米国で展開するファッションのフリマアプリ「Poshmark」。売り手は250万人、買い手は数千万人を抱え、1ヶ月に1億5000万もの商品がプラットフォーム上に並ぶ。モバイルで簡単に売買できるシンプルな仕組みづくりを進める一方、人々がサポートし合うコミュニティづくりにも力を注いでいる。PoshmarkのCEOであるManish Chandra氏に、同社成長の理由と今後の海外展開などについて聞いた。

Manish Chandra
Poshmark
Founder & CEO
1987年にインド工科大学カーンプル校にてコンピューターサイエンスを先攻。1989年にテキサス大学オースティン校にてコンピューターサイエンスを修了。1989年にIntel、1990年からSybaseにて勤務し、1995年にUCバークレーにてMBA取得。1995年にVersataに入社し、2005年にオンラインECサービスを運営するKaboodleを起業し、2007年に同社をHearstへ売却。2011年にPoshmarkを設立し、Founder & CEOに就任。

商品を売りたい人にマーケティング、配送、決済の機能を提供

―まず御社の事業内容を教えてください。

 「Poshmark」はファッションのプラットフォームサービスです。私たちのプラットフォーム上でファッションの商品を売りたい人に対して、配送、決済のインフラに加えて、あらゆるマーケティングのソフトウェア、ソーシャルメディアを提供します。そしてその利用料として、販売額の20%をいただくというシンプルなモデルです。

 「Poshmark」における売り手はキュレーションと販売をしているため、私たちは「Seller Stylist」と呼んでいます。売り手は自分のクローゼットの中にあるリユース品などものを売ることができ、本格的なお店や、自分のファッションブランドを作ることさえできます。

―いま売り手と買い手はどれくらいいるのでしょうか。

 現在、売り手は250万人、買い手は数千万人います。そして、これまでに私たちのコミュニティから100ものファッションブランド、10万を超えるお店が生まれました。今も1分に3、4店舗のペースでお店がオープンし、1ヶ月に1億5000万もの商品がプラットフォーム上に並びます。

―ターゲットは女性に絞っているのですか。

 もともと6年前に女性向けにスタートし、現在は男性や子供向けの商品も扱っています。男性向けの商品の販売も非常に速いスピードで伸びていますね。

Image: Poshmark

ソーシャルメディアに投稿する感覚で商品を販売

―ユーザーはどのような手順で商品を販売できるのですか。

 とても簡単な方法です。まずスマホで商品の写真をアップロードすると、きれいな写真が作成されます。すると、その商品を見たユーザーから商品がフォローされ、購入されます。商品が購入されると、売り手のもとに私たちから支払済みの郵送ラベルが届きます。売り手は商品の入った箱にそのラベルを貼って送れば、買い手に1〜2日以内に商品が届けられます。そして買い手がその商品の受け取りを承認すると、売り手に支払いが行われるという流れになります。売り手は商品の発送や代金の受け取りについて心配する必要はありません。まるでInstagramのようなソーシャルメディアへ投稿するような感覚で、商品を販売できるのです。

―ユーザーが店舗を開いている成功事例を教えてもらえますか。

 ある女性ユーザーは「Poshmark」上で自分の店とファッションブランドを持っています。もともと彼女は3〜4年前から私たちのプラットフォームで自分のクローゼットの服を売っていました。彼女は自分の写真や見せ方によって商品が売れることに気づき、他のブランドや卸売業者から商品を仕入れて、自分の店を作るようになりました。その後に「Infinity Raine」という独自のファッションブランドを作ったところ、20〜30もの他の売り手によって販売されるようになり、彼女自身が売らなくても、売上は倍増して伸びていったのです。

 また、ロサンゼルスのある若い女性は月に4〜5万ドルもの売上があります。彼女は自分の服を自撮りして投稿して販売していますね。

コミュニティ要素が最大の強み

―数多くのファッションマーケットプライスの中で、御社の強みは何ですか。

 1つ目はあらゆる商品を販売できるようにしていること。2つ目はコミュニティです。私たちは非常にシンプルな前提のもとに始めています。大きなファッションのプラットフォームになるためには、ソーシャルでなければいけない。だから「Poshmark」はコミュニティなのです。あなたがサイトに加われば、あなたをサポートしてくれる人がいるということです。テクノロジーを超えた、ソーシャルとコミュニティの要素が私たちの本当の強みです。私たちの他にこのようなプラットフォームはありません。その結果、私たちのサービスのアクティブユーザーは平均で1日に7〜9回アプリを開き、1日に20〜25分を費やしています。それはもはやFacebookやSnapchatのレベルです。そしてユーザーの70〜80%がリピーターで、どんどんビジネスが成長しているのです。

 3つ目はシステムと料金を固定していることです。これまでの5年間でシステムも料金も変更したことはありません。ユーザーは商品の重さを測る必要もなく、あらゆるものが簡単に配送でき、非常に速いスピードで届きます。ユーザーにとってシンプルで便利なままなのです。

―ChandraさんがPoshmarkを起業するまでの経緯を教えてもらえますか。

 Poshmarkを起業するまでのビジネスキャリアは大きく2つに分かれます。キャリアの前半は、エンタープライズソフトウェアのテクノロジーの世界にどっぷりと浸かっていました。IntelやSybaseという現在はSAPになっている会社で働きました。

 キャリアの後半は、ファッションを中心とした女性コミュニティづくりに携わってきました。Kaboodleという会社を作り、女性のファッションコミュニティサイトを始めました。これはPinterestのようなものでしたね。2007年にKaboodleはHearstによって買収され、私もHearstの雑誌グループの一員となりました。2010年にHearstを退社した後、2011年にPoshmarkを始めたのです。

最初の2年間はモバイルアプリに集中

―どうしてPoshmarkを始めようと思ったのですか。

 2つのきっかけがありました。ひとつは、Kaboodleを作っていた時、多くのユーザーはKaboodleのプラットフォーム上でファッションの商品を買いたい、売りたいというニーズを持っていたことです。しかし、本当に素晴らしいと思えるプラットフォームはまだ存在していませんでした。

 もうひとつは、私の家のクローゼットに、妻が使っていないバッグがずっと置いてあったことです。これを見て、ビジネスチャンスは大きいと思っていました。そして、2010年の秋にiPhone4のカメラと撮影された写真を見て、ビジネスが頭にはっきりと思い描けました。2011年にモバイルからスタートし、iPhone向けのPoshmarkのアプリを構築しました。最初のほぼ2年間はWebサイトを作っておらず、アプリのみに注力していましたね。

2017年末からグローバル展開予定

―最後に、御社の今後のビジョンを聞かせてください。

 ファッション市場は米国だけで5000億ドル規模です。私たちは米国最大のファッションカンパニーになるため、これから長い道のりを歩んでいきます。まず2017年の終わりには世界中に商品を出荷できるようにしたいと考えています。ユーザーから常に「日本からオーストラリアから、カナダから、中国から商品を買えるようにならないか?」というリクエストを受けているからです。そして2018年には、他の国の人々も「Poshmark」で売り手として参加できるようにしたいと考えています。そしてこれから5年で世界のファッションを一つのプラットフォームに集約したいのです。

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