各事業領域にDX推進チームを設け、取り組みを加速
IHIでは、2007年より技術アタッシェ制度を設けています。世界各地に駐在員を派遣し、エコシステムに入り込むことで、戦略的パートナーシップを確立しようという取り組みです。
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特に北米では、ベンチャーキャピタルとのパートナーシップを確立し、スタートアップ企業との協業発掘を強化。同時に、東京に「つなぐラボ」「i-Base」、シリコンバレーには「IHI Launch Pad」というビジネスインキュベーション拠点を設け、パートナーシップから事業化を目指す活動を行っています。
今回は、北米のオープンイノベーションについてご紹介します。活動の流れを説明しますと、まず産学連携からスタートします。次の段階では、ベンチャーキャピタルと組んでスタートアップの発掘・連携やPoC・技術評価などを実施。最終段階では、新規事業に向けた事業開発を目指しています。
これまでにスタートアップとの協業で物流のロボットなどを開発したほか、IHI Launch Padにスタートアップを招いて新規事業のネタを考えていくといった取り組みも行っています。
北米オープンイノベーションチームはIHI社内で技術オープンイノベーションを主導する技術開発本部やソリューション・新規事業統括本部などの傘下にあると同時に、海外拠点であることからグローバル営業統括本部を加えた3本部の共同運営体として活動しています。
イノベーションチームが集めたDXに関する海外の動向・技術・ベンチャービジネスの状況といった情報は、全社のDXを統括する高度情報マネジメント統括本部や各事業領域へ情報が発信され、それぞれDXを進めていく流れになっています。
全社のDXを統括しているのは高度情報マネジメント統括本部ですが、各事業領域にもそれぞれDX推進部・DXグループが存在しています。統括本部には全社に係わるDX技術やプラットフォーム情報を,各事業領域には事業実態に即したDX技術や事業情報を提供し、それぞれの目的・スケジュール感に応じたDXによるビジネスモデル変革を目指しています。
オープンイノベーションが結実し、新事業へと展開
続いて、オープンイノベーションの事例をご紹介します。1例目は、優れた画像AI技術をもつボストンのNeurala(ニューララ)との提携です。同社の技術とIHIの物流・安全保障といった各種事業・工場と掛け合わせ、DXの新サービス・新事業への展開に取り組んでいます。
具体例の1つが、段ボールに記された賞味期限の読み取りです。倉庫に集まってくる段ボールには賞味期限が記されていますが、フォーマット・フォント・印字方式・文字色・サイズ・記載場所などは、送り主企業によってすべて異なります。今まではそれらを人の目で確認していたため、非常に時間・人員・手間がかかっていました。
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そこで、Neuralaとの協業により自動検品システムを開発。すでに複数機をお客様に使っていただいてフィードバックをいただいている最中であり、着実に課題解決へと向かっています。
将来的には、倉庫内に限らず上流・下流を含めた物流の最適化やSDGsへの貢献を見越しているほか、ライフサイクルビジネスへの展開や、ビジネスモデルを変換したうえでの社会貢献へつなげていきたいと考えています。
2例目は、ドローンを使ったインフラストラクチャーの検査技術に強みをもつシリコンバレーのPrenav(プレナブ)社との提携です。弊社では主に橋梁検査での活用を検討しており、2021年からサービス事業化を目指しています。
今回の協業により、ドローンによる検査部位の画像取得、画像データのクラウド上へのアップ、3Dモデルの作成・損傷診断・診断結果のリスト化といった一連の作業を、すべて自動化することに成功。DXによって効率的に、楽に仕事ができるシステムを生み出しました。将来的には、これらのデータを用いた社会貢献やインフラ事業の発展にもつなげたいと考えています。
最後になりますが、IHI Launth Padでは、宇宙事業のほか、クリーンエネルギーやDXをテーマにしたワークショップなども開催し、事業化を目指しています。ぜひ、これらの取り組みにもご期待ください。
IHI 技術開発本部 連携ラボグループ主査