【イスラエル企業×アビーム対談】日本市場攻略に向けたパートナーシップ戦略の舞台裏

【イスラエル企業×アビーム対談】日本市場攻略に向けたパートナーシップ戦略の舞台裏

Security / Israel / Japanese Corporations / Startup / Cymulate / ABeam Consulting
2020/10/30
革新的なサイバーセキュリティプラットフォームとして、世界的に評価が高いCymulate。そのパートナーとして、日本市場およびアジア太平洋市場において、Cymulateの導入を推進しているのがABeam Consulting(以下ABeam)だ。サイバーセキュリティに対する情熱を共有しながら、相乗的な価値の創出を実現し、パートナーシップを構築する2社のキーパーソンたちにその秘訣を聞いた。(取材協力:Vertex Holdings)

編集部からのお知らせ:本コンテンツや日本企業のオープンイノベーション事例、企業担当者約300名に行った「グローバルオープンイノベーションの実態調査」の結果などで構成されるレポート「Global Open Innovation Insights」を無料提供しています。こちらからお問い合わせください。

イスラエルの技術を使い日本企業のサイバーセキュリティ対策を改善

――まずは、それぞれ会社のご紹介とご自身の役割を教えてもらえますか。

坂口:アビームコンサルティングは、世界13カ国に29拠点を持つ、日本企業としては最大規模のコンサルティングファームです。日本を始めアジア地域を中心に、約6,000名のプロフェッショナルが業界・業務、そして戦略からIT導入までの幅広い知見を有し、企業や組織・団体の変革を総合的に支援しています。特に近年では、デジタルトランスフォーメーションの構想策定から実行、実現に注力し、顧客のビジネスに、よりコミットした様々なサービスを提供しています。

 そのような幅広いニーズや課題に対応するため、当社は、Cymulateのようなスタートアップとの協業を非常に重視しています。そして、特にイスラエルのスタートアップと、良好な関係を築いています。

 私が所属しているResearch & Innovation Sectorでは、日本企業とグローバルスタートアップ間のパートナリングをサポートし、オープンイノベーションを推進しています。同時に、当社自身の新規事業開発の一環として、スタートアップとパートナーシップを構築し、そのテクノロジーを活用したデジタルトランスフォーメーションを推進しています。

坂口 直樹
ABeam Consulting
P&T Digital Business Unit Research & Innovation Sector
Senior Manager
大手システムインテグレータにてスタートアップ協業及び新技術を活用した事業開発に携わった後、2016年にABeam Consulting入社。シニアマネージャ。
横溝:同じくResearch & Innovation Sectorで、サイバーセキュリティとクラウドプラットフォーム領域を担当しています。本領域においては、サイバーセキュリティ大国であるイスラエルのスタートアップと協業したサービスを展開していますが、Clymulateはその中の一つです。
横溝 誠
ABeam Consulting
Senior Consultant
上智大学にて数学学位を取得。2010年より日本ユニシスでSystem Engineerを務めた後、2014年にABeam Consulting入社。シニアコンサルタント。

Sharon:Cymulateは、企業のセキュリティを高めるサポートをしています。私たちはサイバー攻撃シミュレーションプラットフォームをSaaSで提供しています。創業から4年ほどの企業ですが、共同創設者のEyal (Wachsman)は、イスラエル最大規模のコンサルティング企業で副社長を務めた実績があり、事業開発において17年以上の経験があります。そして、もうひとりの共同創設者であるAvihai (Ben-Yossef)は、イスラエル国防軍のテクノロジー部門出身です。私も、軍隊に27年間勤務し、約3年前からCymulateのCOOを務めています。

Sharon Nakash
Cymulate
COO
バル=イラン大学、経済学部卒業。The Hebrew University of JerusalemにてNational Securityの修士号取得。27年間イスラエル国防軍に勤務。2018年よりCymulateのCOOを務める。
 人は、物事が「うまくいっている」と信じたがります。しかし、攻撃は変化し続け、アタッカーが常に存在しチャンスを狙っているサイバーセキュリティ分野では、サイバー攻撃に対する備えに終わりはありません。企業は、自社のサイバーセキュリティは「うまくいっている」と信じるのではなく、現状を知り、対応を取る必要があるのです。

 当社は、膨大かつ変化する攻撃パターンに対応したシミュレーションと、侵入テストを短時間で実行することで、改善までのスピードを早める革新的なソリューションを提供しています。私たちは企業に対し、どこにセキュリティのギャップがあるのか、すでに企業が持つ莫大な資金を投資しているセキュリティコントロールをどう向上できるのかお見せすることができます。企業が莫大な投資をしているセキュリティコントロールの最適化、検証、継続的なセキュリティ向上に寄与します。

良好なビジネス関係が、新しい出会いをもたらす

――ABeamとCymulateのパートナーシップはどのように始まり、そしてどのような関係を築いているのでしょうか。

横溝:イスラエルにIntensity Globalというサイバーセキュリティ分野のパートナーがおり、イスラエルのスタートアップに関する情報連携を行っているのですが、約2年前に同社を通じて、ゲームチェンジングなサイバーセキュリティソリューションとしてCymulateを紹介されたことが、きっかけです。

 Cymulateとのパートナーシップを検討するにあたり、まずは自社内で利用し評価を行いました。その結果、非常に優れたソリューションだと感じたため、日本市場における具体的な展開方法の検討を始めました。私たちがソリューション自体の理解を深めるとともに、Cymulateのソリューションと日本市場とのギャップ、当社のクライアントの課題など、ビジネスを展開にあたって必要なことを検討しました。そして、日本のお客様に価値を提供できる新しいビジネススタイルを考案し、マーケティング戦略を練り、昨年から日本市場で提供を始めたところです。

Sharon:アビームコンサルティングの皆さんとは、2年前にイスラエルで初めてお会いしましたね。当社は、アビームコンサルティングをよく知るイスラエルのコンサルティング会社から紹介されました。非常に素晴らしいチームだと聞いていましたし、実際にパートナーとして非常に良好な関係を築き、イスラエルの代理店、日本発のコンサルティングチームとセキュリティベンダーによるビジネスエコシステムを構築しています。

――アビームコンサルティングは、他のサイバーセキュリティソリューションも扱っています。Cymulateと提携した理由や、魅力に感じた点を教えてもらえますか。

横溝:そうですね、当社は、複数のセキュリティソリューション、セキュリティ・コンサルティングサービスとトレーニングサービスを提供しています。

 Sharonが先ほど話していたように、Cymulateはクイックにセキュリティ評価を行います。この点において、Cymulateはゲームチェンジングなソリューションです。従来のサービスと比較すると遥かにスピードが速く、数時間でセキュリティ施策の有効性を評価することができます。当社の主なカウンターパートはCIOやIT部門のトップで彼らはサイバー攻撃に備えていますが、それらが本当に備えになっているのかがCymulateを使えばすぐにわかります。スピードが速くなることで、より手軽に、より頻繁に、自社の評価を行うことができます。これが大きな魅力です。

Sharon:パートナーシップは、対等なよい人間関係とビジネス関係が基本になり築かれます。顧客のセキュリティ対策を理解しているABeamのコンサルティングと、Cymulateのソリューションが繋がったからこそ、顧客のサイバー攻撃への備えを評価し、セキュリティを日々改善するサイクルを作ることができました。

坂口:大企業におけるサイバーセキュリティの課題は、システムそのものだけでなく業務プロセス、運用面、組織面などに起因する場合もあります。当社は、Cymulateを使ったテクノロジー面の課題解決に加え、その他の課題についてもコンサルティングサービスを通じて解決することができます。Cymulateとのパートナーシップは非常に高い相乗効果があると考えています。

単独で日本市場を目指すイスラエルスタートアップはいない

――Cymulateは他の国でも事業展開されています。その中での、日本市場の位置づけを教えてください。

Sharon:当社は、イスラエルのスタートアップとして、まずはイスラエル市場でスタートしました。国内の銀行、保険会社と大企業は全て当社の顧客です。海外市場では、アメリカ市場に特に力を入れています。そして、顧客のほとんどがアメリカとヨーロッパからです。

 アジア太平洋市場は新興市場だということは理解しています。その中で、日本市場は別です。私は、日本市場に詳しいわけではありませんし、日本市場での展開も初めてですが、イスラエルで、様々な日本の大手企業の方々とお会いしています。その経験から考えると、日本市場は保守的だと思います。

 悪く取らないでいただきたいのですが、日本人はとても真面目で、細部まで全てチェックすることを好みますし、完璧を求めます。例えば、日本市場ではバグのないプラットフォームが必要です。50年後くらいには、バグのないプログラムを作れるスタートアップが出現するかもしれませんが、今は世界中のどんなプログラムでもバグは付き物です。

 日本市場は挑戦だと思うからこそ、やる気が出ます。アビームコンサルティングと当社の日本市場での活動はまだ始まったばかりです。莫大な投資をしたセキュリティシステムを本当にセキュアな状態にするには、シミュレーション攻撃を行い、どこにセキュリティギャップがあるのかなどを把握し修正する必要があります。これを毎日行うのです。時間をかけて日本の皆さまに、当社のセキュリティソリューションに対する理解を得ていきたいと考えています。

 イスラエル市場では、理解を得るまで1年かかりませんでした。最初は、「自分の組織を攻撃するつもりはない」と言われ断られましたが、今日では、彼らは当社のソリューションを使い毎日自分の会社に攻撃を実行し、サイバー攻撃への備えが十分か正確に把握しています。彼らは、Cymulateが非常に安全で革新的なツールであり、非常に有効なことを理解し、従来のやり方を変えたのです。アタッカーは、相手の許可を得てから攻撃するわけではありません。対策を取らないまま本当の攻撃を待つ必要はありません。

Cymulateが提供するサイバー攻撃シミュレーションプラットフォーム

――日本企業の特徴として細部まで評価を行うことと、取引に時間がかかることを挙げるスタートアップは多いです。アビームコンサルティングはどうでしたか。

Sharon:アビームコンサルティングは最初から柔軟性と既成概念にとらわれない発想がありましたし、動きも速いです。それに、彼らは同じ「言葉」を話せます。実際、出会ってからすぐに日本市場での提供を始めてくれました。

 私たちはアビームコンサルティングと一緒なら日本市場で成功できると考えていますし、だからこそ自分たちの時間を投資しています。

――海外スタートアップとの連携では何が一番重要だと思いますか。

横溝:スタートアップの付加価値をきちんと把握したうえで、ビジネスモデルを構築できるか、ということが最も重要だと思います。そして、日本やアジア太平洋地域の市場を見極めることができるか。それと、スタートアップとの付き合い方を熟知していることが成功の鍵だと思います。

坂口:当社は日本企業がスタートアップと共同できるよう、数多くのサポートを行ってきたため、日本企業とスタートアップの協業における成功要因を把握しています。Sharonさんが述べたように、日本企業は初回のディスカッションから細かい点について質問することが多いです。ソリューションの主要価値とは関係がない点まで、非常に詳細に確認し、ソリューションを理解しようとします。それは、失敗のリスクを排除するためだと思います。しかし、イスラエルのスタートアップは、課題やリスクがあった際に、ミーティングを通じて、一緒に良い解決策を見つけようとします。ここには両者の大きな相違点があります。だからこそ、このギャップを埋めるために当社が日本企業をサポートしています。

 協業をスムーズに進めるために大切なのは、スタートアップと日本企業がどうやってWin-Winな関係を築けるかということです。

 イスラエルのスタートアップは、非常にオープンでダイナミックな議論ができます。だからこそ、日本企業側はしっかりと目標や期待値を設定し、どのような状態を目指したいのかを伝えていくことが非常に大切です。

Sharon:当社のソリューションは、人々を納得させる価値があります。ただし、それを日本市場に持っていく場合は、言葉の面だけでなく文化面でも日本を理解している必要があります。私たちは、日本企業の考え方を尊重したいと考えています。アビームコンサルティングは日本市場での私の右腕的存在です。彼らが当社のメッセージを日本企業に届けてくれると、私は信頼しています。彼らにとっても、ビジネス面で利益があると思います。

 例えば、ヨーロッパやアメリカでは顧客に直接会わなくてもオンラインだけで取引を成立させることができますが、日本では直接会う必要がありますし、何かあればすぐに電話で聞ける関係性が求められます。そのため、日本市場では、現地でのプレゼンスが必須で、現地パートナーとのコラボレーションが非常に重要です。

グローバル問題にはグローバルに通用するテクノロジーが必須

――コラボレーションにおいて、難しいと感じたことや課題はありましたか。

横溝:多くの日本企業が、サイバーセキュリティを優先順位の高いリスクだと考えています。しかし、社内に専門家がいません。日本全体で、サイバーセキュリティの専門家が不足しており、これが大きな課題です。大企業でも、セキュリティの専門家がいないため、Cymulateの価値を理解できても、自分たちだけでプラットフォームを利用するのは難しい状況でした。

 そこで、我々はCymulateをマネージドサービスとして提供し始めました。つまり、当社がCymulateを使いセキュリティチェックを行い、その結果をレポートにまとめて説明します。社内にセキュリティの専門家がいないクライアントに対しても、当社のコンサルタントとCymulateなどが協力し、そのリスクを評価します。

――Cymulateは日本語仕様にはなっていないのでしょうか。

横溝:日本語へのローカライゼーションはしていません。

坂口:Cymulateは非常に優れたソリューションで、日本市場で求められている価値を提供できます。日本市場での展開における課題は、翻訳されているかどうかということより、ビジネスのギャップであり、文化のギャップがあることです。それに加えて、日本企業の予算サイクルなども欧米企業などと違うため、これも当社がうまく対応しなければいけない課題です。

――最後に、このパートナーシップの目標やビジョンについてお聞かせください。

横溝:目標は2つあります。まず、1つ目はSharonが言っていたように、Cymulateがアメリカやヨーロッパ市場での展開に集中できるようにすることです。昨年は日本市場に焦点を当てていましたが、今年、アジア市場での展開を進めています。タイ市場に参入し、タイの製造業者にCymulateのサービスを提供し始めました。当社のアジア地域に拡がる複数の拠点を活用し、今後も市場を拡大していく予定です。

 もう1つは、サイバーセキュリティはグローバルトレンドであり、日本だけで対応できる課題ではありません。対応するためには、グローバルに行われているサイバー攻撃に精通した、イスラエルのスタートアップやサイバーセキュリティの専門家とコラボレーションを続けていかなければなりません。

 サイバーリスクはビジネスのリスクなので、日本企業のCIOも重要課題として高い関心を寄せています。当社は、こうした企業に対して、最先端を行くイスラエルのセキュリティの専門家やスタートアップと連携し、セキュリティサービスを提供していきたいと考えています。

坂口:現在、日本企業の多くがデジタルトランスフォーメーションによる変革を求められています。そして、企業のデジタルトランスフォーメーションにおいては、ビジネスと一体化したIT技術の活用が必要不可欠です。

 特にCOVID-19による今の状況で企業が生き残っていくために、デジタルトランスフォーメーションの動きは加速しており、その中でサイバーセキュリティ対策は非常に重要な経営課題となっています。しかし、横溝さんがおっしゃっていたように、セキュリティの専門家など、人材の確保も大きな課題となっています。Cymulateの活用はもちろん、業務プロセス、組織、人材面などの面でも、当社は日本企業をサポートしていきたいと考えています。

Sharon:お二人がおっしゃっているように、サイバー攻撃はグローバルに展開されている問題です。日本企業だから日本のアタッカーからしか狙われないということではありません。世界中のアタッカーから狙われる可能性があるのです。

 今イスラエルでは、家族とZoomで会います。なぜかというと、そうしなければ会えない状況になったからです。危機は突然訪れます。誰も、「これから状況が変わりますよ」と教えてくれません。サイバー攻撃も突然行われます。私たちは常に攻撃に備えなければならない状況にあるのです。それを日本企業の皆さまにもご理解いただきたいです。そして、これは大企業だけでなく中小企業にとっても、同様に重要なことです。リモートで働くことはチャレンジですが、我々はそこに価値をもたらすことができます。

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