データ管理とインサイトを両立させるデータマネジメントプラットフォーム
Qumuloが扱うデータは、リレーショナルデータベースなどに整理されたデータばかりではない。大半は、オフィス文書や画像や動画、メールなど、整理されていない非構造化データだ。エンターテイメント業界では写真や動画、音声ファイルが、製造業界では自動車や半導体チップなどの設計図、バイオテクノロジーでは遺伝子配列など、膨大な非構造化データがさまざまな場所で扱われている。
スケールが大きく、これまで管理が難しい非構造化データを、クラウド上のデータマネジメントプラットフォームに保存・管理できるようにしたのがQumuloだ。データの保存・管理にとどまらず、データ分析とインサイト提言までできるソフトウェアを提供していることだ。
QumuloのCEOであるBill Richter氏は、25年以上もの間、テクノロジー業界を経験してきた。その中にはDell Technologiesが買収したストレージ企業のEMCもあった。業界を熟知するRichter氏は、データストレージに関して顧客が抱える課題を次のように述べた。
「クラウドストレージが10ペタバイトクラスの巨大なデータスケールを保証することは大前提です。ですが、それだけではお客さまの課題解決には十分ではありません。膨大な非構造化データが生まれる産業では、データレベルのインフラ不足がビジネスの進展を阻害しています。そこで、私たちのプラットフォームは豊富なデータ分析とインサイト提言を提供することにしました。プラットフォーム上で動くソフトウェアが、お客さまの限界を突破し、ビジネスの発展に大きく貢献します」(Richter氏)
大容量データを軽快に扱える、高いソフトウェア技術
Qumuloの事業はソフトウェアを中心としたビジネスモデルで、ストレージのハードウェア販売する競合とはスタンスが違う。またデータ管理とインサイトを両立するために、十分なデータ量の確保だけでなく、パフォーマンスを向上させる仕組みも取り入れている。データセンターでは標準的なハードウェアを利用しながらも、そのソフトウェア技術によって高いパフォーマンスを提供するのだ。
Image: Qumulo
「お客さまが容量を追加した際、パフォーマンス、スループット、レイテンシーを同時に向上させることができます。これは、データセットが大きくなるとシステムが遅くなってしまう既存ストレージソリューションとは大きく異なる点です。ハードウェアを売ることを重視する他社に対し、私たちはクラウド上でソフトを動かし、お客さまがデータをリアルタイムに理解、分析する手助けをすることに主眼に置いています」(Richter氏)
Qumuloでは、そのソフトウェア技術を使って、クラウド上で動画編集ができるソリューション「Qumulo Studio Q on AWS」も提供している。これは、ビデオ編集のための「Adobe Premiere Pro」や「Adobe After Effects」を、AWSのクラウドリソースを介して操作できるものだ。クラウド上のサービスとして提供されるので、動画制作のために、ワークステーションがあるスタジオに出勤することなく、また多人数のコラボレーションによる制作も可能となっており、映像制作の働き方を大きく変えている。
4年間で10倍に成長。デジタル活用やテレワーク推進でさらに拡大
2020年以降、人々が自宅で仕事や学習するようになり、多くのデータやコンテンツが消費されるようになった。世界的なパンデミックは、企業のデジタル化を促進し、私たちの身近な非構造化データのクラウド移行も加速させている。その影響もあって、Qumuloのユーザーは世界の主要地域で600社を超えた。現北米のユーザーが最も多く、次に欧州が100社以上、アジアでは約30社が利用している。
アジア地域の本格進出は始まったばかりだが、HPE(Hewlett Packard Enterprise)が、Qumuloの強力なセールスパートナーとなっているため、グローバル販売が急速に進んでいる。AWSやMicrosoft Azureを介したサービスとしてのQumulo提供も進展している。Qumuloの創業自体は2012年だが、Bill Richter氏がCEOに就任した2017年以降、10倍の成長を遂げているという。
2020年6月16日にはシリーズEで、1億2500万ドルの資金調達に成功するなど、投資家からの期待も高まっている。今後は、機能・パフォーマンスの向上と顧客満足度を充実させるため、開発部門とカスタマー部門を強化していく計画だ。
Qumuloの従業員は450人で、そのうち200名ほどはAWSやMicrosoftのお膝元、世界のクラウドの中心であるシアトルの本社にいる。残り半数以上は世界に広がっている。今秋までに日本支社を立ち上げ、日本でも積極的に採用したい考えだ。日本市場においても、得意とするメディア・エンタテインメント市場に加えて、自動車メーカー、ライフサイエンス、研究、教育機関への導入も目指したいとRichter氏は意欲を語った。
「今後、非構造化データから得るインサイトは、人類進歩の中心となると予測しています。大容量のデータマネジメントは、医療に新しい治療法をもたらし、製造業の設計を自動化するなどさまざまな課題解決につながるからです。私たちは、世界中のお客さまが非構造化データのパワーを解き放つためのお手伝いをすることに情熱を注いでいきます」