非ホルモン性避妊薬を開発中
―まずYourChoiceの事業について教えてください。
女性用と男性用の非ホルモン性避妊薬の開発と販売です。最初の製品となるジェル状の膣内避妊薬を2025年に発売できるよう手続きを進めています。
当社の作る避妊薬に使われている少分子は、既にFDA(アメリカ食品医薬品局)の承認を受け、過去60年以上、別の徴候のために使われているものです。Mannowetz博士が、この少分子に精子細胞のエネルギーを著しく枯渇させる働きがあることを新たに発見しました。それ以前に、精子に含まれるABHD2とANT4が避妊において”標的”となることをLishko博士が発見し、避妊薬の開発に至りました。
「長旅」を生き抜いた精子のみが卵子にたどり着くことができます。そして、受精し着床すると妊娠が成立します。受精に必要な精子のエネルギー源のみを標的にし、エネルギーを枯渇させることができれば、卵子までたどり着けなくなると同時に受精も不可能になり、妊娠を避けることができるということです。
Image: YourChoice Therapeutics
―YourChoiceの製品は、非ホルモンだということ以外に、既存の女性用のホルモン剤による避妊方法とはどのように違うのでしょうか。
副作用の有無、という点で最も違います。
現在の女性向けのホルモン剤による避妊法には、体重の増加、片頭痛、精神への影響、そして、血栓のリスクを増やすなど、ひどい副作用が認められています。これら副作用のために、約40%の女性がホルモン剤を始めてから1年以内に服用をやめています。更には、ホルモン剤を含む避妊薬の服用によって、乳がんと子宮頸がんのリスクが高まることをアメリカ国立がん研究所が最近発表したばかりです。また、男性用のホルモン剤を使った避妊薬を開発しているところがあると聞いていますが、これに関しても勃起不全や精巣の収縮などの副作用が懸念されています。
当社が開発している非ホルモン性の避妊薬にはこうしたリスクはほぼありません。60年以上前から実用化されている少分子を使っているため、人体への安全性と有効性に関するデータが十分蓄積されています。そのデータから、有害な副作用のリスクは無いに等しいことがわかっており、避妊薬に利用した場合でも、副作用の心配なく使えるものだということを私たちも確認しています。
市販薬として承認を得るまで数年かかるのは、治験や審査など決められた手続きを踏む必要があるからで、安全性と有効性は保証されているも同然なのです。
二世紀に渡り使われてきたコンドームを超える「分子コンドームコンセプト」
―女性用膣内避妊薬の次の計画はありますか。
次は、女性用そして男性用の経口避妊薬の発売を目指しています。現在は、経口投与に最適な化合物を15万種類ものセットから見つけ出す作業を進めています。これは、自分たちで開発したプラットフォームを使い行っています。
現時点で話せる製品は以上3つのみですが、その他にも「避妊」に接点がある分野などで検討が進んでいるものもあります。
―競合と言える非ホルモン性の避妊薬は他にありますか。
男性用および女性用の両方において、市場に出ている物はほとんどありませんが、例えば、殺精子剤などでしょうか。しかし、殺精子剤は失敗率が20%を超えています。女性からすれば、5分の1の確率で避妊に失敗する可能性を背負うことになるのです。より効果の高い避妊薬が求められています。
薬ではありませんが、例えばコンドームは2世紀前に開発されたもので、好んで使う男性はあまりいないことは周知の事実です。当社が開発している避妊薬のように、副作用の心配がなく、避妊の効果が高いうえに、男性も喜んで使用する避妊薬は、ある意味ゲーム・チェンジングとも言え、競合といえる避妊薬はありません。