メンタルヘルスに「予防」を取り入れたい
――どのような経緯でModern Healthを立ち上げたのですか。
私は両親が医師で、ヘルスケア領域や予防ケアが健康全体に良い影響をもたらすと感じながら育ちました。ジョンズ・ホプキンズ大学に行って自分も医師になりたいと思っていましたが、結果的にヘルスケア領域でもっとマクロなインパクトをもたらす方法を見つけたいと感じるようになりました。
ワシントンD.C.でヘルスケアコンサルの会社で働きながら、いつか起業したいと考えていました。そこでシリコンバレーのことはほとんど知らなかったのですが、移り住むことにして片道切符でやってきました。それで複数の医療系のスタートアップで働くうちに、メンタルヘルスの領域にはまだまだニーズがあることに気がついたのです。
――メンタルヘルスの扱いにどのような問題意識を感じたのですか。
多くの人がメンタルヘルスについて考えるときは、すでに危機的なモードになっていたり、鬱で苦しんでいたりするときで、心理セラピストや医療的マネジメントでの対処になります。でも、よりホリスティック(全体的)なアプローチや、メンタルヘルスに予防的な視点を導入する解決策があるはずだと考えたのです。
日々のストレスを管理すること、新しく親になったとか愛する人を失ったというような出来事、落ち込むこと、不安…様々なことが私たちには降りかかってきます。一つのサイズで皆にフィットするような服はなく、個々にあわせたケアを提供するサービスが必要だと思いました。
デジタルプログラム、バーチャルコーチング、専門家のセラピーを提供
――具体的には何を提供しているのでしょうか。
私たちのサービスはデジタルで、全て自社内でコンテンツを作っています。1つ目は瞑想のライブラリー、音声セラピー、デジタル講座などが鬱や不安への予防や治癒をしてくれます。これらのデジタルプログラムを提供するのに認知行動セラピーを使っています。
もう1つはバーチャルコーチングです。産後や経済的なストレスなど、様々な専門を持つコーチのグローバルネットワークを保有しています。個々人が抱えている問題に応じて、適切なコーチをマッチングさせることができます。
3つ目がセラピーです。臨床心理士などの専門家が鬱の程度などをアプリでアセスメントをして、適切なケアにつなげられるようトリアージをします。
――顧客は企業でしょうか。
今のところは企業向けで、企業が従業員にアプリを使えるようにし、従業員は無料で利用ができるという枠組みです。様々な業種で従業員の健康は優先度が上がっていますから、 Lyft、楽天、Pixarなど様々な業界の企業が顧客となっています。
Image: Modern Health
コロナ禍でストレスは明らかに増えている
――コロナによるパンデミックで事業環境はどのように変化していますか。
パンデミックが出てくる以前も、働き方に大きく変わりつつあり、ヘルスケア分野に投資する動きが出ていました。それがパンデミックで行動制限が出て、自宅から働くと四六時中仕事と隣り合わせという環境になりました。既にアプリを使っていた人の利用量はロックダウン以降で56%も増えました。
65%のユーザーはストレスや不安で周りのサポートをリクエストしています。37%は仕事のパフォーマンスに不安を抱えています。在宅でいること、あるいは経済低迷により職を失うのではないかという不安などでストレスは明らかに増えています。
――今後、短期的・長期的に目指すゴールは何でしょう。
今はできる限り多くの人に使ってもらうことを目指しています。長期的にはメンタルヘルスへのスティグマを無くし、誰もがかかわるものにしてきたいのです。身体の健康を大事にするように、世界中の人がメンタルヘルスにも気を配るような世界を目指します。
――グローバル展開は既に進めていますか?
グローバルに拠点がある企業に提供をしていますから、日本に従業員がいるという顧客企業もありますし、日本にいるセラピストや心理士もいます。今後もパートナー企業は増やしていきたいと思っています。企業は従業員のメンタルヘルスに対する優先順位を本当に上げていってほしいと思っています。