優れた製品を持つ消費者向け企業(DTCブランド等)は世界中に無数に存在する。しかし、その製品を世界最大規模のグローバル市場である米国で本格的な「ブランド」へと成長させるには、単に出品するだけではない高い壁が立ちはだかっている。Amazonへの出品やShopifyでのECストア開設にとどまらず、大量の広告クリエイティブ制作、複雑なユーザー獲得運用、CS、在庫予測まで、スケールに必要な運用コストとハードルは非常に大きい。
この課題をAIエージェント群と独自のデータモデルで解決しようとしているのが、イスラエル発のスタートアップ)ZyG(ジグ)だ。同社を率いるのは、かつてモバイルゲーム開発者向けインフラを手がけ、アプリ収益化企業として米国で大型上場を果たしたironSource*の共同創業者、オメル・カプラン(Omer Kaplan)氏である。同氏に、ゲーム業界で培ったデータモデルの応用、ビッグテックとの差別化、そして日本企業が世界で勝つためのアプローチを聞いた。
*2022年に米国のソフトウエア会社ユ二ティ・ソフトウエア(Unity Software)が買収目次
・「ストアはあるが顧客は来ない」問題
・ゲーム業界の当たり前をeコマースに
・汎用AIには真似できない「圧倒的モート」
・22歳での「苦い原体験」と読者へのメッセージ
「ストアはあるが顧客は来ない」問題
―ZyGはどのような製品を提供しているのですか。
世界には優れた製品を持つDTC(Direct-to-Consumer)企業が溢れていますが、米国などの巨大市場でブランド化させるのは至難の業です。
今日、Amazonに出品して商品を売ることはできても、それでは「ブランド」は構築できません。Shopifyでストアを作ることもできますが、それは単に店舗を構えただけであり、自動的に人が集まってくるわけではないのです。
私たちはもともと、モバイルゲーム開発者向けにパブリッシングや成長インフラを提供する ironSourceを創業し、米国で110億ドル規模の大型上場を果たした後、ゲームエンジンのUnityへ統合させました。ironSourceの成功要因は、ゲーム開発者がゲーム開発に専念できるよう、広告・ゲーム内経済・データ分析・リテンションといったスケールに必要なインフラを「丸ごと」構築して代行した点にあります。
現在、私たちがZyGで挑戦しているのも全く同じ構造です。
【対比:これまでのEC展開 / ZyGがもたらすこれからのEC展開】
- これまでのEC展開: AmazonやShopifyにストアを開設しても客は集まらず、巨大な運用チームや複数の外部代理店を自前で抱え込む必要があった。
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これからのEC展開(ZyG):
ストア自動構築から月間数百本の広告クリエイティブ生成、運用、CSまで、数十〜数百のAIエージェント群が一気通貫で代行・最適化する。
ゲーム業界の当たり前をeコマースに
―モバイルゲーム業界で培ったノウハウは、具体的にどうECの成長に応用されるのでしょうか?
決定的なのが「LTV(顧客生涯価値)の予測モデル」です。
モバイルゲームでは、Metaなどで1人当たり10ドルの広告費を払ってユーザーを獲得しても、初日には利益が出ません。ユーザーがゲームをプレイし続け、課金することで徐々に回収していくため、獲得初日の段階で「そのユーザーが将来いくら落としてくれるか(LTV)」を精密に予測するアルゴリズムが不可欠でした。
ウェルネスや美容、サプリメント領域などを筆頭に、今のDTC業界もこれと全く同じ構造です。例えば、100ドルの広告費をかけてアンチエイジング美容液を購入してもらっても、初月に手に入るのは初回購入代金の60ドルだけかもしれません。ここから何回リピートや定期購入(サブスク)をしてくれるかを正確に予測できなければ、Metaなどの高騰する広告市場で巨額の資金をドブに捨てることになります。
モバイルゲーム業界では誰もが当たり前にやっているこの「精密なLTV予測モデル」を、eコマース領域に移植して実用化しているのが私たちの強力な強みです。
ZyGを構成する主なAIエージェント群とその役割
- ストア構築・ブランド展開エージェント: 自社のデジタル資産を取り込み、購買率を最適化したECストアを自動生成。
- AIクリエイティブ大量生成エージェント: 米国市場で勝ち抜くために必要な、毎月何百本もの広告用クリエイティブを自動生成。
- 自律型ユーザー獲得・運用エージェント: 入札調整やMeta等の広告運用を全自動化し、広告費の無駄を徹底排除。
- リテンション&カスタマーサポートエージェント: 物理的な商品のCS対応やメール/SMSマーケティングを自動化し、顧客離脱を防ぐ。
Image : ZyG HP
汎用AIには真似できない「圧倒的モート」
―Metaなどの巨大プラットフォームが類似機能を提供したり、ClaudeやGemini、ChatGPTのような汎用AIが進化する中で、ZyGのモート(堀)、いわゆる差別化要因はどこにありますか?
非常に重要かつ本質的な質問です!「なぜ個別ツールではなくZyGなのか?」という問いですね。
私たちは、「次の1兆ドル企業(Trillion-dollar company)になれるのは、極めて大きな問題を解決し、その内部にある無数の小さな問題を接続して一元提供できる企業だけだ」と確信しています。
「AIでクリエイティブを作ります」「AIでCS対応を自動化します」といった単体のツールを提供する企業は、今後ClaudeやMeta、Google自体の機能進化によって淘汰されていくでしょう。
対して私たちは、「ブランドのスケールにおける問題をAからZまで丸ごと解く」アプローチを取っています。強力なAI技術(ソフトウエア)の上に、結果をコミットする「サービス」を統合して提供する。Sequoia CapitalなどのトップVCも提唱している通り、この「ソフトウエア+サービスによる課題の完結」こそが、現在のテック業界で最も価値のあるアプローチなのです。
Image : ZyG HP
22歳での「苦い原体験」と読者へのメッセージ
―日本の企業やプロダクトに対する期待、そして協業の可能性についてお聞かせください。
私には日本市場に関する忘れられない原体験があります。
22歳の頃、サンフランシスコでアパレルブランドを経営していた私は、大手日本ディストリビューターと出会い、日本への輸出が決まりました。しかし、米国では「非常に高品質」とされていた製品が、品質基準の極めて高い日本市場では認められず、製造したすべての商品が返品されてしまったのです。
この経験から、私は日本市場と日本企業のプロフェッショナリズムに対して絶大なリスペクトを抱いています。だからこそ、自らのプラットフォームが完璧な状態(GA)に達したタイミングで、日本の優れたDTC企業とタッグを組み、米国進出の架け橋になりたいと考えています。
私たちは、商品のポテンシャルをデータ分析に基づいて事前判定する独自指標「ZyG Score(ジグ・スコア)」を提供しています。日本のスタートアップや企業が「ZyG Scoreで高評価を得て、自信を持って全米へ進出していく」……そんな世界を絶対に作って見せます。
日本企業の皆さまへ
日本国内で素晴らしいコンシューマー製品(ウェルネス、美容、サプリ、日用品等)を展開しており、「米国市場でも挑戦したいが、現地でのスケール方法やチーム構築に悩んでいる」という企業があれば、ぜひ私たちに声をかけてください。あなたの製品が持つ真のグローバルポテンシャルを、ZyGのAIテクノロジーで解き明かしましょう。