晩婚化に伴い、高齢出産が増える中、不妊治療へのニーズも増えている。そして、高額な治療費や治療の受けづらさは、世界共通の課題だ。「必要とする全ての人が不妊治療を受けられるように」という創業者の想いから始まったCarrot Fertility。従業員への福利厚生に含めることで、離職率を下げるなど、企業においてもメリットを生み出し、遠隔支援サービスの新設、そして新たな資金調達の成功など躍進が続く。今回はCo-Founder & CEOのTammy Sun氏に話を聞いた。

より多くの人に不妊治療の機会を

――まずCarrot Fertility(以下、Carrot)を立ち上げた経緯を教えてもらえますか。

 Carrotは、自分自身の不妊治療の経験をもとに立ち上げたサービスです。私が前職で勤務していたとき、不妊治療を受けようと保険について調べました。しかし、不妊治療は企業で加入している保険の適用外だったため、自身でその費用を全額負担する必要がありました。

Tammy Sun
Carrot Fertility
Co-Founder & CEO
2000年にホワイトハウス内副大統領事務局にてExecutive Assistantを務めた後、2002年からクリントン財団でDeputy Directorを3年間務めた。2011年に連邦通信委員会(FCC)にてDirector of Communicationsを務め、2013年からDirector of PartnershipsとしてEvernoteに勤務。Evernoteでは、日本企業との業務提携にも携わる。2015年にCarrot Fertilityを創業し、CEOに就任。
 アメリカでは、ほとんどの人が勤務先の企業を通じて医療保険に加入しています。しかし、ほとんどの企業は、不妊治療を受けられる保険に加入していません。一般的な医療、歯科、眼科の保険には加入していますが、不妊治療のための保険は非常に高額で、企業が従業員に提供するのはとても難しいのです。

 その私自身の経験から「もっと不妊治療を身近なものにしたい」と考え、不妊治療に携わっている医師と共にCarrotを創業したのです。

世界50カ国で利用可能

――法人向けに提供しているそうですね。どんなビジネスモデルなのですか。

 企業向けに、従業員が福利厚生の一環として、不妊治療を受けられるサービスを提供しています。ユーザーである従業員は提携している病院で、費用負担を減らして不妊治療を受けることができます。

 顧客には、従業員の数とサービスを利用する国の数に応じた金額を、年間契約でお支払いいただいています。現在はBox、Snap、Slack、Pelotonなど200社以上が導入しています。地域も北米、アジア、ヨーロッパ、南米、中東の50カ国で利用可能で、すでに日本でもサービスを展開しています。

不妊治療薬を最大60%の割引で販売するサービスも提供。

――従業員の利用率にかかわらず、企業の支払う費用は一律ですか?

そうです。体外受精などの不妊治療の回数は料金に反映されません。ユーザーが妊娠できるように支援することが当社の役割ですので、こうした価格設定が必要です。そして、透明性がある一律料金にすることで、企業は予算が立てやすくなるなどのメリットがあります。

従業員向けに不妊治療用のデビットカードを発行。対象の医療施設では支払いが不要となる。

――競合はいるのでしょうか。御社の強みはどのような点でしょうか?

 当社設立時には競合はいませんでしたが、今は不妊治療の分野でサービスを提供する会社が増えています。これは非常に良いことだと考えています。これまでニッチだと考えられていた不妊治療市場も、成長の機会があるということを示しているからです。

 当社の強みは、シンプルにすぐに使えるサービスを、グローバルで提供している点です。各国に現地チームを設け、サービスのローカライゼーションを行っている唯一の企業だと自負しています。また、どの国の企業であっても、保険でカバーする内容などを、それぞれの企業の希望や必要に応じて柔軟にカスタマイズできます。

 現在、Carrotは、5000人以下の中規模の企業に最も多くご利用いただいており、これは、今までこの層に適したサービスが、十分になかったからでしょう。柔軟性を持ったソリューションだからこそ、より多くの企業が、そしてより多くの人がサービスを利用できるようになったのです。

利用者にとって使いやすいものに。日本では日本語のサポートを提供

――不妊治療は国ごとに規制や制度が違いますし、まだ開発中の治療もあります。御社ではどのように管理しているのでしょうか?

 まずCarrotでは一定の基準を設け、実験的な治療は対象にしていません。それぞれの国で承認されている治療のみを対象にしています。

 また私たちはグローバルに展開していますから、国ごとに違う規制に対応する必要があります。ある国では承認されている治療が、別の国では承認されていないというケースもあります。これに関しては、展開している国ごとの制度や規制をリアルタイムで把握するためのプラットフォームを構築し、各国ごとに対応をしています。

――すでに日本でも展開をしているのですよね。

 そうですね。日本は多くのアメリカ企業にとって、アジア展開への入り口になることが多いのです。アメリカ企業がアジアに進出する際には、日本に拠点を設置しています。すでに日本には顧客の従業員が多くいます。

 日本で展開するにあたって工夫したのは、日本でメンバーを採用し、日本語でサポートを提供できるようにした点です。また、日本向けにソフトウェアのローカライゼーションも行っています。

日本円対応など、日本向けにもローカライズされている。

 日本でも、不妊治療の保険適用拡大に向けた政府による取り組みが進んでいるようですし、世界中で不妊治療に対する取り組みが行われています。当社は、8月から遠隔サービス「Carrot at Home」の提供を始めました。在宅でヘルスケアのサービスを受けられる環境を整備しています。

 私たちのミッションは「fertility care for all.(望む人すべてに不妊治療を提供する)」です。私たちは、望む人すべてに手頃な価格で不妊治療を提供すべきだと考えています。今後もこのミッションをグローバルで実現していきたいと思います。



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