最先端技術の手前に潜む手作業の自動化
―SigOptのサービスについてお話ください。
SigOptは、機械学習モデル、深層学習モデル、強化学習モデル、トレーニングシミュレーション、石油・ガスシミュレーションなど、調整可能なパラメーターがある全てを対象に、実験・試験と最適化を行うプラットフォームです。ビジネスモデルはAPIを提供するSaaSモデルです。
例えば、機械学習モデルが実際に学習する方法を制御するパラメーターの設定や、深層学習ではHidden Layer(隠れ層)が何層なら深層なのかなど、「学習」を始める前に設定する必要がある構成設定が多くあります。
しかし、これらは事前に行う設定なので、「学習」の対象外であり、手作業で行うか、全ての設定を試してみるなど強引な方法で行われています。単純な構成であれば手作業でも乗り切れますが、より洗練されたパラメーター構成においては、プロセスの自動化と効率化が必要です。そして、この問題は業種に関係なく存在しています。
SigOptのAPIは、対象となるシステムが使っているプログラミング言語を使い、対象モデルの条件下で様々な設定をループさせながら試し、システム内で評価を行い、最も適した構成設定を見つけ出し、その設定のパフォーマンスを報告します。
―従来のやり方との違いを教えてください。
企業では、社内で構成設定を行うことが好まれ、社外のソリューションを使うことを避けますが、専門職の社員の時間や能力を面倒な構成設定に費やすのではなく、本来の業務に専念できるようにするべきですし、従来のやり方では担当者が試行錯誤してもその記録はどこにも蓄積されません。
SigOptは「学習」しますので、従来の標準的な方法とは桁違いに効率的で、最も適した構成設定を速く、安く、見つけることが可能です。当社のプラットフォームは、査読(ピアレビュー)された最適化アルゴリズムのアンサンブルを使い、世界中のユーザーを対象に、様々な分野におけるユースケースと、数百万種類の実験・試験に対応しています。そして、調整プロセスとパフォーマンスは全て蓄積され、ダッシュボードとインサイト、ユーザーサポートも提供しています。
Image: SigOpt
投資銀行やアルゴリズム取引で導入が進む
―SigOptを使っている日本企業が既にあると伺いました。
そうですね。当社は、米国外ではヨーロッパおよびアジア太平洋地域で事業展開を進めており、ヨーロッパやオーストラリアにも顧客がいますし、日本では分散投資型の資産運用サービスを提供している企業にご利用いただいています。
日本に限らず、海外で事業展開する際は、SigOptで解決可能な問題に直面している企業の把握と、その企業の意思決定者に紹介してもらうことが重要だと考えています。
―御社が特に注目している業界がありますか。
現在は銀行、コンサルティング会社、大規模なストリーミングサービスを提供している会社など、調整が必要な複雑なモデルを持つ様々な業種でSigOptが採用されています。特定の業界に限定することはありませんが、投資銀行や証券会社(アルゴリズム取引)が最良顧客と言えます。
今後の目標は、様々な業界で、より洗練され差別化されたAIを支援し、高性能化や利便性の向上に寄与することで、よりよい社会の構築に貢献することです。