オンラインゲームの開発には、マルチプラットフォームでのプレイサポートやマッチメイク、アチーブメント、アイテム、コミュニティなど、さまざまなバックエンドシステムが必要となり、ゲームタイトルの構築は非常に複雑になっている。米シアトルに拠点を置くAccelByteは、ゲーム開発者向けのバックエンドサービスプラットフォームを提供する企業だ。フォートナイトの開発元としても有名なEpic Gamesでバックエンド開発チームを率いていた経験などがあり、同社を共同創業したCEOのJunaili Lie氏に、創業の経緯や事業の特色などについて聞いた。

Epic Gamesのバックエンド開発チームのリーダーが創業

――AccelByteを創業するまでの経緯を教えてください。

 私はゲーム業界で15年以上の経験があります。ゲーム業界での最初の仕事はElectronic Artsで、スポーツ・プロジェクトに携わった後、オンライン配信を担当するようになりました。その後は、スター・ウォーズで有名なLucasArtsに行きました。DisneyによるLucasArtsの買収後はEpic Gamesに移り、バックエンドのインフラ構築を手がけました。

 AccelByteを創業した理由は、ゲームのバックエンド構築において、簡単に解決できない課題を常に抱えていたからです。多くのゲームスタジオが、オンライン対戦のライブサービスに移行しており、バックエンドインフラはますます重要になっています。解決する価値のある課題だと思い、起業に至りました。

Junaili Lie
AccelByte
Co-Founder & CEO
Electronic Artsでリードソフトウェアエンジニアやリードテクニカルアーキテクト(2006年〜2010年)、LucasArtsでオンラインゲームのテクニカルディレクター(2011年〜2013年)、Epic Gamesでオンラインテクノロジーのディレクター(2013年〜2016年)などを務め、オンラインゲームのバックエンドテクノロジーの分野で活躍。2016年にAccelByteを共同創業してCEOに就く。

――AccelByteのプロダクトの特徴や収益モデルを教えてください。

 私たちのプロダクトは、ゲームスタジオがオンラインのライブサービスゲームを作るためのバックエンドプラットフォームです。通常、ゲームスタジオは、自社でゲームエンジンを構築するか、UnityやUnreal Engineなどの商用ゲームエンジンを選択します。大規模なゲームスタジオでは、自社開発のソリューションを採用することが圧倒的に多いです。しかし、独自開発は負担が大きいです。そこで私たちの技術をソリューションとして提供しています。

 AccelByteのテクノロジーは、機能セットの量という点でより包括的です。例えば、クロスプラットフォーム対応やロビーでのマッチメイキング、ゲーム内のコインを使ったコマース、各種配信システムへの接続、モバイルプラットフォームが挙げられます。これに加えて、エンジニアによるプロフェッショナルサービスも提供しています。当社の顧客であるゲームスタジオはより成長し、大規模にスケールしていく傾向があります。私たちのプラットフォームは、顧客のニーズに合わせて拡張したり、カスタマイズしたりすることができます。

 私たちの戦略は、プラットフォームを通してゲームスタジオの迅速な開発を支えるものです。当社の収益は、プラットフォームの利用料と、プロフェッショナルサービスの利用料になります。また、ゲームが出荷された後は、プレイヤーの数とプレイの時間も換算されます。より多くのプレイヤーが長時間プレイし、私たちのプラットフォームが利用されればされるほど収益は高まります。プロフェッショナルサービスでは、開発費の収入があります。

Image: AccelByte

開発中のタイトルが年内に続々リリース予定 収益や顧客基盤の拡大を目指す

――ビジネスの状況はいかがでしょうか。この分野に競合はいるのでしょうか。

 現在の顧客は40〜50のゲームスタジオで、数タイトルは既にローンチしていますが、多くのゲームタイトルは開発中です。今年中にその多くがリリースされる予定で、彼らの成功を願って協力しています。今年、来年以降に当社の大きな収益となる見込みです。現在、開発力を大幅に拡大するため、より積極的に資金調達をしている段階です。

 当社の主な競合は、ゲームスタジオ自身です。彼らは自分達でバックエンドを構築しようとしています。MicrosoftやAWSが買収したゲームのバックエンド向けデベロッパーもありますが、彼らは小規模なゲームにフォーカスしていますので、当社とはターゲットが異なります。当社の技術は十分にスケーラブルで、大規模なゲームにも十分に機能します。

――今後12カ月で達成したい目標はありますか。

 創業から6年近くたち、現在取り組んでいるゲームタイトルの多くは今後1年以内に発売されます。まずはそこに集中したいです。そして、顧客の数を2倍、3倍に増やしていきたいと考えています。生産性向上のためのツールとして、ゲームのディストリビューションやクラッシュキャプチャ、パフォーマンス監視ツールである「BlackBox」を提供しています。このツールの顧客ベースも増やしていきたいです。同様に、チームメンバーも増やしていき、さまざまな機能を開発して顧客に貢献したいと考えています。

 現在、チームメンバーは375名います。シアトルと私の地元のバンクーバーのほか、中国やフィリピン、インドネシア、イギリス、スウェーデン、ドイツなど、世界中のメンバーと共に仕事をしています。インドネシアにはオフィスを構えています。私はインドネシアで生まれ育ったので、インドネシアの人々とぜひ一緒に仕事に取り組みたいと考えていました。

Image:AccelByte

――日本企業の顧客やパートナーはいますか。

 Sony Interactive Entertainment、SoftBank Vision Fund 2から投資を受けています。クライアントの面では、日本の大きな企業とも今いろいろ話し合っていますが、まだ公表できる段階ではありません。

 日本市場への参入について熱望しており、非常にわくわくしています。私は任天堂やプレイステーションのゲームで育ちました。マリオやドンキーコングからファイナルファンタジーなど、あらゆるゲームをプレイしました。日本のゲームスタジオはとても素晴らしいゲームを作るので、当社もそれを支えたいです。

 私たちはゲーム開発の初期段階から共に取り組みます。日本のゲームスタジオに対しても同様のアプローチをとりたいと思っています。そのためには、日本の顧客をサポートするために新たに技術者を採用するなど、日本のローカルなニーズに対応する必要があります。ヨーロッパにもチームがいるのは、顧客の近くでサポートしたいからです。

「顧客の成功が自社の成功」という想いを胸に、技術を磨く

――AccelByteの長期ビジョンについてお聞かせいただけますか。

 より多くのゲームスタジオを支援し、より多くの機能を追加するために、成長し続けたいと思っています。AccelByteは、「お客さまが成功したときに、自分たちも成功したい」という理念のもとに設立しました。私たちの仕事はすべて、どうしたらお客さまの成功に貢献できるか、という考えに基づいています。

 現在、40~50のゲームスタジオの顧客がおりますが、外部のパートナーと協力して、特定の機能を提供することも想定しています。ゲームスタジオが互いに協力し合って、それを促進できるような場を作っていきたいのです。自分たちの技術だけでなく、いろいろなスタジオがそれぞれの技術を提供し、活用するための基盤やパイプラインを作り、協力し合えるような取り組みにつなげていきたいです。

――Web3という新しい分野についてはどうお考えですか。

 私たちが取り組むことはすべて、顧客に貢献するものでなければなりません。顧客がWeb3ゲームで成功したいなら、当社はそれを支援し、機能を追加していきます。現在、数名のスタッフがプロトタイプのPoCに取り組んでおり、3つの機能を追加しようと考えています。また、パートナーとも議論をして、顧客にどのような貢献ができるかを考えています。ゲームをより良くする、収益を増やす、長く遊んでもらうということが私たちの行動の指針です



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