Image: Carbonated

ロサンゼルス海岸沿いのスタジオで、モバイルゲームを開発

 Carbonatedは、モバイルゲームのベテランたちが集まり、2015年に立ち上げたスタートアップ。ロサンゼルスの海岸沿いのエルセグンドにスタジオを構え、ハードコアな対戦型モバイルゲーム「MADWORLD」を開発中だ。

 2020年に大手VCのAndreessen Horowitzなどから850万ドルのシードラウンドの資金調達を行い、ゲームのローンチに向けて準備を進めている。

Image: Carbonated Carbonatedの開発する「MADWORLD」

 「私たちはモバイルゲーム市場をターゲットにしています。ハードコアな対戦型ゲームは、ゲーム機やパソコン向けに開発されており、モバイルで遊ぶ仕様になっていません」と創業者でCEOのTravis Boatman氏は語る。

 モバイルのゲームプレイヤーは26億人を超え、ゲーム市場規模の1600億ドルのうち半分程度を占めると予想されている。仕事や家庭生活で忙しい人々は、ゲーム機やパソコンでゆっくりゲームを楽しむ時間はなく、すきま時間にモバイルでゲームを遊ぶ傾向があるという。Carbonatedはそんなプレイヤー層をターゲットにしている。

 Carbonatedの目玉となるのは「Carbyne」と呼ばれるLiveOpsのプラットフォームの技術だ。

 ゲームの大型アップデートをした場合、すべてのプレイヤーがアップデートを気に入るわけではありません。私たちは特定のプレイヤーの特定のコンテンツを提供できる機能を開発しました。Carbyneは、あらゆる形態のコンテンツを迅速に作成・修正し、ダウンタイムなしでプレイヤーに配信することができます」。

Image: Carbonated ビールを片手にモバイルでプレイできる操作性を実現。

 また、他の企業と提携したAI技術の開発も行っている。モバイルには大きな画面も、キーボードもない。操作性はどうしても限られてしまう。

 Carbonatedは、ゲーム上にスワイプするとAIがプレイヤーの意図を汲んで自動で実行する機能を開発しているという。「iPhoneのタッチスクリーンには、タップしやすくするために多くの技術が投入されています。私たちも同じようにモバイルでゲームをしやすくする多くの技術を開発しています」。

ゲームボーイを初めてプレイしたときの衝撃

 CarbonatedのCEOであるBoatman氏は、モバイルゲームの草創期から活躍してきた一人である。25年以上ゲーム業界で活躍した後、2015年に起業した。Boatman氏にこれまでのキャリアについても振り返ってもらった。

Travis Boatman
Carbonated
Co-Founder & CEO
南カリフォルニア大学にて運動生理学を専攻。大手玩具メーカーのMattelを経て、2001年からゲームパブリッシャーのJAMDAT Mobileにてゲームライセンスの取得に携わる。同社はElectronic Artsに買収され、Electronic Arts MobileにてWorldwide StudiosのSVPを務める。2011年にソーシャルゲームで急成長していたZyngaに入社。2015年にCarbonatedを設立し、CEOに就任。
 「私はビデオゲームが大好きで、大学を卒業後、ビデオゲームの世界に飛び込みました。1994年のことでした。それ以来、25年以上ずっとゲーム業界で働いています。最初は初代のプレイステーションやセガのジェネシス(メガドライブ)のゲームを手がけていましたが、90年代の後半にはモバイルゲームの未来について考えるようになりました。誰もが携帯電話を持ち、その携帯電話でゲームができる時代が来ると考えたのです」。

 Boatman氏が最初にモバイルゲームの可能性を感じたのは、日本のゲームボーイをプレイしたことだった。

 「初めてゲームボーイをビーチでプレイしたことを今でも覚えています。それまでゲームはコンピュータの前でするものでした。しかしモバイルゲームがあれば、大好きなゲームをしながら、外に出ることができるんだと衝撃を受けたのです」。

Zyngaでゲーム業界の大変化を目の当たりに

 Boatman氏は大手玩具メーカーのMattelを経て、2001年からゲームパブリッシャーのJAMDAT Mobileにてゲームライセンスの取得に携わった。当時の大きな仕事の一つは、テトリスのグローバルライセンスの取得だった。グローバルで初期モバイルゲームの仕事を手がけたJAMDAT Mobileは上場を果たし、2006年にElectronic Artsに買収された。

 「私はモバイルゲームのピークはまだだと思ってゲームを作り続けていました。そうしたらiPhoneが登場し、アプリストアが生まれました。すぐその後にAndroidも誕生し、モバイルゲームビジネスは再び成長し始めたのです」。

 転機となったのは、ソーシャルゲーム会社のZyngaでの経験だった。2011年にBoatman氏はZyngaに入社し、モバイルゲームの開発に打ち込んだ。その時、ゲーム業界の大きな変化を目の当たりにした。

 「それまで見たこともないような、ゲーム業界の大きな変化を目の当たりにしました。それは、パブリッシャーにとって非常に高価で難易度の高い技術の多くが、コモディティ化されてきたのです。それまで配信、顧客獲得、ゲームエンジン、同時プレイサービス、ストレージ、カスタマーサービス、顧客調査、データ分析などの機能を構築するには、大きなコストがかかっていましたが、GAFAなどによって無料で提供されるようになりました」。

 誰でもパブリッシャーになれる環境が整い、小規模なパブリッシャーが勝ち組になるケースも増えてきた。Boatman氏はゲームと顧客に集中するゲームスタジオを立ち上げるべく、2015年にCarbonatedを立ち上げたのだった。

Image: Carbonated テスト版のゲームを提供中。プレイヤーのフィードバックをすぐにゲームに反映している。

 現在、Carbonatedの開発する「MADWORLD」はクローズドでテスト版を提供し、プレイヤーからのフィードバックをもとにゲームを改善を続けている。

 「LiveOpsの素晴らしいところは、プレイヤーの声に耳を傾け、何を求めているのか、何を求めていないのかを把握し、そのコンテンツを作成し、迅速にお届けできる点です」。

 また今後は世界各地でのイベント開催を企画している。日本、韓国、中国でもユーザーを集めたイベントを開催したいと考えている。



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