※TECHBLITZでは、培養肉関連の国内外のスタートアップを独自に調査。記事後半では、中でも注目の5社を紹介します。
動物の細胞を体外で組織培養することで作られる代替肉。サステナブルな食料供給や環境保全、動物福祉への課題対処といった観点で期待が高まる一方、割高なコストや食の安全性の評価などが課題として挙げられる。日本でもスタートアップが培養フォアグラなどの開発を進めているほか、日清食品グループと東京大学による共同研究などが行われている。
<目次>
・推進?拒絶?各国の規制環境の動向
・イタリアは禁止、EUはまだ明確な姿勢示さす
・TECHBLITZが選ぶ、培養肉関連スタートアップ5選
1. Meatable(オランダ)
2. Uncommon(英国)
3. TissenBioFarm(大韓民国)
4. Wildtype(米国)
5. BlueNalu(米国)
推進?拒絶?各国の規制環境の動向
イスラエル:"世界初"スタートアップのグローバル戦略
世界で初めて培養牛肉の製造・販売許可を得たイスラエルのスタートアップ、アレフファーム(Aleph Farms)は、タイ当局に培養牛肉「プティ・ステーキ(Petit Steak)」の認可申請を提出し、2026年半ばの販売開始を目指している。同社はスイスと英国での認可申請を完了し、欧州全域での事業基盤構築を加速させている。英国では食品基準庁(FSA)の審査が最大2年間かかると見込まれ、2027年までの市場参入を計画しています。
シンガポール:生産拠点の拡充
培養肉の受託製造を手がけるシンガポールのエスコ・アスター(Esco Aster)は、2025年完成予定のチャンギ地区工場で年間500トンの生産能力を確立し、アジア全域への供給体制を強化する方針。シンガポール食品庁(SFA)は培養脂肪の規制ガイドラインを改訂し、細胞培養工程の自動化基準を新設した。
米国:州レベルでの規制分断
ミシシッピ州が2025年7月に培養肉禁止法を施行し、フロリダ、アラバマ両州に続く3州目となった。ただし、連邦レベルでは米食品医薬品局(FDA)がミッション・バーンズ(Mission Barns)の培養脂肪を認可し、米農務省(USDA)との共同監督体制が本格化しています。アップサイド・フーズ(UPSIDE Foods)はフロリダ州の禁止令を憲法違反として訴訟を継続中。
EU:イタリアの政策転換と影響
イタリア下院は2024年11月に培養肉禁止法案を可決したが、EU法との整合性問題からTRIS(技術規制情報システム)通知を撤回。この矛盾した動向はEU域内の規制調和に悪影響を及ぼし、欧州委員会は2025年第2四半期に統一ガイドラインを策定する方針を明らかにしました。
日本:官民連携による制度設計
細胞農業研究機構(JACA)が上市前相談窓口の設置を提言し、2025年度中の実現を目指している。農林水産省は細胞培養由来成分の表示基準案を策定中で、動物種ごとの細胞株登録制度の導入が検討されている。

image: Aleph Farms
味もコストも"肉薄"?市場構造の変容と投資動向
価格競争力の飛躍的向上
韓国のティッセン・バイオ・ファーム(TissenBioFarm)のコスト削減技術が業界標準となり、2025年Q1の培養肉平均価格は1kgあたり23ドルまで低下。これは2022年比で83%の価格改善を示す結果で、植物性タンパク質との競合が本格化している。
消費者受容性の地域差
日清食品の大規模調査(n=2,000)では、日本市場での受容率が29%から41%に上昇し、「食感の自然さ」が最大の購買障礙となっている。欧州ではイタリアの禁止政策が消費者の懐疑心を増幅する一方、オランダでは畜産農家の42%が細胞農業への参入意向を示すなど、産業構造の転換が進行中だ。
投資家の戦略的再編
英国のスタートアップ、アグロノミクス(Agronomics)が細胞農業ファンドを10億ドルに拡大し、アジア太平洋地域への重点投資を宣言。カーギル(Cargill)と水産加工・販売のタイ・ユニオン(Thai Union)が共同で3億ドルの細胞農業イノベーション基金を設立し、培地成分のオープンソース化を推進しています。2025年Q1の業界全体の投資額は4億2,000万ドルで、前年同期比17%増加しています。
新興プレイヤーの台頭
中国のCellXがウサギ細胞由来の高級食材「Jade Rabbit」を発表し、シンガポールで2025年Q3の販売認可を申請。ブラジルのBioTech Foodsは遺伝子編集なしで筋繊維密度を3倍に高める培養技術を開発し、JBSとの合弁で欧州進出を計画している。
TECHBLITZが選ぶ、培養肉関連スタートアップ5選
2013年に世界で初めて培養肉ハンバーガーを開発したオランダのMosa Meatや、シンガポールで世界初の培養鶏肉の販売承認を得たEat Just(GOOD Meatの親会社)のように、一定の知名度を得ているスタートアップも出てきているが、それ以外にも培養豚肉や培養魚肉を手掛けるユニークなスタートアップが数多く存在する。TECHBLITZ編集部が選ぶ、培養肉関連のスタートアップ5社はこちら。
1. Meatable

設立年 | 2018年 |
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所在地 | オランダ デルフト |
2. Uncommon

設立年 | 2017年 |
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所在地 | 英国 ケンブリッジ |
3. TissenBioFarm

設立年 | 2021年 |
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所在地 | 大韓民国 (韓国) ポハン |
4. Wildtype

設立年 | 2016年 |
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所在地 | 米国 カリフォルニア州 サンフランシスコ |
5. BlueNalu

設立年 | 2017年 |
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所在地 | 米国 カリフォルニア州 サンディエゴ |