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夢物語に思えた「空飛ぶクルマ(eVTOL)」の商用運航はそう遠くなさそうだ。2024年以降、商用運航や技術開発に向けた動きが加速しており、主要企業や各国政府が積極的に取り組む姿勢を見せている。しかし、商用化までの道のりには依然として課題が残されており、規制整備やインフラ構築が重要なテーマとなっている。

ニューヨーク・マンハッタンの摩天楼を横目に飛行する「空飛ぶクルマ」(Joby Aviation提供)

空飛ぶクルマとは:
国土交通省の資料では、「電動化、自動化といった航空技術や垂直離着陸などの運航形態によって実現される、利用しやすく持続可能な次世代の空の移動手段」と定義される。日常的な移動手段として利用するイメージで「クルマ」と称しているが、航空法上の航空機に該当し、必ずしも道路を走行する機能を有しているわけではない。環境に優しく静音性にも優れている点、将来的にはパイロットなしでの自律飛行が可能な点、狭いスペースでも離発着ができる点などが特徴。

<目次>
商用運航開始への進展
主要企業の取り組み
大阪・関西万博とパリオリンピックでの計画  
TECHBLITZ編集部が選ぶ、空飛ぶクルマ関連のスタートアップ5選  

商用運航開始への進展

 eVTOLの商用運航は当初の予想より遅れているものの、具体的なタイムラインが明らかになってきた。

 ANAホールディングスは2027年度に商用運航を開始する計画を発表し、日本国内での実現に向けた準備を進めている。一方、アメリカのJoby Aviationは2025年後半から2026年初頭にかけて最初の旅客輸送試験を完了し、その後ドバイで商業運航を開始する予定。

 中国ではイーハン社が型式証明を取得し、すでに地方政府向けに機体納入を始めており、一部地域で遊覧飛行などの商業利用が進んでいる。

主要企業の取り組み

 空飛ぶクルマ市場を牽引する主要企業は、それぞれ独自の戦略で技術開発と認証取得を進めている。Joby AviationはFAA(米連邦航空局)の型式証明取得に向けた飛行試験を進める中で、トヨタ自動車から追加出資を受けるなど資金面でも強化されている。同社は米国防総省との協力で実証実験を成功させるなど、軍事・民間両面での活用可能性を示している。

 Volocopter(ボロコプター)は2024年2月にドイツ連邦航空局から製造認証を取得し、世界初となる設計認証と製造認証の両方を持つeVTOLメーカーとなった。同社はパリオリンピック期間中に試験飛行を実施し、安全性と技術力をアピール。しかし、同社は24年12月26日、ドイツ南西部カールスルーエの区裁判所に対して破産手続の開始を申請。今後は管財人の管理下で事業を続けながら、資金の確保を目指す方針だ。

   一方、中国企業ではXPENG AEROHTがモジュール式eVTOL「X3-F」の型式証明申請を行い、中国市場での拡大を目指している。

 各企業は実証実験を重ねながら商業化へ向けた準備段階に入っている。Joby Aviationは米国防総省との協力で軍事用途も含む実証実験に成功し、中国イーハン社は地方政府向け納入後、一部地域で遊覧飛行サービス提供へ移行中。またASKAやXPENG AEROHTなど新興企業も無人飛行試験や公道走行試験など多様な取り組みを進めている。

大阪・関西万博とパリオリンピックでの計画

 2025年開催予定の大阪・関西万博では当初商用運航が計画されていたが、安全性審査の遅れからデモ飛行中心へと変更された。ANAホールディングスや日本航空など複数の企業が参加し、それぞれ異なる機体でデモ飛行や展示を行う予定だが、日本航空と住友商事による展示は実寸大模型のみとなる可能性も指摘されている。

 一方、2024年パリオリンピックではVolocopterによる試験飛行がセーヌ川上空で実施された。商業営業ではなく無償試験として行われたこの取り組みは、都市部でのeVTOL運用可能性を示す重要なステップに。パリ市内では建物上空を避ける形でセーヌ川上空のみ飛行するなど、安全性への配慮も徹底されていた。

万博予定地である大阪港エリアの上空を飛行する「2X」(Volocopter提供)

TECHBLITZ編集部が選ぶ、空飛ぶクルマ関連のスタートアップ5選

 空飛ぶクルマの主流になると言われるeVTOLの開発競争は激しさを増しており、大量輸送に特化した製品や、個人ユーザーをターゲットにした製品など、独自の方向性に磨きをかけたスタートアップが目立つ。TECHBLITZ編集部が選ぶ、空飛ぶクルマ関連のスタートアップ5社はこちら!

1. LYTE Aviation

LYTE Aviation
常識破り、40人乗りの「空飛ぶバス」
設立年 2022年
所在地 英国・ロンドン
 LYTE Aviationは、大量輸送が可能な40人乗りのeVTOLを開発する。「SkyBus」と名付けた製品は名前の通り「空飛ぶバス」として、バスや電車といった公共交通機関をディスラプトすることを目指す。動力に水素と電気のハイブリッドを採用し、ヘリコプターよりも5倍の燃費性能、10倍の静音性を備えるという。
image: LYTE Aviation

2. ASKA dba NFT

ASKA dba NFT
eVTOLとeSTOLの機能備えた都市型機
設立年 2022年
所在地 米国カリフォルニア州 サンフランシスコ
 ASKA dba NFTは、日本人女性によって創業された、eVTOL (電動式垂直離着陸機) とeSTOL (電動式短距離離着陸機) の機能を備えた「空飛ぶクルマ」の開発メーカー。ドアツードアのeVTOLによる都市型モビリティの実現を計画しており、将来的には自律走行及び自律飛行を構想している。
image: ASKA dba NFT

3. XPENG AEROHT

XPENG AEROHT
中国EVのXPeng系「空飛ぶクルマ」メーカー
設立年 2013年
所在地 中国・広州市
 XPENG AEROHTは、都市型エアモビリティ向けeVTOLを開発。個人ユーザーをターゲットとしており、エアタクシー、観光、空飛ぶ救急車・パトカーとしての用途も想定する。中国の新興EVメーカー「御三家」の1社であるXPeng(小鵬汽車)の傘下。
image: XPENG AEROHT

4. Autoflight

Autoflight
中国発、低価格路線のエアタクシー向けeVTOL
設立年 2017年
所在地 中国・上海
 Autoflightは、低価格かつ高性能なエアタクシー向けeVTOL「Prosperity I」を開発。同製品は4人乗りで、1500kgの機体には8つの回転翼を搭載する。1回の充電での航続距離は250km、巡航速度は200km/hとなる予定。タクシーに劣らない安全性と価格の実現を目指す。
image: Autoflight

5. Hybrid Air Vehicles

Hybrid Air Vehicles
地球に優しい「次世代の」飛行機
設立年 2007年
所在地 英国・ベッドフォード
 Hybrid Air Vehiclesは、ヘリウムで浮力を得て運航する次世代の航空機を開発。ヘリウムが充満した機体 (飛行船型) と飛行機の翼、 ヘリコプターの推力偏向で飛行し、従来の飛行機に比べ、CO2の排出量を75%削減することができる。水素燃料電池を開発中で、2025年までに内燃エンジンからの切り替えを目指している。
image: Hybrid Air Vehicles



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