非現実的な「女性らしさ」に自分を合わせる必要はない
―まずはCEOの経歴と、LIVELY設立の経緯を教えていただけますか
私の両親はインドからの移民です。人生の成功は、銀行家、医者または弁護士になることだと言われて育ち、大学では金融学を専攻しました。しかし、私は金融系企業でインターンをした際に、仕事に対して情熱や生きがいを感じることがでず、自分が興味を持てるファッション業界に進むことにしました。
私はVictoria’s Secret(米国発のファッションブランド、セクシーなデザインが特徴)で働いていた時に、「Victoria’s Secret」と聞いたら皆、「エンジェル(広告塔を務めるトップモデル)」「ファンタジー」そして「プッシュアップ」を思い浮かべる程、「女性的」なインナーウェアに対するイメージが浸透していることに気づきました。米国の女性用インナーウェア市場は130億ドルです。その35〜40%をVictoria’s Secretが占めています。しかし、女性は皆、スーパーモデルのようにならなければ、と感じる必要はありません。ありのままの自分でいられる下着で、下着を着けた自分を見た時に良い気分でいられるような、女性をインスパイアする物を作りたいと考え、LIVELYを立ち上げました。
私は、Concept Customerというマーケティング・コンセプトが大好きです。LIVELY設立時にもコンセプトを大切にしました。また、ビジネスや金融のバックグラウンドが小売販売業で活きています。
自ら広告塔として活動する10万人のLIVELY Ambassadors
―従来の「女性的」な下着とはどういった点で違うのでしょうか。
従来のブラジャーには沢山のワイヤーが使われ、25から40の異なるコンポーネントがあります。複雑な構造になっているため、女性が自分の体を下着に合わせる必要があります。
当社では、アスリート用の下着や水着などの「人の体に合わせる」要素と、ランジェリー(装飾性がある下着類)の機能を組み合わせた「Leisuree」を主商品としてD2C(Direct to consumer)でご提供しています。ブランド立ち上げから4年かけてLIVELYコミュニティを育て、現在はかなりの規模になりました。LIVELYのコンセプトも浸透し、LIVELY Ambassadorとして活動する愛用者の数は10万人に達しています。
―オンラインストアのみで販売しているのでしょうか。
1年前までは99%オンラインストアでしたが、現在は米国内に実店舗が4店あります。また、Nordstrom(全米有数の大型百貨店チェーン)がパートナーになり、多様な販売ルートを持っています。
商品も、インナーウェアだけでなく、フレグランス(香水や石鹸など)や、「Cool Things」というカテゴリーを設け、靴下、トートバッグ、シュシュやノートまで、取扱商品の幅を拡げています。
購入者は世界80カ国以上に
―米国外からも御社サイトで商品を買うことはできますか。
海外への直販は行っていませんが、80カ国以上の皆様に当社の製品をご購入いただいています。
米国外でも需要が見込めますが、会社の規模が大きくなると舵取りが難しくなります。一般的なデータにおけるスタートアップの生存率は、5年で40%、10年では10%ですので、早期段階における規模拡大や海外進出は控えてきました。
―2019年にワコールホールディングスに買収されましたね。今後日本での展開が楽しみです。
そうですね。ワコールの米国子会社を通じた買収でした。
海外進出する際は、サイズなどの違いだけでなく、国ごとの文化の違いなどを理解する必要があります。日本やその他の国の女性がどういったインナーウェアを好み、使っているのか、とても興味があります。ワコールと共に日本の女性の、パッション、生きがい、そして自信に満ちた生活を応援できることを楽しみにしています。