※TECHBLITZでは、培養肉関連の国内外のスタートアップを独自に調査。記事後半では、中でも注目の5社を紹介します。
動物の細胞を体外で組織培養することで作られる代替肉。サステナブルな食料供給や環境保全、動物福祉への課題対処といった観点で期待が高まる一方、割高なコストや食の安全性の評価などが課題として挙げられる。日本でもスタートアップが培養フォアグラなどの開発を進めているほか、日清食品グループと東京大学による共同研究などが行われている。
<目次>
・イスラエル、新たに培養牛肉の販売承認
・イタリアは禁止、EUはまだ明確な姿勢示さす
・TECHBLITZが選ぶ、培養肉関連スタートアップ5選
1. Meatable(オランダ)
2. Uncommon(英国)
3. TissenBioFarm(大韓民国)
4. Wildtype(米国)
5. BlueNalu(米国)
イスラエル、新たに培養牛肉の販売承認
培養肉を巡る新たな動きとして、イスラエル保健省が2024年1月、世界で初めて培養牛肉の製造・販売を承認した。承認を受けたのは、イスラエルの培養肉スタートアップ、Aleph Farms。背景には国を挙げた規制面での後押しがある。
イスラエルは食糧安全保障などの観点から、代替タンパク質に関する施策を推進する省庁横断チームを3年前に結成。今回の培養牛肉に先立ち、2023年には精密発酵技術を用いて牛を必要とせずに「本物の」乳タンパク質を製造する代替乳製品スタートアップのRemilkが販売承認を得ている。
ネタニヤフ首相は培養牛肉の承認について、「代替タンパク質領域における国際的なブレークスルーであり、食糧安全保障、環境保護、動物愛護の観点から重要なニュースだ」とコメントしている。なお、Aleph Farmsは2021年1月、日本市場での培養肉の展開について三菱商事と覚書を交わしている。
培養肉に関しては、2020年に世界で初めてシンガポールが培養鶏肉の販売を承認し、米国でも2023年にGOOD MeatとUPSIDE Foodsが製造する培養肉に対して承認が下りている。オーストラリア・ニュージーランド食品基準機関も培養ウズラ肉の評価を開始している。
image: Aleph Farms
イタリアは禁止、EUはまだ明確な姿勢示さす
一方、イタリアは2023年11月、培養肉を全面的に禁止する法案を議会が可決した。培養肉の販売や輸入を禁止する内容で、違反した業者は最大6万ユーロの罰金が課せられる。農家の抵抗が強く、法案成立を推進したロロブリジーダ農相は「イタリア人の健康と雇用、食文化、伝統を守るものだ」とコメントしている。
欧州連合(EU)はまだ明確な方針を打ち出していないが、イタリアとフランス、オーストリアは先月、培養肉に反対する内容の意見書を欧州理事会に連名で提出。「培養肉は、EU加盟国、欧州委員会、利害関係者、一般市民の間で議論されるべき多くの課題を抱えている」と釘を刺している。
この意見書はチェコ、キプロス、ギリシャ、ハンガリー、ルクセンブルク、リトアニア、マルタ、ルーマニア、スロバキアの9カ国も支持している。
なお、日本では厚生労働省の専門部会などが培養肉の安全性などについて情報収集や研究を進めている状況だ。
TECHBLITZが選ぶ、培養肉関連スタートアップ5選
2013年に世界で初めて培養肉ハンバーガーを開発したオランダのMosa Meatや、シンガポールで世界初の培養鶏肉の販売承認を得たEat Just(GOOD Meatの親会社)のように、一定の知名度を得ているスタートアップも出てきているが、それ以外にも培養豚肉や培養魚肉を手掛けるユニークなスタートアップが数多く存在する。TECHBLITZ編集部が選ぶ、培養肉関連のスタートアップ5社はこちら。
1. Meatable
設立年 | 2018年 |
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所在地 | オランダ デルフト |
2. Uncommon
設立年 | 2017年 |
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所在地 | 英国 ケンブリッジ |
3. TissenBioFarm
設立年 | 2021年 |
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所在地 | 大韓民国 (韓国) ポハン |
4. Wildtype
設立年 | 2016年 |
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所在地 | 米国 カリフォルニア州 サンフランシスコ |
5. BlueNalu
設立年 | 2017年 |
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所在地 | 米国 カリフォルニア州 サンディエゴ |