AnyMind Group( 旧AdAsia ) CEO
十河 宏輔Kosuke Sogo
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VIP PLAZA INTERNATIONAL PTE LTD Founder & CEO
金 泰成

<モデレーター>
Ishin SG Pte.Ltd. Managing Director
永井 貴之Takayuki Nagai
Ishin Startup Summit 2017イベントレポート第二弾。東南アジアに順調に進出したケース、苦戦しているケース。それぞれの課題と工夫、そして成果を東南アジアを中心に活動しているVIP Plaza金氏、Adasia Holdings十河氏に聞いた。

ポイントは市場を見誤らず、成功の確信を持つこと

―現在の事業内容を紹介してください。

十河:現在、シンガポールやバンコク、ジャカルタなど10拠点でビジネスを展開しています。社員は250名、クライアントは350社ほどで、アジア市場でインターネット広告の広告主とインフルエンサーなどのマッチングをやっています。また、募集企業と求職者のマッチングも手がけています。

金:2010年にインドネシアに関わり、2014年にインドネシア初のファッションサイト「VIP Plaza」を立ち上げました。ブランド数は1000、会員数100万人のサイトに成長しています。その間、たくさんの失敗を繰り返しました。ファッションのフラッシュセールスで売上伸ばしましたが、売れば売るほど赤字が増える状態でした。1000ブランドに絞ってZOZOモデルに移行したり、ポイント制を導入してリピーターを増やしたりして売上を拡大しましたが、それでもなかなか収益化は難しいですね。

―現在の事業を選んだ理由、それと最初からグローバルで勝負しようとしていたのか、お聞かせください。

十河:2012年から2016年まで、前職で海外のビジネスを手がけました。自分自身で事業を立ち上げるにあたっては、やるなら最初から海外でという考えでした。ゼロからのスタートですから可能性だけは広げておきたかったのです。勝負するには複数のビジネスを立ち上げることが重要だと思っています。シンガポールでインターネットビジネスを立ち上げ、いけると思った時点でタイ、インドネシア、ベトナム、台湾、カンボジア、香港、東京と展開しました。もちろん競合はたくさんいました。それでも基本的に私は、超ポジティブに「これはいける」「絶対いける」と思うことが大切だと考えています。計画は立てますが、多少無理なことでも信じ切って取り組めば実現してしまうものです。

金:私はインドネシアがどこにあるかも知らずに、何も立ち上がっていない大きな市場に魅力を感じてマーケットプレイスのeコマースを始めました。ファッションとeコマースを選んだのは論理的な分析に基づいてではなく、大きな市場で日々しっかり事業に取り組めばきっと開拓できると考えたからです。前職でファッション分野に携わっていたこともこの事業を選んだ理由です。

現地の実情に合わせたマネジメントを

―お二人は前職でどのような経験を積んだのですか。また、前職で学んだことをどのように現在の仕事に活かしていますか。

十河:私は2010年に新卒でマイクロアドに入社し、東京で営業をしていました。100%頑張らなくても誰にも負けない成績を残し、他社からもヘッドハンティングの誘いがあったので、転職を考え社長に相談しました。すると、社長から「ベトナム法人を立ち上げようと思っているのだが、代表として立ち上げをやらないか」といわれ、ベトナムで会社を立ち上げました。ベトナムに関する知識もなかったのですが、この会社も上手く立ち上がりました。当時の社長に相談したところ、次は「2000万円用意するのでフィリピンで会社を」といわれ、その後マレーシア、タイ、インドネシアと次々に会社を立ち上げました。この経験から、「それぞれの国で1000万円あればなにができるか」、理解を深めることができました。それとエクゼキューション能力、営業力はどこにも負けない自信がつきました。

金:私は、日本で2年間ビジネスを経験した後、24歳のときにインドネシアに来ました。日本のビジネスのやり方しか知らず、現地で日本流のマインドとオペレーションを植え付けることをやってしまいました。インドネシアの営業会社は規律にゆるいところがあって、そこに時間や数字を厳しくマネジメントしたので、20名規模の会社で1年間に累計で24名辞めてしまいました。120%の離職率です。このとき学んだのは、「日本のやり方が正しいとは限らない」ということです。ゴリゴリにオペレーションを回してもうまくいかない。現地の実情に合わせたマネジメントをする必要を学んだ1年でした。

BtoCの基盤は未成熟なのでBtoBからスタートを

―ゼロから東南アジアでビジネスを始めるにはどんな分野のビジネスがいいのでしょうか。

十河:自分たちが今後何をしたいのかを考え、ビジネス領域を選ぶべきです。当社の場合、マーケティング領域からビジネスをスタートさせました。アドテクの分野は技術の進歩が速く、今後はAIなどの効率化ノウハウがBtoBのプラットフォームで活きてきます。東南アジアではまだまだビジネスチャンスがたくさんあり、チャレンジしない理由はありません。どの業界でもライバルは多い。しかし、しっかり腰を据えてコミットしていけば、十分に戦えます。もちろん事前に得られるリターンを計算し、アクセルのふかし方は調整する必要はありますが。

金:せっかく東南アジアでやるなら、王道で挑戦するのがいいと思います。当社の次なる一手は、マーケットプレイスモデルの次はカテゴリーごとのeコマースです。eコマースの周辺も伸びる余地があると思います。一方、消費者に課金するビジネスは難しいと思います。メーカーなどのBは潤沢な予算があります。Cを最初から狙うのは厳しいので、最初はBを狙ってゆくのが良いと思います。

―アジアでビジネスをしていて「伸びている」と感じる領域はどこですか。

十河:伸びているところはたくさんあります。しかし儲かっている会社はあまりない。ベンチャーは理想を大きく掲げるものですが、まずは稼ぐことも大切だと私は思います。今は市場を拡大する段階という場合も、将来的には儲かることを前提にやることが大切です。

金:国も産業も会社も、インドネシアは伸びています。しかし誰も儲かってはいない。Cを狙っているところは儲かるまでに時間がかかる。一方でBtoBはビジネス全体が伸びています。

現地の肌感覚の情報がポイントとなる

―ゼロからの進出、M&A、現地企業との合弁など進出のスタイルはいろいろありますが、重要なことは何ですか。

十河:圧倒的に情報収集です。私の場合、ゼロから入ったので、ネットからのものもふくめて取れる情報は全て取ります。そのうえで、飛び込み営業をしてマーケットの肌感覚をつかむことが大切です。会社を訪問すると裸の情報が収集できます。それがないとジョイントベンチャーなどの判断はできないと思います。特に意思決定者は、新しいマーケットにいくときは肌感覚の情報が大切です。

金:進出するときは本質的な戦略を誤らないことです。実際に進出してみると、マーケットスケールが想像以上に小さい、というケースは多々あります。ですから、いろいろな人に会って現地の情報をつかむことが大切です。かくいう私も、インドネシアでファッションのフラッシュセールを展開するときも、心の底でマーケットサイズを大きく見てしまいました。しかしやってみると意外に小さい。起業家の陥りやすい誤りです。実際に飛び込んで肌感覚の情報を収集することが大切です。ネット上に情報はころがっていますが、自分の目で確かめることです。

十河:一方で、ビビらないことも大切です。ベトナムでは相手が大企業でもアポが比較的容易にとれます。訪問する際もビビらないこと。ビビっていてはせっかくの機会の損失になります。動じないマインドも、アジアで成功するためには必要です。

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