Image: Arctop
Arctopは脳神経の信号を解析し、エンターテイメントやセキュリティに役立つデジタル情報へと変換するソフトウェアプラットフォームだ。今回は、Co-founder & CEOのDan Furman氏に話を聞いた。

脳神経の信号伝達を分析、ユーザーの感情をデジタル化

―まずは御社の製品やテクノロジーについて教えてください。

 当社の製品は「Neuos」と言います。これは、神経を表すNeuralとオペレーションシステムのOSを合わせた造語です。Neuosは脳神経からの信号をデジタル情報へと変換する、リアルタイムソフトウェアプラットフォームです。ひと言でいうと当社の製品は、人間の脳のパターンを理解する優秀なAIシステムなのです。

 心臓の脈と同じように、脳も多くの電気信号を発信します。これは100年前から研究が進められている分野ですが、コンピューター技術が発展したことで、様々な信号処理を感知することができるようになりました。

Dan Furman
Arctop
Co-founder & CEO
2011年ハーバード大学卒業後、テクニオン-イスラエル工科大学で脳科学の研究に携わったのち、2016年にArctopを創業。CEOに就任し、現在に至る。

―それをどのようにしてサービスとして提供していくのでしょうか?

 Neuosで脳活動を記録することで、対象者が緊張しているかリラックスしているのか、あるいは退屈だと感じている、夢中になっている、といった感情を検知することができます。これを応用すれば、特定のコンテンツを閲覧しているときのユーザーの反応を知ることができます。映画や音楽、ゲームをプレイしたユーザーがどれだけ楽しんでいるのか、ということもわかります。

 たとえば、Netflixで新しい番組を作り、その視聴者にNeuosをつけてもらえば、どんなストーリーやキャラクターが人気なのか、ということがわかるので、その後のコンテンツ開発に非常に有用です。あとは、脳神経の活動を解析することで、指紋や虹彩に次ぐ、個人認証情報としても活用できます。

―具体的には、どのようにして脳の信号情報を収集しているのでしょうか?

 具体的には、ヘッドセットなどのデバイスを装着して、脳の電気信号をキャッチします。一例をあげるなら、マイクロソフトのホロレンズにセンサーを統合し、そのセンサーで脳が発信する信号をキャッチして情報収集します。頭に触れるセンサーさえ付けられれば、あらゆるデバイスに統合可能です。将来的にはさまざまなデバイスが登場するかと思いますので、色々なハードウェアに組み込んでいくのが楽しみですね。

ユニークな手法で脳活動の情報を抽出

―競合や、他社にはない強みを教えてください。

 スイスのMindMazeは優秀な企業です。もともとはセンサーを使って脳血管障害からのリハビリや回復状態の測定する医療系サービスだったのですが、最近はエンターテイメント業界にも参入してきました。

 他にも、いくつか競合と呼べる企業がありますが、当社の強みは、信号処理のフレームワークです。当社のラーニングシステムは他に類を見ない手法で、より多くの情報を抽出することができるのです。

 たとえば、100人に特定のコンテンツを見せ、そのリアクションを測定する実験を行うとします。通常では実験室を用意するなど、条件をそろえるのがとても大変ですが、当社の場合はソフトウェアを統合したデバイスを装着してもらい、あとは100名の被験者が好きな場所で好きなようにコンテンツを楽しんでくれればいいわけですから。非常に簡単でユニークな手法だと言えます。

―日本進出も検討されているのでしょうか?

 はい、日本にもオフィスをオープンしました。日本ではゲームや映画、テレビや広告キャンペーンなどが盛んで、エンターテイメントへの需要が大きいですね。また、日本のハードウェア産業はとてもイノベーディブで世界をけん引する存在です。VRシステムやヘッドフォンなど、とても充実しているので、良いパートナーがたくさんいますね。

―最後に、将来的な展望を教えてください。

 将来的にはサイバーセキュリティの分野にも進出していきたいですね。あとは、個人向けの健康問題のソリューションも提供していければ、と思っています。脳の信号を知れば、個人に関する幅広い情報を処理することができますから。



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