超高齢化社会のイノベーションにグローバルで取り組んでいる組織がある。世界22ヶ所に70の拠点を持つ、Aging2.0だ。世界各地のエイジングテックの成功事例を持ち寄り、各国でOptimize(最適化)を図っている。Aging2.0では、世界のエイジングテックのトレンド、日本の可能性と課題についてどう見ているのか。Co-founder Stephen Johnston氏にインタビューした。

Stephen Johnston
Aging2.0
Co-founder
ケンブリッジ大学卒業。ハーバードビジネススクールにてMBAを取得。複数の企業を経て、2003年、Nokiaのシニアマネージャーを務める。2011年にAging2.0を共同創業。現在、Aging2.0と並行してファンドの共同創業やアドバイザーを務める。

エイジングは数百兆円規模の巨大産業

―はじめにAging2.0の活動とミッションについて教えてもらえますか。

 Aging2.0のミッションは、高齢化や高齢者介護におけるイノベーションを手助けすることです。現在、世界22ヶ所に70の拠点を設けて投資家、スタートアップ、大企業、研究者をネットワーキングし、高齢者の生活を向上させる新たなサービスを開発しています。

―インキュベーターとは少し違う役割なのですか?

 そうですね。私たちはスタートアップ投資をしているわけではないので、一般的なインキュベーターとは少し違います。私たちはメディア活動やイベント、ソーシャルムーブメントを通してスタートアップをサポートしているのです。

―エイジング産業の市場規模はどれくらいでしょうか。

 定義によりますが、数百兆円の市場規模があると考えています。基本的には50種類以上の経済活動とテクノロジー活動の全てを足し合わせた大規模なものです。

Aging2.0 OPTIMIZE 2017 Recap Video (YouTube)より

―エイジング産業にはどのようなカテゴリーが含まれますか。

 エイジング産業には多くのビジネスカテゴリーが含まれます。金融サービス、交通機関、住宅関係、ヘルスケアなどです。エイジング産業はカテゴリーとして考えるよりも、ビジネスプロブレムやチャレンジとして考えると良いかもしれません。

 私たちの活動には「Grand Challenges」というものがあります。私たちはエイジングインダストリーを複数のチャレンジに分けています。昨年は介護やアルツハイマーなどに関わるBrain Healthに注目していました。今年はコミュニケーションや投薬管理などのCare Coordination、コミュニティ形成や孤立化問題といったEngagement & Purposeにフォーカスしようとしています。 

―「Grand Challenges」には多くのスタートアップが参画しています。特にどんなスタートアップに注目していますか。

 例えば、True Link Financialというスタートアップがあります。彼らは高齢者向けの金融詐欺にあわないためのサービスを提供しています。

 Active Protectiveというウェアラブルエアバッグのスタートアップもあります。どういう風に使うかというと、転んだ時に腰を打つと、腰の骨が折れることがあります。そこで転倒時にエアバッグが作動することで安全を保ちます。

 Seniorlyというシニア向け住宅探しをサポートするスタートアップもあります。ほかにもこの領域では多くの有望なスタートアップが生まれています。

高齢者向けの「新しい何か」はうまくいかない

―エイジングテックで急成長しているスタートアップは決して多くはありません。エイジングテックを成功させるためのポイントはありますか。

 隣接したテクノロジー(Adjacent Technologies)の活用です。これは、すでに他の領域で利用されているテクノロジーをエイジング産業に転用するということです。

 例えば、ウェアラブルなどが良い例です。介護プロダクトとして快適に使用できるウェアラブルや、要介護者の動きをトラックできるデバイスが出てきています。これらは従来のウェアラブルテクノロジーの応用です。ウェアラブル以外にも、スマートホームや自動運転車などもエイジング領域に応用できるテクノロジーですね。

 今の段階では、高齢者向けに新しく何かを開発してもあまりうまくいきません。すでに他の産業・業種で確立されているテクノロジーをエイジング産業で効率的に活用していくことがポイントです。

Aging2.0カンファレンス「OPTIMIZE 2018」

世界中のアイデア・成功体験をシェアしよう

―少し視点を変えます。米国でも高齢化が進んでいますが、何が課題になっていますか。

 米国は移民によって若い人がたくさんいますから、高齢化の進行は比較的に遅くなります。ですが、米国ではセーフティネットの少なさ、脆弱性が問題です。

 米国が抱える問題は二つです。ひとつは、国土が広いために起こる人々の孤立化です。家族が遠方にいるため、高齢者に直接会うことができません。もう一つは介護産業の脆弱性です。介護産業は崩壊していると言っていい状況です。米国の破産者の3分の1は医療費を払えなかった人たちによるものです。これらの点は解決しなくてはいけません。

―日本は非常に速いスピードで高齢化が進んでいますが、現状をどう見ていますか。

 日本で大きな課題となるのは、介護者の不足です。2025年までに40万人の介護者が必要とされていますが、その介護者を確保する見込みはまだ立っていません。私たちは介護業務の効率化と介護者不足の解消について考える手助けをしています。

 解決策においては、日本と海外では多くの文化的違いがありますね。例えば、日本は海外に比べ、ロボットへなじみがあるようです。ですから介護において、移民を受け入れるのが難しいならば、ロボットなど新しいテクノロジーを利用する方が良いかもしれません。

 企業は多くのパイロット(実験)をすべきです。なぜならパイロットがなければ、何が成功し、何が失敗するかを学べないからです。皆、失敗を恥ずべきことと思っているかもしれませんが、スタートアップは常に失敗する準備ができています。私たちもスタートアップのマインドセットを持つべきでしょう。

 そしてもっとも必要なのは、解決のヒントとなるアイデア、経験をシェアし、多くの人たちと話し合うことです。自分たちの中だけでアイデアや経験を抱え込んではいけません。高齢化社会は世界の課題ですから、世界中にシェアすべきです。

 人口統計を見ると、高齢化社会の問題が大きく顕在化してくるのは、10年後と見ています。これから高齢化は社会のあらゆる面で影響を与えます。情報をオープンにして、みなで解決に取り組んでいきましょう。

エイジングテック特集 目次

#1 超高齢化社会のイノベーション「エイジングテック」

#2 【SOMPO】テクノロジーで高齢化社会の課題解決に挑む

#3 僻地医療からシリコンバレーへ。日本の「本当の問題」を話そう

#4 世界中のイノベーションを持ち寄る、グローバルネットワーク「Aging2.0」

#5 【日本企業】なぜ大企業はエイジングテックに取り組むのか?

#6 スタンフォード教授が語る「睡眠テクノロジーの真実」

#7 法的書類からSNSまで。終活をサポートするCake

#8 自動運転車が食料品を配達してくれるAutoX

#9 ガソリンスタンドが家にやってくるBooster Fuels

#10 【スタートアップマップ】注目のエイジングテック一挙紹介



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