撮影した画像をもとに自動で作業量を計算することができます。どれだけの材料が使われたのか、どの壁が設置されたか、どの工事が行われたかの詳細も表示できす。使われた材料、工数をもとに費用も計算できますので、非常に効率的です。さらに計画と現実の進捗の画像を並べ、作業が計画通りに進んでいるかどうか、視覚的に確認することができます。
他にもオブジェクト検索ができます。建設現場ではよく資材や用具を紛失します。探し物を求めて建設現場を歩き回ることがよくあります。そこでOpenSpaceを使えば、「ああ、あれは7階にあったんだ」とすぐにわかるのです。
Image: OpenSpace 物の画像を検索すれば、場所を見つけ出すことができる。
新型コロナウイルスの影響で利用が急増
――新型コロナウイルスの影響は受けていますか。
そうですね。新型コロナウイルスの影響で、建設現場の敷地内に入れる人数も大幅に制限されています。なかなか建設現場に立ち入れない中でも、私たちのサービスを利用することで、どこでもバーチャルに見学できるようになりました。そのため需要が大きく伸びています。
これまでにカバーした現場の面積は、2018年の夏には900万平方フィートだったのが、2020年2月には8000万平方フィートになり、6月には10億平方フィートになりました。現在は30か国で活動し、その面積は急速に広がり続けています。
――日本にも顧客がいますか?
すでに日本に大企業が利用しています。日本では、質問を受けたらすぐに返答できる体制が重要だと考えており、すでにAPACでカスタマーサクセススタッフを採用しています。
私たちのサービスは直感的に使えるので、言語の翻訳はほとんど必要ありません。世界中どの国でも同じように使えます。世界中の建設現場で、私たちは役立てると思っています。