3Dモーションセンサーデバイスを開発・提供しているLeap Motion社。このデバイスを使えば、手の動きをPCの画面上やVR空間上へ再現することができる。現在、同社は、このデバイスを他社の製品へ導入するOEMモデルをメインに展開中。シリコンバレーのVR系ユニコーン企業としても名を轟かせている。今回はFounderでCEOのMichael Buckwald 氏に事業内容や今後の展望を聞いた。

Michael Buckwald
Leap Motion
Co-founder & CEO
George Washington大学卒。ゲーム系企業のStratics社にて9年間従事した後に独立し、営業支援ソフトウェア開発のZububa社を設立、米・イエローページへ同社の売却に成功。その後の2010年にLeap Motion社を設立。

手を動かすだけで3Dコンテンツを操作できる

―事業概要を教えてください。

 Leap Motionは、3Dモーションセンサーデバイスを開発・提供しています。このデバイスを使うことで、ユーザーは従来のキーボードやタッチパネルを使うことなく、簡単にコンピューターやVRの操作を行うことができるようになります。本来なら複雑なプロセスを必要とするコンピューターの操作でも、手を動かすだけで行うことができるようになるのです。私たちはこのデバイスの開発の他にも、大手や家電メーカーとタイアップして、このテクノロジーを消費者向けのVR・ARデバイスへ組み込むためのモジュールも開発・提供中です。

Image: Leap Motion

3Dモデル検索で製造業・建設業にイノベーションをもたらすPhysna
関連記事
3Dモデル検索で製造業・建設業にイノベーションをもたらすPhysna
「3Dモデル検索で製造業・建設業にイノベーションをもたらすPhysna」の詳細を見る

―他社との違い、強みはなんでしょうか?

 私たちのセンサーは、業界でも群を抜く正確さでユーザーの手の動きを追跡し、動きをもらすことなく解析できます。これにより、VR上の手の動きと現実の動きの間に動作のズレを生じさせることなく、ユーザーの手の動きをコンテンツ上へ投映しています。同レベルのテクノロジーを開発している企業は他にありません。

 基本的に人間の手や指は、コンピューターが追跡できる速度よりもはるかに速いスピードで動きます。しかし、私たちのテクノロジーを使えば、それらの動きを正確にとらえることができ、ユーザーの動きとVR/ARデバイスをスムーズにリンクさせることができるのです。

VR/AR市場だけでなく、将来的に自動車、医療、ロボット市場も視野に

―導入事例を教えてください。

 現在、主にこの3DモーションセンサーテクノロジーをVR/ARデバイス業界向けに提供しています。例えば、VR機能を持つテレビのディスプレイなどに、小型のモジュールを埋め込み、実際にVR空間上のコンテンツを手動で操作できるようにしています。
当分の間は、実際にこの3Dデバイスがどのように動作しているかが、視覚的にわかりやすいVR/ARデバイスを中心に事業を進めていますが、将来的に自動車、医療、ロボットなどの分野への導入も検討しています。

―現在ターゲットとしている市場は何でしょうか?

 現在、最も我々のテクノロジーと高い親和性を持つ市場は、やはりVR/AR業界だと思います。我々の3Dモーションセンサーテクノロジーを使うことで、VRヘッドセットを使ったゲームソフトにしろ、それ以外のソフトウェアやロボットにしろ、すべての動作を実際に手を使って進めることができるようになるからです。

 先ほども申し上げた通り、今後VR空間において実際に手作業で物事を進められることの意味はますます重要になっていくと思います。たとえば、エンターテインメントやゲームは、コンテンツが、より現実味を増し実際に体験しているような感覚で楽しめるものに変わっていくと思います。さらに教育では、VR空間上での授業など、実際にその場に足を運ばなくても、その場にいるような現実的な感覚で学ぶことができると思います。

Image: Leap Motion

シリアルアントレプレナーとしてLeap Motionを起業

―起業の経緯について教えてください。

 Leap Motionの起業前、私はZabubaというアポイントメント管理ツールを開発・提供するスタートアップを起業していて、最終的にこの会社は大手のイエローページへ売却しました。当時は、中小企業を支援することにとても魅力を感じていました。かなり情熱を注いで成長させた会社だったので、このエグジットという結果にとても満足したことを覚えています。

 それからしばらくして、私と共同創業者のデイビッドは、新たな目標を見つけました。それは、まだ誰もみたことがない技術を使って世界を変えるというものです。私たちは、それを新たなビジョンとしてこのLeap Motionを始めたのです。

他社のサービスとの組み合わせで、大きな価値を生む技術

―日本市場についての印象を教えてください。

 私は、日本市場はLeap Motionにとってとても重要であると感じています。日本の方々はテクノロジーに敏感で、常にアンテナを張って最新のトレンドを掴もうとしていると感じます。その証拠に、かなり多くの方が我々の3Dデバイスを発売前に先行予約をして購入してくれたことを覚えています。さらに、日本で注目されているホログラムなどのテクノロジーと3Dモーションセンサーテクノロジーはとても高い親和性があると私は考えています。それらのテクノロジーに、我々の技術を掛け合わせることで、新たな高い価値を生み出せることは間違いありません。

―将来のビジョンについて教えてください。

 私は近い将来、この会社が世界を変えることができる企業へ成長できると信じています。現在、我々は3Dモーションセンサーテクノロジーと他社の商品を掛け合わせて、新たな商品を生み出すこのOEMモデルにとても比重を置いています。なぜかというと、この3Dセンサーデバイス単体で生み出す価値よりも、他社の商品との組み合わせて使用した時の価値の方がはるかに大きいことを知っているからです。

 私はこのように他社のサービスとこの技術を掛け合わせて生み出される提供価値は、資金面だけではなく、テクノロジーを進化させるという意味でも大きく世界市場へ貢献できると考えています。そしていずれ我々のテクノロジーを使って、小さな子供を含めた全ての人々がキーボードを叩いたり、マウスを動かしたりしなくてもVRやコンピューターを扱うことができる世界を築くことが将来の目標です。

Image: Leap Motion

メタバースでも話題、XRスタートアップトレンドレポート
関連記事
メタバースでも話題、XRスタートアップトレンドレポート
「メタバースでも話題、XRスタートアップトレンドレポート」の詳細を見る

スペースXのエンジンにも採用。金属3Dプリンターで製造技術の限界を超えるVelo3D
関連記事
スペースXのエンジンにも採用。金属3Dプリンターで製造技術の限界を超えるVelo3D
「スペースXのエンジンにも採用。金属3Dプリンターで製造技術の限界を超えるVelo3D」の詳細を見る



RELATED ARTICLES
クラウド全盛時代の新常識?CPU・GPUが利用データを暗号化 Anjuna
クラウド全盛時代の新常識?CPU・GPUが利用データを暗号化 Anjuna
クラウド全盛時代の新常識?CPU・GPUが利用データを暗号化 Anjunaの詳細を見る
勉強を「学び」から「遊び」に ゲーム感覚の学習プラットフォームが子供に人気 SplashLearn
勉強を「学び」から「遊び」に ゲーム感覚の学習プラットフォームが子供に人気 SplashLearn
勉強を「学び」から「遊び」に ゲーム感覚の学習プラットフォームが子供に人気 SplashLearnの詳細を見る
ソフトバンクも出資する韓国の人気旅行アプリの強さとは ヤノルジャ
ソフトバンクも出資する韓国の人気旅行アプリの強さとは ヤノルジャ
ソフトバンクも出資する韓国の人気旅行アプリの強さとは ヤノルジャの詳細を見る
ライドシェアとは一線画す、相乗りビジネスの成功モデル BlaBlaCar
ライドシェアとは一線画す、相乗りビジネスの成功モデル BlaBlaCar
ライドシェアとは一線画す、相乗りビジネスの成功モデル BlaBlaCarの詳細を見る
AI向け性能は最大10倍?チップレット相互接続の独自技術を開発 Eliyan
AI向け性能は最大10倍?チップレット相互接続の独自技術を開発 Eliyan
AI向け性能は最大10倍?チップレット相互接続の独自技術を開発 Eliyanの詳細を見る
スマホ時代のカスタマーサポートの形、会話型AIの進化で次のステップへ UJET
スマホ時代のカスタマーサポートの形、会話型AIの進化で次のステップへ UJET
スマホ時代のカスタマーサポートの形、会話型AIの進化で次のステップへ UJETの詳細を見る

NEWSLETTER

世界のイノベーション、イベント、
お役立ち情報をお届け
「オープンイノベーション事例集 vol.5」
もプレゼント

Follow

探すのは、
日本のスタートアップだけじゃない
成長産業に特化した調査プラットフォーム
BLITZ Portal

Copyright © 2024 Ishin Co., Ltd. All Rights Reserved.