日立ソリューションズ グローバルビジネス推進本部 部長代理
市川 博一
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パナソニック株式会社 インダストリアルソリューション社
足立 崇彰
日立ソリューションズとパナソニック。日本を代表する企業のオープンイノベーション部門が、シリコンバレーでどのような活動をしているのか。また大企業ならではの課題、シリコンバレーと日本をうまく結びつける方策。シリコンバレーでスタートアップとの接点をつくる「ピッチャー」、日本側で既存事業との接続を進める「キャッチャー」双方の経験を持つ希有な2人に、大企業のオープンイノベーションの現状を聞いた。
モデレーター:イシン株式会社 TECHBLITZ日本オフィス代表 伊田 健一

※本記事は「スタートアップ連携を複数の立場で経験したから分かる、『日本企業におけるオープンイノベーション』」の内容をもとに構成しました。スピーカーの役職は講演当時のものです。

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欠けていたデジタル技術を獲得しにいったパナソニック

伊田:まずはじめに自己紹介をしていただきます。パナソニックの足立さんからお願いします。

足立:私はもともとエンジニアで、通信用半導体の開発をしていました。2014年から2018年までベイエリアに駐在して、CVCとして投資と事業開発をしました。コラボレーション前提の投資だけでなく、ベイエリアのオフィスにインキュベーションスペースをつくり、そこにスタートアップが入居し、スタートアップをサポートしていました。我々にとっても、普段スタートアップが接することのない人がスタートアップに接し、良い関係が築けたというメリットがありました。オフィスには、自動調理器のスタートアップなど我々の事業とは関係がないようなスタートアップも入居していました。

 2018年に日本に戻ってきてからは本社で事業開発を行っていたのですが、昨年の春からカンパニーの事業開発の立ち上げと仕組み作りに携わっています。

 会社とは別なのですが、大阪商工会議所と大阪工業大学がつくっているオープンイノベーションの拠点でも活動しています。スタートアップへの投資は東京で3000億円ですが、大阪は200億円程度です。東京以外の投資は難しい状況ですので、大阪にベイエリアの駐在経験者や興味のある人を集めてコミュニティをつくり、シリコンバレーの状況、事業開発の方法などを伝える活動をしています。

足立 崇彰
2018年6月まで4年間シリコンバレーでPanasonic Venture Group / Associate Directorとしてベンチャー投資、事業開発に従事。帰国後は事業開発に従事するとともに、スタートアップのアドバイザーや大阪商工会議所のインキュベーション組織Xportのメンター/オーガナイザーを務めるなど社外での活動を行っている。

リセラー契約をメインに活動を続ける日立ソリューションズ

市川:日立ソリューションズの市川です。スタートアップとの協業では、よくアメリカ側をピッチャー、日本側はキャッチャーと言います。私はアメリカに6年間いまして、その後日本に戻ってきて、本社でキャッチャーをしています。

 スタートアップとの協業というとアメリカへの出向者のピッチャーがメインになりますが、キャッチャーの方がはるかに難しいです。キャッチャーを充実させないと事業としては続かないと痛切に感じています。一方的にこの商材、ビジネスモデルがいいと投げられても、受け取り手はいません。重要なのは日本側から必要なモノをどれだけ要求できるかです。それを受けてアメリカ側がビジネスを探す形でないと、ほとんどのビジネスはうまくいかないと思います。

 我々がベイエリアでビジネスを始めたのは2007年で、私は2010年から駐在しました。現在は4人の駐在員が様々な分野でビジネスを探しています。日本の事業部で何をしたいかを明確化し、アメリカ側チームと連携して商材を探しています。最近は日立製作所が始めたCVCと情報の共有、連携もしています。

 スタートアップからビジネスを日本に持ってくるリセラー契約がメインで、これが我々の一番のゴールですがなかなか簡単ではありません。まず日本に興味を持っているスタートアップが少ないですし、日立という名前からは冷蔵庫やテレビしか連想されません。またアメリカには我々の主事業であるSIというものが一般的ではありません。そのためスタートアップとの協業には、会社の事業を伝えるところから始めないといけません。

 これまでは年4件ぐらいの事業を行ってきましたが、今年は9件行っています。私が日米の中間に位置する管理部門として全社の要望をまとめて、それをアメリカ側に伝えています。やりたい事業、欲しい商いを言語化するのは難しいですが、うまく言語化できると事業はうまくいきます。以前はシリコンバレー、ニューヨークのみがターゲットでしたが、現在ではカナダ、パリ、ロンドン、イスラエルなど世界に網を張っています。

市川 博一
1996年、日立ソリューションズに入社。産業・流通・ネットビジネス事業化を担当。2010年に米国オフィス赴任。シリコンバレー等のスタートアップアライアンス事業に参画。2016年日本へ帰任し、欧州・アジアのスタートアップ調査、スタートアップの国内事業化支援を担当。
伊田:ありがとうございます。次に両社がオープンイノベーションを開始するに至った経緯をお聞かせください。

足立:我々の会社は1998年に投資部門を立ち上げましたが、同時にベイエリアに研究拠点もつくりました。デジタル時代を迎えるにあたり、アナログ技術しかなかった弊社が、アメリカでデジタル技術を得るためという目的でした。

市川:我々も近い部分があります。このスタートアップとの事業を始めたのはネットワーク設計部門で、この分野は外部のモノをいち早く取り入れないと事業が成り立ちませんでした。その危機感を持っていたのと、この分野の自社開発は難しいとの判断があったと思います。

伊田:オープンイノベーションのゴールを決めずにスタートしてしまう会社さんも多いと思いますが、ゴール設定をどう考えていますか。

市川:あるVCに出資することと駐在員を置くことが事業のスタートでした。結構お金がかかるので、幹部も含めて最初から大きな成功を妄想しがちです。しかしやはり大きな成功を求められると駐在している側が焦ってしまいます。何か成果を出さなくちゃいないでも、何もできない、続かないということが起きてしまいます。なので、はじめから大きな成功ではなく、コミュニティができる、イノベーションの空気に触れる、連携ができればいいといった小さな成功をゴールとしました。

足立:1998年の頃は、やるべきことが明確でした。我々にデジタルの技術がない中で、デジタル家電をつくるということがゴールでした。その時代はゴールが決めやすかったので、うまくいったところもあります。

 今は、そもそも次に何をやっていいのかがわからないというのがあるので、プロジェクトのゴールをしっかり決め、足りないところをパートナーと組むという方法をとっています。

ミッシングパーツを探す形と面白いモノと取り入れる形

伊田:内製するのか、パートナーと組むのか、その判断の基準はどこに置いていますか。

市川:我々の会社にはモノづくりの文化があるので、若いスタートアップの商材だと、スタートアップより内製の方がいいという議論は常にありました。ただこの議論は以前は盛んでしたが、次第に変わってきています。

 理由のひとつはモバイルなどスピード感が求められることが増えたことです。システム管理ツールをモビリティ管理ツールにしようとした際に、iPhoneは毎年のように新製品が出るうえ、アンドロイドにも対応しなくてはいけない。しかし現実的にはそのスピードについていけないので、外部から取り入れると決めました。ただ、すべてをスタートアップの力を借り、取り入れていると会社に技術力がなくなるので、どこを内製するのか、どこを取り入れるのかは決めておかないといけないと思います。

足立:オープンイノベーションには2種類あると思います。会社としてやりたいことがあって、そのプランに足らないミッシングパーツを外部で探すケースが一つ。もう一つは、シリコンバレーには面白いモノがたくさん転がっているので、それを日本に持ってくるというケースです。前者は足らないものさえ分かっていればいいので基準は明確です。しかし後者はだいたい会社で議論になりますね。

市川:ミッシングパーツを持ってくるというのはすごく重要なキーワードだと思います。我々の会社は年間で約100社のスタートアップと会っています。そこで日本側から「セキュリティで何かいいものを」と言われてもアメリカにいてもよくわかりません。ですから会社には「やらない分野を決めてほしい」とお願いしています。やらない分野を決めてしまえば、そこを見る必要性がなくなるので、話が合わないということがなくなります。

 問題はすでに既存である、社内開発しているプロダクトと同じものを生産を止めてでも持ってきた方が良いのか、既存で開発しているものに新しいものをつなげる形でバリューを出した方がいいのかということです。これを決めるために、海外から商材を持ってくる時には、可能な限りで事業部の企画の方と協力をしてマップを作ると決めています。既存で扱っているセキュリティ商品マップを作り、そのマップには、やらない分野、これからやりたい分野も明確化します。これをしないと、「いろいろ商材はあるんだけど結局何もできませんでした」という風になってしまいます。

伊田:数多くスタートアップと連携してきた中で、印象深い事例はどのようなものでしょうか。

市川:私のアメリカでの5、6年の経験でわかったのはM&Aのリスクもあるということです。スタートアップってシードからシリーズE、Fまであり、いま我々がターゲットにしているのはシリーズA、Bのスタートアップです。

 倒産というリスクはもちろんありますが、M&Aのリスクもあります。スタートアップにとってはいいことですが、我々にとっては悩ましい問題です。買収でも色々あり「アクハイヤリング」と言われる、会社が買収され製品開発がストップするパターンは、我々にとって最悪の状況です。買収されても会社が残るパターンは、まだ多少安心です。あとグーグルなどによる買収は、開発担当者が代わり製品名も変わってしまう。

 それから買収に共通することは、スタートアップの早いステージでは良くも悪くも緩い契約なのですが、大きな企業に買収されると厳しく査定され契約させられます。過去にどれだけ実績を上げていても、一切関係なく、30ページほどの厳しい内容の契約書がいきなり送られてきます。スタートアップと付き合ううえで大変な部分ですが、面白い部分でもあります。

足立:投資では、2014年当時、シリコンバレーには結構お金が潤沢でしたので、投資案件はそれほどありませんでした。ただ投資して良かったこともあります。我々の投資の中心はシリーズB、Cなのですが、ある時、弊社で初めてシードステージのスタートアップに投資ができたことと、そのスタートアップにロン・コンウェイも投資をしていたことです。反面、失敗もありました。協業していたスタートアップで投資しようとしたら、パナソニックに投資してほしくないと他の投資家に断れたことは悔しかったです。

倒産とM&A、スタートアップのリスクをどう管理するか

伊田:協業なのか、出資なのか。スタートアップとの組み方のパターンはどう決めているのでしょうか。

足立:基本的にスタートアップへの投資は協業してからと決めています。投資をするかどうかはスタートアップのリクエスト次第です。投資をしてくれと言われたら必要に応じて投資しますが、一方で、投資する側はスタートアップのポートフォリオを作ると思うのですが、スタートアップも投資家のポートフォリオを作ります。そこにうまくはまらないと私たちには投資をできません。やはり事業会社の色がつくのを嫌がるスタートップもいます。

市川:私たちはCVCを持っていませんが、やはり色がつくというのは重要なポイントです。我々はIoT系の商材を探すときに、わかりやすい例ですと「あ、ここGE Venturesが入れているね」と将来性を見たりします。大物のVCが入っているのはある程度レールに乗ったスタートアップだねとわかるのですが、CVCは結構注意してみています。

伊田:スタートアップの各ステージでリスクはあると思います。シードステージでは、製品が固まらず方向性も見えない、倒産するリスクもあります。シリーズB、Cではエグジットがリスクになります。これらの各ステージのリスクに対してどうお考えですか。

市川:この事業を始めた時は、スタートアップとの付き合い方などどうすればいいのか分かりませんでした。ですからわりとレイトステージのシリーズC、Dのステージ、アメリカですでに成功しているようなスタートアップでないと、何が良くてどれくらいやったら良いのかがわからない世界でした。現在は日本でも様々な情報があり、レイトステージ企業はすでにネットなどの情報も多く、日本での販売パートナーが決まっていることが多いため、まだパートナが少ないシリーズAをターゲットにしています。

 シード以降のステージでは倒産するリスクやM&Aのリスクはあまり変わりません。シリーズAでも倒産することは日常茶飯事です。レイトステージでエグジットした場合は、代替製品を探すしかありません。検討段階においては、そういったリスクはあると考えておくしかないです。

 代替製品を探すことを前提にしていますから、密結合のような独立性の低いものはやりません。よく会社が潰れるのであればソースコードを買い取れば良いのではと言われますが、実際は難しい。それまでVCが多額のお金を突っ込んでいるわけです。例えば、1000万ドルを出資していたら、それにプレミアムをつけて本当に買えるのかという話になります。ですから、APIレベルのものに留め、それ以上やりたい場合には「危険すぎるよ」と我々が社内を止めます。

足立:シード、A、Bでも、技術は筋がいいかどうかなので判断できます。それよりも我々と組めるような技術の形にできるかが問題です。

 領域によりますが、製品化して2年も経つと、だいたい代わりの技術が出てくるので、スタートアップが潰れたとしても、技術の代替は可能です。あと潰れてしまっても、すべてがゼロになるわけではありません。倒産の精算では、技術が切り売りされるので買うことができます。部分買収の場合も、その会社からライセンスを受けるという形もあります。

シリコンバレーのスピード、システムに合わせるサポート体制

伊田:スタートアップとの連携において、日本の事業部門の人たちの動かし方は苦労されるところだと思いますが、どうされてきましたか。

市川:日本の事業部門に対しては様々なことを繰り返し行ってきました。トップダウン、ボトムアップ、お金を付けるなど思いつくことはすべてしてきました。今では、新規事業計画のプロセスに、外部のリソースを使ってどう自分たちのビジネスにバリューを持たせるかを考えることを入れています。こうすることで考えざるを得ない状況にあえてしています。

 日本側のキャッチャーで難しいのは、スケジューリングです。アメリカで商材、起業家をVCに紹介してもらうのは唐突です。スピードを求められるので、明日会ってくれ、1週間で判断してくれというのが少なくありません。そうすると日本側には時間がなく、対応できずに新事業の機会が流れてしまいます。ですから我々の会社では、各部門の予算にはじめからスタートアップを検討するお金を入れています。人を割り当てるのは簡単ではありませんが、それ以外の部分で、我々の部門で事業部がすぐに行動できるような体制づくりはサポートしています。そのように頼ってもらえるようなことの積み重ねが大切だと思います。

足立:パナソニックには多くの事業部があるのですが、以前はスタートアップの情報を全事業部に同じように伝えていました。しかし、すでにスタートアップと協業している事業部から、スタートアップって何?という事業部まで様々でした。ですからやはり相手に合わせて丁寧に伝えることが必要で、個別に情報の伝え方を変えるようにしました。

 スタートアップとの協業経験がまったくない部門に対しては、まず事業開発の仕方から入ります。ビジネスモデルを一緒につくり、足りない部分を見つけて、それができる外部リソースを探します。

市川:それは我々の会社も同じです。スタートアップとの協業は最初の1件目が重要なのですが、他の部署ではこうやって生かせているという事例が影響を与えます。

伊田:最初の取っ掛かりが重要であるのは分かりますが、その取っ掛かりになるキーパーソンはどのように見つけますか。

市川:それはなかなか難しい問題なのです。アメリカへ送る駐在員に求められることは、一人で行動ができ営業ができて…と挙げると切りがありません。しかし、一番重要なのは、会社をきちんと説明できるかということです。英語力よりも会社を横断的に知っていることが求められます。ですから逆に海外赴任経験者を事業部に取り込むこともあります。

 シリコンバレーへ行きたいと手を挙げる社員がいると、まず海外研修に1年間行ってもらい仕事、生活を体験してもらいます。仕事は向いていても生活が向いていないなどやはりあります。現在は我々の部門で1年間預かって、日本側のキャッチャーをやらせています。そうするとアメリカ側のポイント、悩みを理解しているのでうまくいきます。

足立:パナソニックはグローバルで26万人ほどいるので、ほとんどの社員を知らないのですが(笑)私は半導体通信を開発していたので、通信で新しいことをやろうとしている人の多くは元々知っていました。アメリカ駐在時代には、協業をやりたい人がよく訪れていたのでだいたい繋がりがありました。協業を行う資質については、オープンマインドかどうかで見ていますね。

伊田:社内で、スタートアップとの取り組みを広めていかないといけないと思いますが、どのようにされていますか。

市川:方法はいくつかあると思います。我々の会社では1年に一度、本部長も含め全部門にヒアリングをします。こんなことやりたいといった話を、具体的に事業開発の分野に落とし込んで、それに対してアメリカ側が合った商材を見つけます。こちらから、アメリカのスタートアップを使ってこんなことができると事業部に提案します。それからスタートするのが現実なので、アピールすることが非常に重要です。どっかの部署の誰かがアメリカに行っているよということで終わらせずに、いかにして全社ごと巻き込むかというのが大切です。

伊田:新規事業開発においてKPIの設定は難しいと思いますが、工夫していることはありますか。

市川:年間4件の事業化を目標にしています。アメリカ側は4件の契約に対して、事業部にどれだけ情報を伝えるかを決めています。半年前に50件ぐらいを用意することが必要なのですが。これが唯一の指標になっています。

 我々の場合はリセラーなので、最終的に売れて幾らになったかは計算しています。しかし計画段階で市場規模、販売見込みも設定したいのですが、現実的には難しいです。スタートアップとリセラーとして契約する場合、我々は日本で初めてリセラーになることが多いので、スタートアップ側からはVCにコミットしている日本市場すべての数字を求められます。それは我々の目標の50倍ぐらいなことが多く、ほぼ達成できません。彼らも目標達成は難しいと考えているのですが、それぐらいの意気込み、体制、お金を付けてくれるのかを評価してきます。

足立:既存の商品に新技術を組み込むモノは既存の事業計画がありますが、新規事業だと、やるのであれば売上げ100億円以上は必要というのはあります。これはどこの会社でも同じだと思いますが、100億円以下の売上げは分類としてその他に含められて経営にインパクトを与えられないからです。

既存領域でないからこそオープンイノベーションに意味がある

伊田:既存領域に近い事業はともかく、飛び地でまったく知見のない新規事業をスタートさせる場合、どのように社内を説得していますか。

市川:既存事業でないからこそ海外から取り入れることに意味があります。新規事業を社内で開発していたら、小さなモノでも数億円はかかります。外部から持ってくるにはそれほどかからないですし、ある程度製品ができあがっています。トライアルの実行判断としてこちらの方が簡単です。ですから研究開発費のうちの数パーセントは、モノを探す費用に回すように活動してきました。

足立:新規事業が、経営層に飛び地の領域だと思われたら絶対にダメです。飛び地だけど、飛び地のように思われないプランをつくることが重要です。例えば今、電子部品を売っているものをサービスビジネスにしようとしていますが、いきなりサービスを始めるようとすると社内説得は難しいです。時代でビジネスモデルが変わる中で、売るものが製品からサービスに変わっていくというプランを立てています。

伊田:お二人ともアメリカ側のピッチャー、日本側のキャッチャーを経験しています。両方を経験したからこその日本企業へのアドバイスはありますか。

市川:私が意識しているのは、この活動を終わらせないことです。1、2年では分かりません。数年続けないと最初の成功も得られませんし、10年は続けないと本当の意味での失敗も分かりません。CVCが流行っていますが、来年ぐらいには結果が出ないなら辞めてしまえという意見も出てくると思います。

 私の会社は親会社があるので数年に1回は経営陣が代わります。そうすると毎回、ゼロから説明しなくてはならず、大げさにでも事業の必要性をアピールしなくてはいけません。新しい役員が理解できなかったら終わりなので、いかに事業を続けられるような体制をつくるかが重要です。

足立:気をつけなくてはいけないのは、多くの場合、活動費は日本側が出していると思います。そうすると日本側がアメリカ側を管理、指導しようとしがちです。駐在経験のある日本側の人が一番危なく、彼らの過去の経験からのアドバイスはあまり意味がありません。日本はベイエリアから数年遅れているうえ、駐在時から時間が経っていると、相当古いアドバイスになってしまいます。アメリカ側を放っておいて、日本側は日本側でやるべきことをやるということを徹底しないとうまくいかないと思います。

※(4/06訂正)本文中、事実に即していない記述があり、一部修正させていただきました。

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