オンライン診療や薬の配達、臨床検査、手術の手配まで、様々な医療ニーズに、エンドツーエンドで応えるインドのデジタルヘルスケア・プラットフォームがMediBuddy(本社:インド・バンガロール)だ。現在、9万人の医師と7,000カ所の病院と提携し、インド全土の96%をカバーする。新型コロナウイルスの流行を受け、政府の後押しもあり、インドでは医療のデジタル・トランスフォーメーション(DX)が急速に進んだ。デジタル医療のリーダー的存在として、日本の投資家からも注目を集めるMediBuddyについて、共同創業者でCEOのSatish Kannan氏に話を聞いた。

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24時間365日、20科目でオンライン診療が可能

――なぜMediBuddyを始めようと思ったのですか。

 私は大学でエンジニアリングを学び、学士号と修士号を取得しました。私はヘルスケアにも興味があり、将来はテクノロジーとヘルスケア双方に関わる仕事に携わりたいと思っていました。そこで、世界的な医療機器メーカーのPhilipsに入社し、心臓手術のための検査機器の設計に携わりました。それが医療業界での最初の仕事です。

 医療現場で多くの時間を過ごした私は、ある問題に気がつきました。当時、インドの人口は12億人以上であるのに対し、医師は25万人しかいないことでした。質の高い医療へのアクセスが困難で、医師が不足していたのです。このギャップを埋めるべく、患者と医師をつなぐデジタルプラットフォームを構築しようと思ったのがきっかけです。

Satish Kannan
MediBuddy
Co-Founder & CEO
インド工科大学で学んだ後、オランダのヘルスケア企業Philipsに入社し、R&D部門に従事する。2013年、専門医にオンラインで相談できる医療アプリを提供するDocsAppを創業。DocsAppは2016年にFacebookのエンジェル投資家であるAnand RajaramanやRebright Partnersなどからシード資金120万ドル、2017年のシリーズAラウンドではTechmatrix Corporation、DeNa networksから720万ドルを調達した。2019年にMediBuddyを創業した。

――御社のプラットフォームでは、どんな医療サービスが受けられるのですか。

 私たちのプラットフォームでは、さまざまなサービスを受けることができます。例えば、ビデオ通話を使って専門医に相談し、診察を受けることができます。一般内科、小児科、皮膚科、婦人科、腫瘍科、循環器科など20の診療科があり、1万人近い医師が365日24時間で対応します。

 オンラインだけでなく、オフラインの診察も予約できます。当社のプラットフォームから7,000近い病院の医師約9万人に予約が可能です。MediBuddyブランドのクリニックもあります。例えば、医師がオンラインでもオフラインでも処方箋を出したら、患者がボタンをクリックするだけで薬が自宅に届くというサービスもあります。医師から血液検査をするように言われたら、自宅で血液検査をすることもできます。そして、手術が必要になった場合、適切な外科医を見つけるお手伝いもできます。

 以上が私たちのプラットフォームの概要です。当社のプラットフォームを使えば適切なサービスを見つけ、手配することができるというわけです。こうして私たちはインド全土の96パーセントをカバーする、3,000万人のユーザーを持つ医療プラットフォームに成長しました。Android、iOSでアプリに対応しています。

Image: MediBuddy

新型コロナ流行によって、インド政府が医療デジタル化を後押し

――MediBuddyがこれほど多くの医療関係者や患者を獲得できたのは何故だと思いますか。

 当社は全国22カ所にオフィスがあり、2,400人近くの社員が在籍しています。彼らが医師や薬局、ラボと直接会ってパートナーシップを築いてきました。

 また患者が保険適用を受けられるように、インド保険会社50社のうち、30社と提携しました。700社ほどのインドの大企業とも提携し、従業員向けの医療サービスとしてアクセスできるようになっています。ユーザーの多くはこの2つの提携先から獲得できています。

――どのようにマネタイズしているのですか。

 患者がオンライン診療や薬の配達、血液検査などを受けた場合、料金をプラットフォーム上で支払い、手数料を差し引いた金額が、医師や薬剤師、診断センターに支払われる仕組みです。つまり、AmazonのようなEコマース・プラットフォームのビジネスモデルと全く同じです。患者は登録料や管理費を支払う必要はなく、ソリューションやサービスにかかった分を支払うだけでいいのです。

――新型コロナウイルスの影響はありましたか。

 COVID19の発生後、3つのポジティブなインパクトがありました。1つは、患者が病院や薬局に足を運ぶことができなくなったため、デジタルツールを利用し始めたことです。2つ目は、かつてオンライン診療に否定的だった病院でも、デジタルツールの導入が進んだことです。患者がオンライン診療を望むようになったため、病院側もデジタルツールの使い方を学ばざるを得なくなったのです。3つ目は、規制緩和が進んだことです。インドの首相は、デジタル医療を促進するために、規制や法律の改正をサポートしました。この3つの改善のおかげで、私たちのビジネスは前進しました。

Image: MediBuddy

日本投資家からも熱視線 シリーズCで1.2億ドル調達

――2022年2月、シリーズCでRebright Partners、Quadria Capitalなどから 1億2500万ドルという巨額な資金調達を果たしました。日本へ進出する予定はありますか。

 インドは非常に大きな市場ですから、引き続きインド市場に注力していきます。日本進出も視野には入れています。実際、日本からはRebright PartnersやJAFCOなど多くの著名なVCが注目してくれています。私もCOVID発生前はマーケティングのために毎年、日本を訪れては関係構築に努めてきました。今のところ日本はデジタル医療を制限しているようですが、規制が改善されればもっと日本企業とのパートナーシップを前進させたいですね。

――これからの開発目標と、長期で達成したいビジョンを教えてください。

 現在、私たちが取り組んでいるのは「慢性疾患管理プログラム」というものです。糖尿病や肥満、高血圧、メンタルヘルスなど、治療が長期に渡る分野で、体重や血圧の管理、正常なBMI値に戻す健康改善のプログラムを開発できないか検討中です。

 今はスマートフォンを使えば、世界中のどこでも簡単に、最高の医療を適切なタイミングで受けることができる時代です。もし車を運転できない年老いた両親がいたとしても、ビデオ通話を利用して診察を受けたり、自宅まで薬を届けてもらったりできるようになりました。これからも患者が質の高い医療にアクセスできる社会をつくることが、私たちのミッションです。

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