Rapido(本社:インド)は二輪車によるライドシェアビジネス「バイクタクシー」を展開するインド生まれのスタートアップである。米ライドシェア大手Uberなどと違い、二輪車にこだわったRapidoは富裕層や大都市だけでなく、中流階級や地方都市の人々のニーズに着目し、取り込んだ。既存大手のライドシェアに迫る勢いでシェアを伸ばすRapidoとはどのような企業か。その戦略や特徴について、共同創業者のPavan Guntupalli氏に話を聞いた。

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自動車より「便利で安い」二輪車のライドシェアに着目

 学生時代から起業家を志していたというGuntupalli氏は、Samsungに入社し、技術者として2年弱を過ごした。韓国から帰国した頃、世界的に流行り始めていたUberやインド発のライドシェアOlaなどによるライドシェアリング革命を見て、「自分は二輪車のライドシェアでチャレンジしよう」と決意したという。

 というのも、人口約13億人のインドは世界で最も二輪車が売れている国の1つだ。自動車がまだ高価なインドの人々にとって、二輪車は通勤、通学、買い物など日常生活だけでなく、仕事でも重要な交通手段となっている。しかも交通インフラが脆弱で、渋滞が深刻なインドの都市において、二輪車は自動車よりも早くて便利な移動手段なのだ。

 全国すみずみまで普及している二輪車を活用すれば、どんな庶民でもインド中のあらゆる都市でライドシェアビジネスを展開できるようになると考えたわけだ。

「自分のようなインドの中流階級の人々にとって、UberやOlaなどの四輪ライドシェアは日常的に利用するにはコストが高く、使いづらいと感じていました。しかもそれらはムンバイやバンガロールのような大都市でしか利用できません。そこで私はインドのどの都市でも使えて、手頃な価格で移動できるソリューションを作れないかと思ったのです」

Pavan Guntupalli
Rapido
Co-Founder
Indian Institute of Technology Kharagpurで電気通信工学を学び学士号を取得。2012年にSamsungに入り、ソフトウェア開発に携わる。2014年にRapidoを創業する。

インド100都市でユーザー2000万人、ドライバー350万人を獲得

 Rapidoのソリューションは他のライドシェアサービスと同じく、スマートフォン上にダウンロードしたアプリから利用できるようにした。ユーザーは乗降場所を指定して、時間を予約すれば、運転手がピックアップポイントまで迎えに来てくれる。決済は現金、クレジットカード、デビットカードのほか、スマートフォンから支払い・送金が簡単にできる小口決済インフラ「統合決済インターフェース(UPI)」などに対応可能だ。

 一方、運転手は免許証や保有する二輪車の登録証、保険証など必要書類を提示するだけで登録できる。バックエンド担当者がプロフィールを確認して問題なければ、Rapidoにドライバーとして登録完了だ。サービスの安全性を保証するために、ドライバーはトレーニングを受けることが義務付けられており、乗客も万が一の時のために保険サービスが付与される。そして、二輪車の速度や警告を受けた件数など、運行状況も把握しているため、事故が防げるというだけでなく、不正な「ぼったくり」被害の抑止にもつながるというわけだ。

 こうしてRapidoのサービスは、インドの約100都市で、2000万人のユーザーと350万人のドライバー獲得に成功した。現在、1日あたりの利用回数は50万件にのぼる。これはインドの二輪車ライドシェア市場ではトッププレイヤーだ。Rapidの売り上げは、ドライバーたちが稼いだ報酬から20%の手数料を受け取る仕組みをとっている。

 とはいえインドのライドシェア市場は競合が多く、激しい競争は避けられない。Rapidoは他社と比べて、どのように差別化を図っているのだろうか。Guntupalli氏はRapidoの特徴を次のように説明した。

Image: Rapido

「差別化できている要因は1つではなく、複数あると思っていますが、私が一番重視しているのはサービスの向上です。ギグワーカーというのは1日に数時間しか働かない人達です。しかも大学生ならキャンパスの近く、社会人なら職場の近くで働きたいと考えています。Rapidoはこうしたギグワーカーたちが抱える無数の条件を叶えることに注力してきました」

「また、ライドシェアの需要は早朝や夕方などの忙しい通勤時間帯に集中します。すると、彼らの仕事量が限られてしまい、十分に稼ぐことができません。そこで大手食品配達業者と提携し、通勤のピーク時間以外でも仕事を提供できるようにフードデリバリーサービスも始めました」

 このフードデリバリー事業は、新型コロナウイルスによるパンデミックの危機を乗り越えるのにも貢献した。一時、Rapidoは売上がコロナ禍で80%も落ち込んだというが、フードデリバリーサービスの追加に加え、タクシー用オートリクシャー(三輪車)市場にも参入したことによって持ち直すことができたという。現在、売り上げに対してフードデリバリーサービスは約15%、オートリクシャー事業は約30%も占めるまで成長した。

当面はインド市場に注力 1日あたり100万件超えが目標

 Rapidoは2022年4月、シリーズDラウンドで、フードデリバリー企業のSwiggyや、Nexus Venture Partners、Shell Venturesなどから1億8000万ドル(約240億円)の大型資金調達に成功した。資金は市場シェアの拡大に注いでいく考えだ。特に、AIを使ったスケーラブルなサービスを可能にする技術開発と、利便性と安全性の向上、そしてマーケティングに役立てたいとGuntupalli氏は説明した。

 今後の目標は、半年以内に1日あたりの利用回数を100万件にすることだ。これは次の四半期決算には実現できそうだとGuntupalli氏は自信を見せた。

 日本市場参入の可能性について尋ねると、「東京のような高度で複雑な交通事情を抱える都市で、私たちのソリューションを試すことには興味があります。パートナーシップを求められれば、きっと興奮するでしょうね」と述べたものの、当分の間はインド市場に集中したいとして、次のような抱負を語った。

「インドの通勤人口は3億人に上ります。ですが、ライドシェア業界全体を合わせてもインド人の利用件数は1日あたり300万件にも至っていません。これはライドシェアの普及率が1%にも満たないということです。一方、中国では1社だけで3000万件もの利用件数を獲得しているところもあるといいます。つまりインドにはもっと大きな可能性があるということです」

「現在、ライドシェアのリーディングカンパニーの利用件数は、1日あたり130万件から140万件です。いまのRapidoはこの半分ですが、これから1年で私たちがトップシェアの座につくことでしょう。しかし、それに甘んじるのではなく、インド中の人が利用するソリューションであるために、これからも低コストで便利なサービスにこだわっていきます。そして同時に、成長し続ける都市の渋滞を解消するソリューションを目指します」

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