特定テーマのトレンドキーワードや注目スタートアップを紹介する「トレンドレポート」。今回は「大学発のスタートアップ」と、その成功事例や協業事例にフォーカスしてまとめた「日本の大学発スタートアップトレンドレポート」を紹介します。同レポートでは、東北大学、東京大学、慶應義塾大学などで活躍するスタートアップについての情報をお読みいただけます。
※レポート本誌は、2023年11月に「BLITZ Portal」ご利用企業向けに発刊しております。

「1大学につき50社の起業」という目標への進展

出典:経済産業省「令和4年度大学発ベンチャー実態等調査

 経済産業省が2023年5月に発表した資料によると、2022年10月末の調査で確認された「大学発スタートアップ」の数は合計3,782社にのぼりました*。前年度から477社増え、ここ数年の増加傾向が堅調に続いています。

 国家戦略としてのスタートアップ支援、VCとの連携に基づく財政および経営支援、大学を挙げての創業促進、法人企業との協業に基づくオープンイノベーション、手本となる成功事例の蓄積など、ここ20年ほどのスタートアップをめぐる多角的な取り組みが噛み合い、プラスの循環が生まれてきていることがうかがえます。かつて、諸外国に比べて日本の若者は大企業志向が強く、保守的で、冒険を好まないと言われていましたが、ここへきて「意識」の面でも潮目が変わってきたように感じます。

 政府が2022年11月に発表した「スタートアップ育成5カ年計画」では、全国各地の研究大学に対し「1大学につき50社の起業、イグジット1社」という目標が掲げられています。これらの数値目標と相まって、学生・卒業生、そして大学教員による起業あるいは大学が所有する知的財産のライセンス供与を通して、学術研究や先端技術が産業界へ移転されていく流れが定着し、大学を起点としたイノベーションの波が高まっていくのか、今後の進展を注視していきたいと思います。

 本レポートでは、日本の大学発スタートアップと、その成功事例や協業事例を取り上げました。

 また、海外の大学発スタートアップをテーマにした「大学発スタートアップ トレンドレポート」(発刊月:2023年2月)も発行しております。ぜひこちらもご参照ください。

* 経済産業省「令和4年度大学発ベンチャー実態等調査

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短縮版では日本の大学発スタートアップ56社を紹介(当記事では、うち4社を紹介)

 「日本の大学発スタートアップトレンドレポート」は、以下の画像の内容で構成しております。そのうち本記事のフォームから入手できる短縮版では、冒頭の「Overview」と「大学発スタートアップ(一部 4校)」のセクションをご提供しています。

  ※今回TECHBLITZ上で配布する「日本の大学発スタートアップトレンドレポート」は一部項目のみの短縮版となります。下記コンテンツを含んだ完全版は「BLITZ Portal」会員のみに配布いたします。

[完全版で追加される内容]
・大学発スタートアップ(3校)

東北大学

2023年9月、政府が創設した10兆円規模のファンドを通した研究力向上支援の対象となる「国際卓越研究大学」の候補に最初に選出されるなど、研究力の高さは折り紙つき。建学以来の伝統である「研究第一」と「門戸開放」を理念に掲げ、産業界との共創、研究成果の産業界や地域社会への還元を重視しており、国際卓越研究大学としての目標に、産学連携の強化、民間研究資金の受け入れ額の約10倍増、大学発スタートアップ数を10年後に750社、25年後に1,500社を掲げている。材料科学 / スピントロニクス / 未来型医療 / 災害科学の4領域に強みを持つが、宇宙航空関連スタートアップの活躍も目立つ。

AZUL Energy

Image : AZUL Energy HP

青色顔料研究の研究過程で得られた知見に基づき、鉄フタロシアニンを加工、燃料電池や空気電池に活用できる酸素還元触媒を開発。レアメタルを用いない高性能触媒電極材料の実用化を目指す。

東京大学

大学発スタートアップの数で、2位以下を大きく引き離して首位をひた走る東京大学。最近では、2022年度の入学式で半分以上の時間を割いて新入生たちに起業家精神を持つことの大切さを説いた藤井総長の式辞がスタートアップ関係者の間で話題となった。東大の技術移転機関(TLO)である東京大学 TLO、東京大学の100%子会社として投資と起業支援事業を展開する東京大学協創プラットフォーム開発(東大 IPC)、そして東京大学と連携しながら国内外の科学技術スタートアップに投資を行う投資事業会社、東京大学エッジキャピタル(UTEC)の活動にも注目が集まる。

Nature Architects

Image : Nature Architects HP

自然界には見られない機能を持つ「メタマテリアル」の設計とシミュレーションソリューションを提供。AIを活用し、樹脂や金属といった材料の物理的な挙動を予想。弾力性や軽量性、剛性といった目的の機能から構造を逆算して求め、材料の構造を最適化する。

東京工業大学

理工系の総合大学として、技術に裏打ちされたディープテック分野のスタートアップを多数創出。同大は大学院進学率の高さで知られ、学部生の大学院進学率は90%に上る。ユニコーンへと成長する潜在性を秘めた企業を探す VC が「目利き」の際に重視するポイントをとまとめた McKinsey の調査レポート「How to build a unicorn」によると、トップ 100 ユニコーンの創設者の大多数(95%以上)は学位を有し、その70%以上がより高い学位(修士号 / MBA / 博士号)を取得しており VC も創業メンバーの教育的バックグラウンドに注目しているという。日頃から仮説の検証を反復して問題解決を図ることを訓練されている理系院生はそもそも起業に向いているといった見解も耳にする。その点からも、同大はスタートアップ人材の宝庫なのではないだろうか。

elleThermo

Image : elleThermo HP

室温以上の未利用排熱で電力を生み出すことのできるエネルギー変換技術、半導体増感型熱利用電池(STC)の社会実装を目指す。発電に水資源や温度差は不要。データセンターや工場から出る排熱はもちろん、体温や室温による発電も可能で、多様なユースケースが期待されている。

慶應義塾大学

2023年5月に発表された経済産業省の「大学発ベンチャー実態等調査」では、同大発スタートアップ数が前年から61社増となり増加数で1位に。これにともない累計数も前年の5位から、東大・京大に次いで3位と順位を上げてきている。また、同大発スタートアップによる資金調達額は2022年に総額245億円となり*、大学別資金調達額の比較でトップの座を勝ち取っている。2022年には、人材サービスを展開するビズリーチと連携協定を締結。研究者にとってハードルの高い「会社経営」を担える外部人材を「客員起業家」として、慶應発のスタートアップにマッチングさせる取り組みをスタート。研究者と経営のプロによる二人三脚で起業を推進する仕組みを構築している。

* 慶應イノベーション・イニシアティブ「KIIのインパクト投資とイノベーションについて

APB

リチウムイオン電池の集電体に使われていた金属部品を樹脂に置き換えた、全樹脂電気を開発。リチウムイオン電池の課題であった複雑な製造工程や発火リスクなどを改善しながら、高エネルギー密度を実現できる。形状の自由度が高いこともメリット。



 日本企業が現状のトレンドを予測するうえで、またオープンイノベーションの進め方を考えるうえで、本レポートが少しでもお役立に立てれば幸いです。

 「日本の大学発スタートアップトレンドレポート」の短縮版は、下記の「レポートを入手する」ボタンより無料でダウンロードしていただけます。

※今回TECHBLITZ上で配布する「日本の大学発スタートアップトレンドレポート」は一部項目のみの短縮版となります。完全版は「BLITZ Portal」会員のみに配布いたします。

※新規事業開発、R&D、オープンイノベーション、商材発掘などを行う事業会社、政府系機関(行政含む)、CVC、VC、メディアに限りお渡しさせて頂いております。サービスプロバイダー、もしくは弊社と同業種の方へのお渡しはお断りさせて頂く場合があること、ご了承ください。



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