日本をはじめ世界的に高齢化が課題となる中、在宅介護サービスにテクノロジーを取り入れ、介護業界に変革を起こしているのがHonor Technology(本社:米カリフォルニア州、以下Honor)だ。AIアルゴリズムによって介護士と高齢者のマッチングを高い精度で行い、高齢者が年齢を重ねても安心して自宅で過ごせるよう支援している。「高齢者向けの介護のキャパシティ、人材を世界的に拡大していきたい」と語る共同創業者でCEOのSeth Sternberg氏に、起業のきっかけや高齢化に対する取り組み、日本やグローバル市場への展開など話を聞いた。

連続起業家が高齢の母の変化に気付き、介護サービスに着目

――今までの経歴を教えて下さい。

 大学卒業後、IBMなどでビジネスマネジメントに携わった後、最初のスタートアップを立ち上げました。Meeboというメッセージングアプリの会社を2005年に立ち上げ、7年間CEOとして携わりましたが、2012年に同社をGoogleに売却しました。その後、Googleに在籍した後、Honorを2014年に創業しました。このように私は人生のほとんどを起業家としてやってきています。

Seth Sternberg
Co-Founder & CEO
イエール大学卒業後、IBMやPlaxoなどでビジネスマネジメントに従事。2005年にメッセージングアプリのMeeboを創業し、CEOに就任。2012年に同社をGoogleに売却。買収先のGoogle内で、Google+開発に従事したのち、2014年にHonor Technologyを共同創業し、CEOに就任。現在に至る。

――Honorを立ち上げたきっかけは何だったのでしょうか?

 MeeboをGoogleに売却した後、共同創業者と私は「人の人生を根本的に良くする」ような何か新しいことをしたいと考えていました。私たちは過去に会社を設立した経験があり、会社の設立やスタートアップのやり方についてのアイデアは持っていました。その上で、今までと異なる難しい課題に取り組みたかったのです。

 1年半ほどかけてアイデアを探していたときです。母を訪ねた時、母が空港まで私を車で迎えに来てくれました。いつもより少し遅いスピードで母が車を運転していたことに気付いた私は、「どうしてそんなにゆっくり運転しているの?」と聞きました。母は「運転することが昔より難しくなってきているの」と答えたのです。

 母のその答えが全ての始まりでした。母のことが心配になった私は、共同創業者のところに戻り「高齢者を助けることを始めるのはどうだろう」と提案しました。そしてHonorを創業しました。

高齢者の日常生活を支える プロの介護士の質の高いサービス

――御社のサービスおよび製品について教えて下さい。

 私たちは、高齢者が年齢を重ねても自宅で過ごすことができるようお手伝いをしています。そして、彼らの息子や娘が両親の世話をするのを助けることも多いのです。

 私たちは、ADLs(Activities of Daily Living=食事や移動、排泄、入浴などの日常生活動作)と呼ばれるものを支援します。ベッドから起きたり、食事をとったり、服を着たり、日常的な動作ができないと、一人で生きていくことは難しいのです。でも、私たちのサポートがあれば、アパートや家にいて、自分の生活を続けることができます。

 私たちは在宅介護を必要とする高齢者とホームヘルパーをつなぐモバイルアプリ「Honor Family」を開発しました。

 介護を必要とする高齢者の情報をアプリに事前に登録しておくと、私たちが「Care Pro」と呼ぶホームヘルパーが高齢者の家を訪問する前に、理解するべき顧客情報を知ることが出来ます。また、高齢者の情報とホームヘルパーを、AIアルゴリズムを用いて高い精度でマッチングさせているのです。

 このテクノロジーは、Care Proが高齢者の家で何をすべきかをより良く理解するためのものです。同時に、彼らのパフォーマンスやスケジュールも管理します。Care Proに力を与え、彼らが成功するための適切なツールを提供し、質の高いサービスを提供できるようにしているのです。

在宅介護大手を買収 グローバル展開し、日本含む世界の高齢化問題に取り組む

――2021年8月、御社は高齢者向け在宅介護サービスの世界的リーダーであるHome Instead社を買収しました。グローバル化を加速するためでしょうか?

 Home Insteadのネットワークは世界14カ国に及びます。Honorは当初、米国でしか事業展開をしていませんでした。それが買収により、米国やカナダだけでなく、日本やシンガポールなどのアジアや欧州にも広がりました。現在、毎月世界中の10万人以上の高齢者にサービスを提供しており、年8000万時間以上のケアを提供していることになります。

 この買収により、シニアのケア業界が変貌を遂げ、アナログからデジタルへ転換することを期待しています。

――日本は現在少子高齢化の問題に直面しています。日本市場で展開するにあたり、御社のサービスは日本でどのような貢献ができると考えていますか。

 ビジネススクールに通っていた頃、東京に行ったことがあります。大企業のCEO数名に会いましたが、全員が日本の高齢化について話していました。それだけ高齢化社会が深刻だということです。日本だけではなく、欧州や米国でも、高齢化は進んでいるにもかかわらず、高齢者をどうケアしていくかに関して、適切な対策がとられていません。ですから、私たちの仕事を通じて、社会が取り組む方法を変えることができればと願っています。

Image:Honor Technology

Image:Honor Technology

――日本企業とのパートナーシップは検討されていますか?

 Home Insteadのネットワークにより、日本には小さな拠点があります。日本市場で実験的な試みをしていますが、まだ規模が小さいのが現状です。

 私たちは現地のパートナーと一緒に、Home Insteadというブランドのもと、最初の訪問介護事業所を立ち上げようとしている段階です。日本の市場で高齢者をどのようにケアするか、その基本を学んでいるところです。

 多くの国で高齢化が急速に進んでいるにもかかわらず、高齢者のケアを担う介護人材が足りていません。私たちはケアできる人の数を増やすことに集中しています。助けを必要としている高齢者の方々をできる限りケアしていく必要があるのです。

――最後に御社の長期的なビジョンを教えて下さい。

 介護を支えるキャパシティ、人材を世界的に拡大していきたいです。先ほども話した通り、多くの国で高齢化が進んでいるにもかかわらず、高齢者の世話をするための十分な労働力がなく、政府の制度は高齢者ケアのための予算が十分ではありません。現在の高齢者ケアシステムは非常に断片的で、多くの国で組織化がうまくいっていないことも現実です。これは深刻な問題であり、私たちはその解決に貢献していくつもりです。

 時間はかかると思いますが、高齢者の日常生活における活動だけでなく、家庭における生活も将来的により広く支援したいとも考えています。プロの介護士の活躍の場を増やし、世界のシニア世代が必要としているサポートを受けやすくなる環境をつくっていく。将来的に取り組みたいことはまだまだたくさんあります。



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