Image: BlocPower
BlocPowerは、2012年にニューヨークで生まれたスタートアップ。ゴールドマン・サックスや地方自治体などと連携し、アメリカでビルのエネルギー性能を分析して省エネ化を図るプロジェクトを推進している。これまでに1000棟のビルでプロジェクトが完了し、顧客は20〜40%の電気代を節約できているという。今回は創業者でCEOのDonnel Baird氏に聞いた。

アメリカの古いビルで膨大なエネルギーが浪費されている

――どのような経緯でBlocPowerの起業に至ったのでしょうか。

 私は、ニューヨークとアトランタの低所得コミュニティで育ち、より恵まれた子供たちが通うようなプレップスクールへ通い、デューク大学へと進学しました。

 2007年には、オバマ大統領の選挙活動にスタッフとして携わり、彼の勝利後は、米国エネルギー省でグリーンビルディングの建設プロジェクトに関わりました。

 ただ、私たちが解決をしようとした問題が、金銭的にも技術的にも難しかったので、私はビジネスと金融について学ぶために、2011年にコロンビア大学への入学を決めました。BlocPowerは、在学中の2013年に立ち上げた企業です。

Donnel Baird
Blocpower
Founder & CEO
2003年にデューク大学にて歴史学を専攻。2007年にオバマ大統領の選挙活動支援に参画。2013年にコロンビア大学でMBAを取得。同年にBlocPowerを創業、ビルのエネルギー効率化や、二酸化炭素排出削減、エネルギー代の削減に取り組む。

――BlocPowerは単なる営利目的の会社ではないですよね。あなたがこのビジネスで解決しようとしている問題は何なのでしょうか。

 アメリカでは化石燃料の使用過多に伴い、エネルギーの浪費が大きな問題となっています。アメリカのビルは古く、エネルギー効率の悪いシステムが多く残っているんです。これは経済的にも環境的にも悪影響です。

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 BlocPowerの目標は、中規模のアメリカのビルのエネルギー浪費を減らすことです。そのために私たちは、学校や住居用などの中規模ビルのエネルギー性能を管理・分析するソフトウェアを作りました。主にビルの所有者、電力会社、地方自治体のサステナビリティ担当をターゲットとしています。

 中規模ビルの分析、融資、アップグレードを行い、より健康的で、より環境に優しい、よりスマートなビルにしていきます。具体的にはビルの暖房、冷房、照明、温水暖房システムを設置し、ビルの所有者や電力会社、地方自治体から報酬を得て、グリーンビルディングの取引を促進します。

 またゴールドマン・サックスと共同で金融商品を開発し、顧客がエネルギー効率の良い機器を設置するための資金調達スキームを作っています。

ゴールドマン・サックスやダイキンと連携

――ゴールドマン・サックスと協力して、より多くのビルや都市のより多くの場所への導入を支援しているのですね。

 ええ。シリコンバレーのパートナーとソフトウェアを構築し、金融面ではゴールドマン・サックスと協力して一連のサービスを提供しています。ゴールドマン・サックスでは日本のキャシー松井さんに大変お世話になりました。本当に感謝しています。

――日本企業との連携は行っているのでしょうか。

 はい、ダイキンとパートナーシップを結んでいます。彼らはニューヨーク州の市場で販売したいと考えています。私たちのソフトウェアを使用し、なぜダイキンの機器を使用した方がいいのかを、ビルの所有者が納得できるよう日々拡大を目指しています。

――今後のビジョンは何でしょうか。

 将来的には、5都市から15〜20都市へと拡大し、1000棟から1万棟にまで拡大したいです。また、パンデミックもあり、低所得コミュニティにWi-Fiの提供も開始しました。ダイキンの設備はレポートの送付にWi-Fiを必要とするので、それを一般向けに開放したら、ロックダウン中でもその設備を使用することができます。私たちは今あるパートナーシップに非常に感謝しており、日本を含む全世界に拡大していきたいと思っています。

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