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夢物語に思えた「空飛ぶクルマ」の商用運航はそう遠くなさそうだ。業界をリードするVolocopterとJoby Aviationは2023年11月、ニューヨーク市の協力を得て、マンハッタンの摩天楼をバックにデモ飛行を実施。「ジョン・F・ケネディ国際空港とマンハッタンを7分間で結ぶ」という未来図もグッと現実味を帯びた一日となった。世界を見ると、2024年開催のパリオリンピックで大々的に商用運航が皮切りとなり、日本でも2025年に開催される大阪・関西万博での国内初の商用運航が計画されている。

ニューヨーク・マンハッタンの摩天楼を横目に飛行する「空飛ぶクルマ」(Joby Aviation提供)

空飛ぶクルマとは:
国土交通省の資料では、「電動化、自動化といった航空技術や垂直離着陸などの運航形態によって実現される、利用しやすく持続可能な次世代の空の移動手段」と定義される。日常的な移動手段として利用するイメージで「クルマ」と称しているが、航空法上の航空機に該当し、必ずしも道路を走行する機能を有しているわけではない。環境に優しく静音性にも優れている点、将来的にはパイロットなしでの自律飛行が可能な点、狭いスペースでも離発着ができる点などが特徴。

<目次>
空飛ぶクルマ、NY中心部でテスト飛行
空飛ぶクルマ、大阪の空も飛ぶ
TECHBLITZ編集部が選ぶ、空飛ぶクルマ関連のスタートアップ5選
 1. LYTE Aviation(英国)
 2. ASKA dba NFT(米国)
 3. XPENG AEROHT(中国)
 4. Autoflight(中国)
 5. Hybrid Air Vehicles(英国)

空飛ぶクルマ、NY中心部でテスト飛行

 ニューヨーク市のマンハッタン区南部に位置するヘリポートで2023年11月、ドイツのVolocopterと米国のJoby Aviationがデモ飛行を実施した。ニューヨークという世界的な大都市で「空飛ぶクルマ」が飛行を実現したことは、単なるパフォーマンス以上の意味がある。

 ニューヨーク市長は、マンハッタンに複数あるヘリポートの電動化を表明しており、デモ飛行はこれに合わせたイベント。「空飛ぶクルマ」の商用運航の鍵は、莫大な公的投資を勝ち取れるかにかかっており、ニューヨークのような大都市のコミットメントは電動垂直離着陸機(eVTOL)の開発メーカーにとって大きな追い風だ。

 Joby Aviationはかねて、「ニューヨークとロサンゼルスを皮切りに商用運航を展開する」と明言しており、まずはデルタ航空と提携して市街地と空港を結ぶルートを確立する予定。ニューヨークでは、車だと50分近くかかるマンハッタンのヘリポートからジョン・F・ケネディ国際空港までの行程を、わずか7分で結ぶ計画を掲げている。

空飛ぶクルマ、大阪の空も飛ぶ

 空飛ぶクルマは2025年に開催される大阪・関西万博の目玉として期待されている。来場者向けの遊覧飛行や二地点間運航での利用が想定されており、日本初の商用運航となる見通しだ。

 運航事業者には、JAL、ANAホールディングス(HD)、丸紅、国産メーカーのSkyDriveが選定されている。このうち、JALはVolocopterとタッグを組んで万博での運航を目指しており、2023年12月には大阪湾岸のヘリポートで試験機「2X」の実証飛行を行った。

 なお、ANAHDはJoby Aviation、丸紅はVertical Aerospace(英国)の機体を使う。

万博予定地である大阪港エリアの上空を飛行する「2X」(Volocopter提供)

TECHBLITZ編集部が選ぶ、空飛ぶクルマ関連のスタートアップ5選

 空飛ぶクルマの主流になると言われるeVTOLの開発競争は激しさを増しており、大量輸送に特化した製品や、個人ユーザーをターゲットにした製品など、独自の方向性に磨きをかけたスタートアップが目立つ。TECHBLITZ編集部が選ぶ、空飛ぶクルマ関連のスタートアップ5社はこちら!

1. LYTE Aviation

LYTE Aviation
常識破り、40人乗りの「空飛ぶバス」
設立年 2022年
所在地 英国・ロンドン
 LYTE Aviationは、大量輸送が可能な40人乗りのeVTOLを開発する。「SkyBus」と名付けた製品は名前の通り「空飛ぶバス」として、バスや電車といった公共交通機関をディスラプトすることを目指す。動力に水素と電気のハイブリッドを採用し、ヘリコプターよりも5倍の燃費性能、10倍の静音性を備えるという。
image: LYTE Aviation

2. ASKA dba NFT

ASKA dba NFT
eVTOLとeSTOLの機能備えた都市型機
設立年 2022年
所在地 米国カリフォルニア州 サンフランシスコ
 ASKA dba NFTは、日本人女性によって創業された、eVTOL (電動式垂直離着陸機) とeSTOL (電動式短距離離着陸機) の機能を備えた「空飛ぶクルマ」の開発メーカー。ドアツードアのeVTOLによる都市型モビリティの実現を計画しており、将来的には自律走行及び自律飛行を構想している。
image: ASKA dba NFT

3. XPENG AEROHT

XPENG AEROHT
中国EVのXPeng系「空飛ぶクルマ」メーカー
設立年 2013年
所在地 中国・広州市
 XPENG AEROHTは、都市型エアモビリティ向けeVTOLを開発。個人ユーザーをターゲットとしており、エアタクシー、観光、空飛ぶ救急車・パトカーとしての用途も想定する。中国の新興EVメーカー「御三家」の1社であるXPeng(小鵬汽車)の傘下。
image: XPENG AEROHT

4. Autoflight

Autoflight
中国発、低価格路線のエアタクシー向けeVTOL
設立年 2017年
所在地 中国・上海
 Autoflightは、低価格かつ高性能なエアタクシー向けeVTOL「Prosperity I」を開発。同製品は4人乗りで、1500kgの機体には8つの回転翼を搭載する。1回の充電での航続距離は250km、巡航速度は200km/hとなる予定。タクシーに劣らない安全性と価格の実現を目指す。
image: Autoflight

5. Hybrid Air Vehicles

Hybrid Air Vehicles
地球に優しい「次世代の」飛行機
設立年 2007年
所在地 英国・ベッドフォード
 Hybrid Air Vehiclesは、ヘリウムで浮力を得て運航する次世代の航空機を開発。ヘリウムが充満した機体 (飛行船型) と飛行機の翼、 ヘリコプターの推力偏向で飛行し、従来の飛行機に比べ、CO2の排出量を75%削減することができる。水素燃料電池を開発中で、2025年までに内燃エンジンからの切り替えを目指している。
image: Hybrid Air Vehicles



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