今回は、コロナ禍の2020年4月に資金調達を果たした米国スタートアップを新たに4社紹介する。リワードアプリ、ネットワーキングアナリティクスプラットフォーム、クラウドのバグ報奨金プログラム、データアクセスプラットフォームの事業を推進する米国スタートアップ 4社のCEOに、事業詳細と今後の展望について聞いた。

2020年4月に資金調達した、今ホットな米国スタートアップ Part 1では、教育プログラミングロボット、Amazonの中小ブランド買収、飲食店舗管理プラットフォーム、アスリートチーム強化ソフトウェア、自動運転ソフトウェアの5社を紹介しています。

人工直観で優良顧客や優秀社員との関係作りを支えるNode



 Nodeは、AIによって、優良顧客との関係を継続、優秀な社員の定着を手助けするネットワーキングアナリティクスプラットフォーム

 19歳でGoogleの最年少社員だったFounder & CEOのFalon Fatemi氏は、「人の潜在的なパーソナリティや求めている機会を理解し、人、企業、製品、場所、物事を大きく変えてしまうような出来事が起こるのを根本的に予測する、Artificial Intuition(人工直観)というテクノロジーのアイデアから創業に至りました」と語る。

Falon Fatemi
Node
Founder & CEO
2007年にサンタクララ大学を卒業。2005年にGoogleに最年少の19歳で入社し、国際展開業務に従事。その後、2011年から2年間YouTubeのビジネスディベロップメント・パートナーシップ業務を担当。2011年からFirespotter LabsのHead of Business Developmentを務める。2015年にNodeを設立、CEOに就任。
 
 Nodeは、ビジネスに大きな影響を与えるおそれのある、優良顧客が離れそうになったり優秀社員が離職しそうになるリスクを早期に察知する。業績への大きな貢献につながりそうなクライアントも予測し、その予測に基づいて、セールス展開に向けたワークフローやトリガーも作り出せるようにする。Nodeのソリューションはヒューリスティックを基礎とした方法と比べ最大80%の精度でこれらを識別するという。

 日本企業との関係では、リクルート、MS&ADホールディングスがNodeに出資している。当面の目標は、Nodeの市場を開拓していくことだという。「当社のソリューションは、業界を超えて効果を発揮します」とFatemi氏は語る。

資金調達額:5080万USドル(2020年5月現在)
4月の資金調達額:600万USドル
4月の資金調達先:Canaan Partners, Galaxy Ventures, GingerBread Capital, etc.
所在地:San Francisco, California
URL:https://hello.node.io/

「バグ報奨金」でクラウドセキュリティを担うBugcrowd



 Bugcrowdクラウドの脆弱性を発見するセキュリティプラットフォーム。「バグ報奨金プログラム」を効果的に運営し、企業とホワイトハッカーをつなぐ役割だ。

 生来のハッカーだったというFounder, CTO & ChairmanのCasey Ellis氏は、「GoogleやFacebookが行っていた脆弱性に報奨金を出すプログラムを見て、これは面白いと思ったのが創業のきっかけですが、私達は何かそれ以上のことを生み出そうとしました。Bugcrowdはハッカー行為を思いとどまらせるものです」と語る。

Casey Ellis
Bugcrowd
Founder, CTO & Chairman
2006年より約5年間、Vectra Corporationにて情報セキュリティスペシャリスト・アカウントマネージャーを務める。その後、White Label Securityという情報セキュリティ会社を設立。2012年よりScriptRockのCSOを務め、2012年にBugcrowdを設立、同時にCEOに就任。2017年より同社のChairman & CTOを務める。
 
 「Bugcrowdの事業のうち、バグ報奨金は氷山の一角であり、事業の80%は侵入テスト」とEllis氏は語る。侵入テストは非公開で限定的に実施される。シリコンバレーのテック企業を対象に始まり、現在では65業種・29か国にまで広がった。20万人の侵入テスター兼バグ発見者のネットワークを抱える。

 日本市場についても、「日本のテクノロジーにもアクティブなハッキングコミュニティがあります。彼らは悪質なハッカーではなく、信用できます。日本においてもパートナーシップの機会を模索しています」と関心を示す。

 コロナパンデミックの影響でリモートワークが広がり、クラウド活用が一層上向いている。そうしたなか、当面の目標は、「デジタル錠前屋のような存在」として認知を高めていく、という。

資金調達額:8167万USドル(2020年5月現在)
4月の資金調達額:300万USドル
4月の資金調達先:Rally Ventures
所在地:San Francisco, California
URL:https://www.bugcrowd.com/

ライドシェアを通じて飲食店の集客をするFreebird



 Freebirdは、UberやLyftのようなライドシェアを通じて飲食店に客を呼び込むアプリ。2017年6月にロサンゼルスで稼働開始して以来、利用者300万人を達成した。

 Co-founder & CEOのKurt Bredlinger氏は、「UberやLyftを無料で利用できる方法がないかと考えていたところ、ライドシェアで外食に出かけると飲食した店でキャッシュバックが来る、というシステムを思い立ち、創業に至りました」と語る。

Kurt Brendlinger
Freebird
Co-founder & CEO
UCLA、Motion Picture & Television学科を卒業。その後、長らく、テレビ業界でプロダクション業務に従事。1997年にAFA Management Partnersというヘッジファンドを共同設立。その後、2002年より2年間、RainmakersのCEOを務める。2004年より12年間、Santa Monica Capitalのパートナーを務め、2016年にFreebirdを共同設立、CEOに就任。
 
 FreebirdアプリはUberやLyftのアプリと連携しており、Freebirdアプリを通してライドシェアを頼むとポイントが貯まる。またFreebirdと提携の店へ行けば、その店からキャッシュバックされる仕組みだ。Freebirdアプリは、Bredlinger氏が「リンクカードシステム」と呼ぶ技術により、客のアカウントにキャッシュバックする。

 Freebirdの経済的インパクトは飲食店の集客効果だけにとどまらない。飲みに出かけた客が帰宅時にライドシェアを利用することで飲酒運転をするリスクがなくなり、客が安全に帰宅できることになる。飲酒運転事故やそれによる経済損失を減らす効果まで示している。

 国際展開については、「ライドシェアが浸透している国・地域ならばどこにでも関心があります」とBredlinger氏は語る。

 当面の目標はコロナパンデミックのなかで生き残っていくことで、大打撃を受けた飲食店に客足が戻る流れを作っていくという。
資金調達額:2876万USドル(2020年5月現在)
4月の資金調達額:500万USドル
4月の資金調達先:非公開
所在地:Calabasas, California
URL:https://www.freebirdrides.com/

データレイクを安全にし、データサイエンティストらの潜在力を解放するOkera



 Okeraは、クラウド技術においてデータを流入・蓄積させるデータレイクの安全な活用を可能にする

 CEOのNick Halsey氏は、「近年、企業がデータレイクに投資してそこにデータを流入させていますが、安全に活用することへの課題があります。データユーザー数の伸びにつれて増大するデータを安全に流入するのに時間がかかるようになり、動きが遅延しているのです。データ規制にはGDPRなどがありますが、ユーザーはその仕組みがどうなっているのか察しがつきません。当社はそれを可視化します」と語る。

Nick Halsey
Okera
CEO
Stanford大学卒業。卒業後、Appleやソフトウェア企業に勤める。1999年からSearchbuttonのPresident & CEOを約2年務めた後、Biz360というソーシャルメディア分析プラットフォーム会社を共同設立。その後、いくつものシリコンバレー企業でVPやCMOを歴任。2020年にOkeraのCEOに就任。
 
 Okeraのプラットフォームは、可視化されたアクセスポリシーで、データレイクを自動で検査し、粒度の細かいアクセスを制御。これにより、データの湖を安全に泳げるようにし、データサイエンティストらの潜在的なイノベーションや成長のパワーを解放する。データレイク内のデータを分類しまとめるカタログを作り、該当データを発見しやすいようにしている。現在、Amazon Web Services、Microsoft Azureなどをサポートしている。

 Halsey氏は、「アジアの一部では、コロナによる打撃が比較的軽微で、経済再開している」ことでアジア進出にも関心を示す。日本進出するうえでは、「銀行、製薬、小売、政府研究機関のほか、データアナリティクスに投資する企業ならどこにでもパートナーシップを組むことに関心があります」と語る。

 当面の目標はセールス、マーケティング、カスタマーサクセスを強化し、大手SIとのパートナーシップを組み、最善のテクノロジー企業になることだという。

資金調達額:2960万USドル(2020年5月現在)
4月の資金調達額:1500万USドル
4月の資金調達先:Bessemer Venture Partners, ClearSky, Felicis Ventures
所在地:San Francisco, California
URL:https://www.okera.com/

2020年4月に資金調達した、今ホットな米国スタートアップ Part 1では、教育プログラミングロボット、Amazonの中小ブランド買収、飲食店舗管理プラットフォーム、アスリートチーム強化ソフトウェア、自動運転ソフトウェアの5社を紹介しています。



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