Cambly(本社:米国カリフォルニア州サンフランシスコ)は、ネイティブスピーカーとのオンライン英会話サービスを提供するスタートアップ。言語や文化に没頭することこそが語学学習の最善の方法だという旅先で得た実感を元に、Google出身のエンジニアらが2012年に創業した。現在は、日本を含む世界150カ国以上で英語学習の環境を提供している。共同創業者でCEOのSameer Shariff氏にサービスの強み、英語学習に対する思い、今後の展望について話を聞いた。

目次
創業のきっかけは旅先でのスペイン語学習
24時間予約なしでネイティブと英会話レッスン
「AI講師」導入、対面レッスンの不安を解消
最大市場はトルコ、日本も大きな市場

創業のルーツは旅先でのスペイン語習得

―Camblyを設立されてから10年が経過しました。2014年にはアクセラレーター「Y Combinator」から支援を受け、英語教育分野における世界有数の成長企業です。Camblyの創業経緯を教えて下さい。

 私にとって教育とは、人々の人生に大きな影響を与える取り組むべき意義のあるものだと思っています。私はテクノロジーの分野で働いていますが、それはテクノロジーがこれまでに不可能であったことを可能にしてくれるから、到達できなかった規模に到達させてくれるからです。私はテクノロジーはツールだと考えており、自分が培ってきたテクノロジー・スキルをどこで活かそうかと考えたとき、唯一湧き上がってきたのが教育でした。

 私は高校時代にスペイン語を学んでいましたが、アルゼンチンへ一人旅をした際に、スペイン語の環境に身を置くことで、語学があっという間に上達したのを実感しました。この経験から、いつどの場所にいても、その語学を学ぶ環境に身を置くことができるようにすることをテクノロジーで解決しようと思い、2013年にCamblyを創業。2014年に初期段階のスタートアップなどを対象とするインキュベータープログラムの「Y Combinator」に参加しました。

Sameer Shariff
Co-Founder & CEO
プリンストン大学で学位を取得後、Googleにソフトウェア・エンジニアとして入社。2007年から2010年にかけて、スタンフォード大学でコンピューターサイエンスの修士号を取得。その後、blip.meでソフトウェア・エンジニアを務める。2012年にCamblyを共同設立。

―Camblyのミッションを教えて下さい。

 Camblyのミッションは世界中の全ての英語学習者に質の高い英語教育を提供することです。世界には約80億人が暮らしています。そのうちの約60億人は英語を話せません。つまり、最大でそれだけの規模を秘めた市場であり、チャンスの大きさとも言えます。この60億人のうち、今まさに英語を学ぼうとしている人が15億人いると言われています。私たちのミッションは、そのような人たちに質の高い英語教育を提供することです。私たちがそれを成し遂げることができれば、世界に大きな影響を与えることができると信じています。

image: Cambly

24時間予約なしでネイティブと英会話レッスン

―ネイティブスピーカーとのオンライン英会話サービス「Cambly」の特徴を教えて下さい。

 学習者が英語を話す練習をしたい場合、Camblyのアプリを開いてボタンを押せば、数秒後にはネイティブスピーカーと話すことができます。オンデマンドで24時間365日、ネイティブスピーカーと1対1のライブ英会話ができます。

 また、Camblyの講師陣は、単に英語を母国語とするだけでなく、学習者の興味、スタイル、性格、職業を共有できるような、実に多様な講師のコミュニティを意図的に構築しています。自分の目的に合った講師を見つけて、学習することができます。学習者が勉強のために、または自分の職業に適した語彙を学びたい時など、要望に適した講師を見つけることができます。そのため、一般的な英語だけでなく、学習者の目標に必要な具体的な英語に焦点を絞ることができるのです。

 一方、講師側としては、自分の都合の良い時間に世界中の面白い人たちと会話をして、その対価として料金を貰う仕組みになっています。

―基礎英会話やビジネス英会話だけでなく、食事や子育て、映画、気候変動など多様なトピックに合わせたコース、試験対策のような学習コンテンツがありますね。

 Camblyは、言語や文化にどっぷりと没頭することができる仕組みなっています。語学学習で最善の方法は、没頭することです。教室で構造化されたグループレッスンで学ぶのではなく、実際に旅に出ているような感覚で、会話のやりとりができるようにアクティブな方法で、英語を学習します。

 Camblyは、少人数制のグループレッスンやカリキュラム等、多くの機能を追加してきました。多くの学習者を相手にするような講義形式、受け身の形式をとっていません。より体系的なレッスンを受けたい方には、職業や興味に合わせたさまざまなカリキュラムが用意されています。

「AI講師」導入で対面レッスンの不安を緩和

―講師はどのように決められますか。

 Camblyサービスは、オンデマンド構築されています。他のサービスでは通常提供されていないもので、私たちはとても重要だと考えています。学習者側が話したいと思ったときにいつでも講師を探すことができる。学習者の多くは忙しい生活を送っています。仕事もあるし、家族もいる。ですから、空いた時間があればいつでも、忙しい生活の中で英語の練習をすることができるのです。

 一方、お気に入りの講師を予約することもできます。これはより一般的に提供されているサービスでしょう。オンデマンドは私たちの独特な強みです。講師一覧から、自分にとって最適な講師を見つけ、講師が今すぐレッスン可能な場合は、今すぐその講師と話したり、レッスンを予約したりすることができます。

―無料でAIと英会話練習ができる「Cambly AI」も導入されましたね。

 はい、Cambly ではAI講師を導入しています。学習者が人間と1対1で話すことにまだ慣れていないのであれば、私たちのAI講師で練習し、実際の人間と話す前に自信をつけることができます。私たちは、学習者が目標を達成するためには、やはり本物の人間が重要だと考えています。最終的な学習者の目標は、ネイティブスピーカーとこのような会話ができるようになることです。ですから、人間を使って練習することが重要であり、他の人間と話すことに慣れることが重要だと考えていますが、それが少々ハードルが高いことであることは理解しています。そのためにAI講師を提供しています。

 私たちがやっているのは、AIと人間を組み合わせて、学習者や講師にとって最高の学習体験を構築するにはどうすればいいかを考えることです。同じ趣味を持つ学習者とマッチングして、一緒にグループ指導を受けることはできるか?学習者の語彙の量や苦手な単語、覚えたばかりの単語を自動的に把握し、個人指導の合間の空き時間に練習できるような練習問題を作成することはできるか?このように、私たちはAIを活用して、学習者がしている1対1の人間同士の会話を強化しようとしているのです。

image: Cambly

最大市場はトルコ、日本も大きな市場

―グローバル視点で見たときに有望な市場はどちらですか?

 何百万人もの学習者がCamblyを試しています。地理的には、中東、特にトルコが最大の地域です。中南米やブラジルでも利用が高く、東アジアでは韓国、中国、日本が非常に大きな市場です。

 日本市場には数年前から参入しています。日本にも多くの学習者がいます。急成長している市場です。日本では、教室で座学する機会はたくさんありますが、1対1や少人数の安全な環境でグループをセッティングして実際に話す練習をする機会は少なく、Camblyは、日本の語学学習の過程で見つけたギャップを埋めるものだと思います。

 私たちのグループレッスンは少人数で構成されており、最大でも、講師を含めて、合計4人です。世界各国から同じレベル、同じような興味を持つ3人の英語学習者が集うことで、グローバルなグループレッスンになります。こうすることで、学習者全員が積極的に発言することができるからです。

―日本企業との関係もありますか?

 私たちのビジネスはユーザーに直接販売するスタイルが中心ですが、教育機関との提携や法人向けサービスといった小規模なビジネスも行っています。法人向けで言えば、英語を学びたい従業員がいる企業と提携して、その企業の従業員にCamblyを提供しています。このような分野にもっと力を入れる大きなチャンスがあると思っています。

―今後12カ月で達成しようと考えているマイルストーンは何ですか?

 私たちの目標は、15億人の英語学習者、さらには現時点で英語を話さない60億人の人々にリーチすることです。ですから、私たちはとても壮大な野望を持っています。今、私たちは製品面での進歩を加速させるために多くの投資をしています。特に、グループ向けサービスの強化、多くのAI機能を構築しています。また、成長と事業拡大に集中しています。

 英語を学ぶことは、その人の人生に最も大きな影響を与えることのひとつだと、私は確信しています。私たちは、とてもエキサイティングで、世界に影響を与える可能性のあることに携わっていると考えています。それが私のモチベーションを維持し、毎日を奮い立たせてくれています。



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